被災地に2万ドル届ける

NY日系ライオンズのリキさん

NYでの募金活動を報告

 NY日系ライオンズクラブ(三木伸夫会長)で1月初旬に能登半島地震被災地救済基金を立ち上げ、以来、オンラインでの募金呼び掛け、街頭募金、グロッサリー等への募金箱設置、今月3日にはファンドレイジングイベントを行って来たがこの度目標の2万ドルに達し、17日電信送金した。救済基金の送り先は石川、富山、福井3県を管轄するライオンズクラブ国際協会334D地区本部。被災地救済、支援に必要な物資購入などに充てられる。NY日系ライオンズクラブの元会長、伊藤リキさんが被災地を訪問し、2月20日、大きな被害を受けた七尾市、穴水町などを視察した。同日には被災地3県を管轄するライオンズクラブ国際協会334-D地区本部の小出進ガバナーにニューヨークからの支援金2万ドルを手渡した。また、地震発生以来の1か月以上にわたるNY日系ライオンズクラブの支援活動に関して北國新聞社の取材を受けた。同クラブでは17日最後の街頭募金をニューヨーク紀伊國屋書店前で行い、 石川県出身のブロードウエー俳優・由水 南さん、NY石川県人会の宮本ボーグ麗会長や特別出演の仮面ライダーも募金運動に参加して支援を呼びかけた。

古き良きグリーンポイント再発見!OLD POLAND BAKERY

 今回ご紹介するのは、GreenpointはManhattan AvenueにあるOld Poland Bakeryです。止まらないグリーンポイント探索。レトロでかわいい昔ながらのパン屋さんの中は、おいしそうなパンやケーキでいっぱい!ポーリッシュのスイーツは甘過ぎず、日本人の口にも合うように感じます。そして、なんといっても安いのです!大きなパンが一つあたり1ドルからとかなり手頃です。とにかくインフレの激しいNY、コーヒー屋で小さなクロワッサンを買おうとしたら5ドルを越えるなんてこともザラ。昔ながらの価格を維持してくれているのは本当にありがたいことですね。どれを食べても美味しいので、ぜひ行ってみてね〜!

 ヤマモトレミ 89年生まれ、福岡県出身の漫画家。2017年に仕事の異動で東京からNYへ移住。日本食スーパーで社員として働きながら趣味で漫画を描いていたら楽しくなってしまい2021年に退職、漫画家として本格的に活動を開始。2024年現在ブルックリン区在住。単行本発売中!

(Instagram:@Yamamotoinnyc)

さようなら、デイビッド

 シェフと顧客の関係を離れ、個人的にデイビッド・ブーレイに出会ったのは9・11の数週間後、やっと現場周辺の取材が解禁された時だった。

 トライベッカの彼のレストラン「ブーレイ」は世界貿易センターから7ブロック北の封鎖地域内。営業などできないのに店の前でオートバイ脇に立ちながら卵50箱、ヒラメ40キロと携帯電話で注文している。聞けばグラウンド・ゼロで救助隊ら作業員たちに炊き出しをしているのだと言う。「みんな温かい料理に飢えている。私はシェフだから」

 「ブーレイ」は90年代を通して世界で最も美味しい店の1つだった。ボキューズやロビュションやジラルデで修業した彼の料理はトマト水や香草や果実を多用して軽やかで優しく、その初の食体験をニューヨーカーたちは「ブーレイ・マジック」と呼んだ。

 彼の出現以前にアメリカはテイスティング・メニューもワイン・ペアリングも知らなかった。数種類ものパンをレストラン厨房内で焼くこともなかった。誰もが驚いたポテト・ピュレの原料フィンガリング・ポテトをアメリカに持ち込んだのもブーレイだ。フルトン・マーケットの魚は使えないとマサチューセッツのチャタムにトラックを乗り付け漁師から直接買い付けを始めたのも彼だし、漁師たちに日本で学んだ神経締めを教えたのも彼だ。ダイバーたちに潜ってホタテを取ることを注文した。さまざまなハーブエキス・オイルも発明した。バターとクリームに頼らないヌーベル・キュイジーヌは、アメリカではデイビッド・ブーレイから始まった。

 そんな天才シェフが9・11後、毎日ボランティアで二万食もの食事を現場で提供していた。まだニューヨークタイムズも書いていないその話を、私は日本のメディアに書いた。それから私たちは友人になった。

 そのころの彼は食の新たな可能性としての日本食に傾倒していて、ほぼ毎日私に日本文化のあれこれを質問し続けた。北海道から沖縄まで何度も一緒に訪日しては食材や調理法を探し歩いた。当時の園力氏の「饗屋」や西原理人氏の「嘉日」とともに、初めてニューヨークに(つまりアメリカに)スシでもテンプラでもない本当の会席・懐石料理の流れが始まったのは、彼が2011年に旗艦店隣に辻調理師専門学校の辻芳樹氏と山田勲シェフの創作会席「ブラッシュストローク」を開いてからだった。

 日本が大好きで、2011年の東日本大震災の際には半年後にダニエル・ブールーらニューヨークのシェフ9人で釜石まで飛んだ。友人でもある中華の脇屋友詞氏のトンポーローに自身のトリュフソースをかけたブーレイの料理は数千人の被災市民を感動させた。2015年には農水省から「日本食普及親善大使」外国人第一号を任命されてとても嬉しそうだった。この「週刊NY生活」紙上でも日本人読者向けに特別ランチコースを格安提供してくれたこともあった。

 朝起きたら、ニューヨークの友人たちから何通もメールが届いていた。私の25年間のニューヨーク生活で最も親しく大切な友人だったデイビッドの訃報。前日まで、私と4月の来日の打ち合わせをしていたのに。

 妻ニコールによれば2月12日、大雪の天気予報の前にスタッフ2人とコネチカット州ケントの自宅の庭や木々の整備をした後にワインや食事で歓談中に不意に倒れた。病院に運ばれたが13日未明、死亡が宣告された。「心臓発作」と報道されたが、彼は50代終わりに遺伝性の不整脈を診断されていた。左制動脚ブロックと呼ばれ、心室との電気的連動がズレる症状。不意の心停止。どうしようもなかった。70歳だった。

 葬儀のニューヨークに到着した。(武藤芳治、ジャーナリスト)

 写真=何度も訪れた京都で、大好きだった「天ぷら松」の松野俊雄シェフ(後列左端)らスタッフと会食したデイビッド・ブーレイ氏(前列中央)とニコールさん(その左)=2019年10月「下鴨茶寮」にて筆者(前列右から2人目)写す。

高級和食店の味を自宅で再現する

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (46)

鈴木料理長

 元小野寺の寿司シェフ、鈴木一成(かずしげ)料理長(35)に、今回は、サワラの味噌幽庵焼き、トリュフ香るだし巻き卵、しめ鯖のガリ紫蘇巻きの3品を作ってもらいました。一花は、寿司のおまかせが1人500ドルのお店なので、今回の料理も食べればとっても高価なお品書きに違いありません。自宅で頑張ってみましょう。


 一花 icca  

20 Warren St. New York, NY 10007

 (646) 649-3415

exploretock.com


■サワラの味噌幽庵焼き

味噌に浸したサワラはラップに包んで
1時間ほど冷蔵庫に置いて漬け込む

 煮切ってアルコールを飛ばした酒と味醂に醤油、白味噌をそれぞれ1対1で同じ量で漬け味噌を作る。それにサワラの切り身をラップにぴったり巻いて冷蔵庫で1時間冷やして漬け込んだあと、ペーパータオルで軽く、切り身についた味噌を拭き取り、家庭で魚焼き器を使って焼く場合は、下にアルミを一度くちゃくちゃにして、魚とアルミの間に空間を作って焼くようにすると魚がアルミにこびりつかない状態で、綺麗に取り出せる。


■トリュフ香るだし巻き卵

 卵は薄く焼き6、7回卵を入れて焦げないように油を敷いて重ねていく。

【材料】A 

トリュフオイル 30グラム

卵黄        1個

【材料】B

生卵       3個

出汁    100cc

砂糖     12グラム

薄口醤油   6グラム

味醂     10グラム

作り方

卵黄にトリュフオイルを混ぜて冷蔵庫で10分ほど冷やしておく。

材料Bを全て混ぜて、ホイッパーでかき混ぜ、卵が完全に溶けるまでホイップしてマヨネーズ状態になるまでにする。そこに、冷やしていたトリュフ卵黄を少しずつ加えて混ぜていく。卵焼き用のフライパンに油を敷きながら、焦げないように薄めの卵焼きを何層にも作るよう流し込んでいく。木の板などでグッと押さえて形を整える。木の板がない場合は大きいフライ返しなどでも代用できる。コツはペーパータオルで油をこまめに敷いて焦げ付かないうようにすること。6〜7回これを繰り返す。約1・5センチ幅に切って皿に盛り付ける。大根おろしなどを添えると美味しさが倍増する。


■しめ鯖のガリ紫蘇巻き

シャリの代わりにしめざばでガリ、紫蘇、ネギを巻く

【材料】

しめ鯖

紫蘇の葉

ガリ(寿司の生姜)

チャイブ(ねぎ)

海苔

作り方

 市販のガリを細切れに刻む。しめ鯖を薄く切る。海苔の上に切ったサバを交互に敷き詰めていく。その上に紫蘇、ガリ、チャイブを乗せて、手でくるくると巻いていく。すのこなどは必要なく、海苔巻きのような1回転でもなく、そのまま渦巻き上に巻いていく。1本できたら真ん中を切って、さらに3等分、6個ができる。シャリの部分にしめ鯖を使ったおつまみ。簡単にできて美味しく、酒の肴にぴったりだ。

羊のお頭

 夫と入ったギリシャ料理店で、その日の日替わりメニューを見る。

 kefalaki(ケファラーキ)と書かれている。

 マンハッタンの東側を流れるイースト川を渡ると、そこはクイーンズ区だ。マンハッタンにほど近いアストリアには、今もギリシャ移民が多く住む。 

 一年間、ギリシャに住んでいた夫も、何の料理かわからないというので、体格のいいウエイターのおじさんに尋ねる。

 羊の頭だよ。最高に旨いぞ。

 夫は目をキラキラさせている。私たち夫婦の趣味や嗜好はとてもよく似ているが、これだけは大きく異なる。夫は、内臓系の得体の知れないもの、気味の悪いものを好んで注文したがる。

 パリの高級レストランで、夫が嬉々として注文したのは、牛の腎臓のステーキだった。 それを料理する前に、ウエイターがご丁寧に、わざわざ大きな生の腎臓を見せに来たときには、絶句したが、夫はご満悦である。 

 ここでも、料理する前の羊の頭を、恭しく見せに来るのではないか、と考えただけで食欲が失せる。

 お願いだからやめて、と激しく抵抗したものの、夫の意志は固い。

 せめて、私だけでも、まともなものを注文しなければと、好物のカラマリ(イカ)のフライに決める。 

 注文を取りに来たウエイターのおじさんが、夫に向かって親指を立てる。 

 You know the good stuff.

 通だね、あんた。 

 ほどなくして、店内に、バンバンバンと聞きなれない騒がしい音がこだまする。私と夫は思わず、おしゃべりをやめ、耳をそばだてる。どうやら厨房から聞こえてくるようだ。骨をたたき割っている音か。 

 下手物好きのくせに、夫には臆病なところがある。すでに、顔にはやや後悔の表情が見られる。 

 ウエイターがにこにこしながら、夫の前に皿を置く。注文どおり、羊の頭が載っている。ぎょろりとした黒い片目が、私をにらんでいる。見たくもないのに、羊と目が合ってしまい、慌てて目をそらす。気味が悪くて、直視できない。 

 濃厚で独特な羊の臭いが、湯気とともにお頭全体から漂ってくる。 

 軽い吐き気を催す。それでも、好奇心の強い私。どんな下手物であっても、ひと口、トライするべし、を信条としている。

 羊の目を見ないように注意を払いながら、顔の表面にかろうじて張り付いている、よく焼けた肉を、手でパリパリはがしながら食べる。むろん、こんな野蛮な料理に、ナイフとフォークの出番はない。

 やや塩気があるようだが、さらに塩コショウとオリーブオイルをかける。 

 夫が歯茎の辺りの肉を食べるさまは、まるで羊とキスしているようだ。心を無にして、 食べることに集中し、立派にそろった歯を極力、見ないように努めているらしい。 

 白く柔らかい部分は、脳味噌だ。ぼそぼそして見えるものの、口に入れるととろける感じがして、白子のようだ。 

 こればかりは、もう二度と注文することはないだろうな、と夫がため息をつきながら、ぼそりとつぶやく。

 レストランで、私は半分ずつ互いの料理を味わいたいほうだが、夫は自分の頼んだ品が気に入ると、それを独占したがる。

 どうぞ、どうぞ。心ゆくまで召し上がれ。

 私に遠慮せずに、羊さんを思う存分、愛してあげてくださいな。 

 私はひとり、心安らかに、自分の料理を味わっている。

 カラマリは、文明開化の味がした。 

 このエッセイは、「ニューヨークの魔法」シリーズ第5弾『ニューヨークの魔法のじかん』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

猫も空飛ぶスパイ大作戦 ARGYLLE

 軽妙なスパイコメディ「キングスマン」シリーズの監督マシュー・ヴォーンがウィットとユーモアだけでは物足りないと、キングスマン路線を大幅に逸脱し、アクション満載のマンガ風仕立てで描くド派手スパイ映画。

  スパイ小説のベストセラー作家が実際のスパイ大作戦に巻き込まれる、という流れだが、後半にかけてどんでん返しが仕込まれているのでお楽しみに。

 「ジュラシック・ワールド」シリーズのブライス・ダラス・ハワード、「スリー・ビルボード」でアカデミー助演男優賞を受賞したサム・ロックウェル、サミュエル・ジャクソンら個性派俳優陣にかわいいスコティシュフォールドのにゃんこが加わる。

 エリー・コンウェイ(ハワード)はイケメン・スパイ、アーガイルを主人公にした小説で人気を集めている。シリーズはどれもベストセラーとなり現在、5作目を執筆中。最終章でつまずき、気分展開も兼ねてシカゴにいる両親を訪ねることにした。家族同然のペット、アルフィーをバックパックにしょって汽車の旅だ。

 ところが途中の車内で突然、変な男たちに襲われそうになる。助けてくれたのは自称スパイのエイデン(ロックウェル)。エリーの小説が実際に悪の秘密組織とスパイとの戦いを予測している内容で、組織がエリーの命を狙っている、というなんともキツネにつままれたような話だが、殺されかけたのは紛れもない事実でその悪の組織を暴くために2人はロンドンに向かう。

 ここからはエリーとエイデンの探索と小説の中のアーガイルとその仲間の活躍とがマージしながら全体のストーリーが進行。思いもよらない黒幕が次々登場、殺し屋たちに追い詰められ危機一髪のところウソのような展開で逃げ延びたりと爆笑シーンにはこと欠かない。

 アーガイルに扮するのは「マン・オフ・スティール」でスーパーマン役を演じたヘンリー・カヴィル。7代目ジェームス・ボンド候補に挙がっているだけあり、華麗で無敵ぶりのスパイ役にはうってつけ。2時間19分。PG-13。   (明)

(写真)エリー(ハワード)はペットのアルフィーと旅に出る
Photo :Universal Pictures; Apple Original Films; and MARV


■上映館■

 Regal E-Walk 4DX & RPX

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 34th Street 14

312 W. 34th St. 

弾ける足音世界に響かせるまで

タップダンサー 中川恵美子さん

 タップダンサーのEMIKO、本名・中川恵美子さん(26)は、身長165センチ。日本人としては腕も長い方で、すらっとした体型から弾き出すタップの軽快さとダイナミックな動きで観客を魅了してきた。日本ではショーの出演、振り付け、インストラクターなどをしていたが、3年前に活動の拠点をニューヨークに移し、米国で活躍することを目的に現在ダンス留学中だ。所属はダンス・スクールとしてはニューヨークの老舗で名門のブロードウエー・ダンス・センターで週に10コマから12コマのレッスンを受けながら、ショーの出演、ソロパフォーマンス、クラスのアシスタントをしている毎日だ。

 4歳からダンスを習い始めダンス歴は20年を超えた。幼児の頃に見たNHKの子供向け番組「みんなの広場だ!わんパーク」のダンサーに憧れて踊っている姿を見て、親が連れて行ってくれたのが、その憧れの子供ダンサーたちが練習しているダンススクールだった。夢中になってレッスンに励んだ。小学校3年の時には、NHK紅白歌合戦のバックダンサーとして舞台に立つ。子供心にも、満席の大ホールでのステージが生む魔法のような陶酔感と感動を覚えたという。それからはダンス、特にタップダンスの魅力に取り憑かれて「ますますのめりこんでいった」そうだ。

 夢中になってレッスンに励むなかで、特にはまったのがタップダンス。ダンス・スクールでのレッスンでは飽き足らず、ニューヨークで活躍していた日本タップ界のレジェンド、みすみ・スマイリー・ゆきこ女史に師事するようになり、タップダンサーへの道をあゆみはじめたそうだ。

 中学生の頃から両親とニューヨークへ旅行に来る度に、タップのクラスを受けていた。自然と「絶対にアメリカでタップダンサーになる」と思い始めたそうだ。

 米国では、タップダンス専門のダンスカンパニーがいくつか存在し、数は多くはないが、どこもマネジメントがしっかりとしていて、エンターテインメントの世界でもダンスのジャンルとしてビジネスモデルが確立されている。自分にしかできないタップダンススタイルをより確立すること。そしてアメリカと日本のタップダンスコミュニティの架け橋となることが夢だ。「アメリカのタップダンス・スピリットを学んで日本へ持ち帰ることが私のアメリカでの大きな目標です」と話す。「ニューヨークの一瞬も休まない賑やかな雰囲気が好きです」と笑顔を残してマンハッタンの雑踏の中へ消えて行った。(三浦良一記者、写真も)

編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。ニューヨークでは先週、市内各所でニューヨーク・ファッション・ウィークの発表会が華やかに開催されました。本紙が今週号で紹介しているのは「伝統素材を生かした装い」と「革新的なメディア・アートを生かした装い」のふたつのイベントと、日本の若手デザイナーに発表の場を提供し続ける日本企業の取り組みです。日本の伝統素材を使い世界のデザイナーとのコラボコレクションを展開しているのはSAKURAコレクションの代表理事・田畑規子さん。栃木県の佐野正藍、新潟県の小千谷縮などを使った、着物素材を洋服の世界へ繋げる試み。昨年に続き2度目のNYイベント。そして京都大学でAI時代に新しい価値を生み出すアート・イノベーションとアート&テクノロジーの教育に従事している土佐尚子教授が発表したのは、赤ちゃんの鳴き声を電子的に高画質カメラで映像化してテキスタイルにプリントした「生命讃歌」の作品。また若手の発表の場としてバンタンとパルコが続けているイベントは今年は「アジア・ファッション・コレクション」と題して3人の若手デザイナーの作品を発表しています。ニューヨークの五番街を歩くと、バス停やブティックのウインドウには、ひと頃黒人オンパレードだったモデルの中に、アジア系のモデルがかなり増えてきている印象です。アジア系の「お醤油顔の一重まぶた」が新しい美しさのバロメーターに加わった感じです。マンハッタンの百貨店の前でまるで1950年代のボーグの雑誌から飛び出してきたような高齢の婦人に出くわしたり、大学のクラブに行けばボタンダウンのワイシャツに見事なシワを作って着こなしている高齢のアイビーリーガーの姿をまだまだ見ます。自分のスタイルを持った生き方がファッションにも出るのでしょうね。アジア系の顔立ちも、西洋の人からはかっこいいと見られているようです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年2月17日号)

(1)伝統と革新のファッション日本から (1面)

(2)在外安全対策セミナー (1面と6面)

(3)EATOUT 味にこだわった居酒屋割烹 (2面)

(4)クライアントとダンサーを結びつける NY生活ウーマン(3面)

(5)村瀬裕子さん偲び460人が参列 (7面)

(6)日本ふるさと名産食品展 22日からジャパンビレッジで(8面)

(7)ピアノ3コンクールで全て1位に NY育英小3の小倉君 (10面)

(8)本番前に気をつけること 田村麻子のカーテンコール (14面)

(9)日本のホラー映画特集 NYで25本一挙上映 (16面)

(10)「菊と刀」をアートに 高氏奈津樹 (16面)

伝統と革新のファッション日本から上陸

SAKURA COLLECTION & SOUND OF IKEBANA

 ニューヨーク・ファッション・ウィークで日本の「伝統素材を生かした装い」と「革新的なメディア・アートを生かした装い」のふたつの発表が注目を浴びた。

 京都大学でAI時代に新しい価値を生み出すアート・イノベーションとアート&テクノロジーの教育に従事する土佐尚子教授が10日午後6時30分、チェルシーインダストリアルで最新作を披露した。土佐教授は、主に音と映像の関係から新しい価値を生み出すことに関心を持つニューメディア・アーティスト。

 今回のテーマは生命賛歌。ブランドの特徴は、デジタルテキスタイルプリント技術を駆使し、ニューメディアアートをファッション化すること。2000コマ/秒の高速度カメラで、肉眼では見ることのできない赤ちゃんの泣き声や心音から生まれる形をとらえた。それはパワーファッションと呼ばれる 生け花の音として表現した。エプソンのスポンサーの元、アイウエアのLucky Selectism とジュエリーデザイナーの堂園まりことのコラボ。卵の膜から繊維を作った京都のファーマフーズとコラボしてマントを作成、音楽は現役の京大生が担当した。=写真右・三浦良一撮影=。

 またニューヨークファッションウィークが始まった7日、ピエールホテルでは、SAKURAコレクション2024が行われた。セントラルパークの東側1920年に建てられた歴史あるホテルに、100人以上のメディア、ファッショニスタ、インスタグラマーなどが集まり会場は華やかな雰囲気に包まれた。

 日本の伝統素材を使い世界のデザイナーとのコラボコレクションを展開するSAKURAコレクション(代表理事・田畑規子、所在地・東京都品川区)が、今年は、中伝毛織の再生ウールを使ったシンガポールデザイナーのSabrina GOH、栃木県の佐野正藍を使ったイタリアのデザイナーFLORANIA、 新潟県の小千谷縮を使ったウクライナのDZHUS=写真左・植山慎太郎撮影=など、新進気鋭のデザイナーの作品とコラボした作品とともに、DJミュージックに合わせた和太鼓や尺八の演奏とともに、キャットウォークやダンスで、ニューヨーカーの拍手を集めた。

味にこだわった居酒屋割烹

 店の奥のダイニングに入るといきなり椰子の木のごとくそびえる巨大な蚊取り線香のオブジェが目に飛び込んでくる。マンハッタンの中で今最も先端を行くロウアーイーストサイドにこのほど開店した居酒屋割烹bbfは、サムライママやBOZUなどニューヨーク市内で6件の居酒屋を経営する鈴木誠さんが新しく出店したお店。元炙り屋錦乃介のメインシェフ飯田二郎氏=写真=が料理長として腕を振るう。

 素材と味にこだわったのが手作りホームメイドの無添加明太子(10ドル)と糠漬け(12ドル)。40種類ある日本全国の蔵元の銘柄が並ぶ中から、テイスティングもできる。料理長のおすすめは、酒の肴の盛り合わせで、ゴボウのチップ、もろみと辣油で味付けたピリ辛きゅうりと烏賊。ズワイガニとトビコを使ったスタッフドマッシュルーム、アスパラの胡麻和え、茄子の竜田揚げ、かぼちゃの田舎煮、旨味イクラは醤油鰹出汁漬けと豪華な七品メニューを28ドルで提供している。朝のカフェタイムはおにぎりが自慢で定番の梅や昆布、シャケ以外に煮卵、焼豚、焼き明太子など12種類が楽しめる。カウンター12席、ダイニング40席のほか、8席の割烹ルームもある。新興アートギャラリーやブティックを見たあとは美味しい食事と日本酒でくつろぎたくなる穏やかな店だ。(三)


bbf

177 Ludlow St. New York, NY 10002

営業時間 

カフェ7:00-17:00 居酒屋割烹17:00-22:00 日曜のみ 7:00-17:00

Tel:646-649-5363

bbf-nyc.com

安全対策セミナー開催

NY日本総領事館

「たびレジ登録を忘れないでほしい」

 ニューヨーク日本総領事館は6日午後、「令和5年度在外安全対策セミナー」を日本クラブで開催した。在留邦人及び日系企業の危機管理・安全対策に関する知識や意識の向上を図るのが目的でニューヨーク市での開催は2年ぶり(対面式では4年ぶり)で約120人が参加した。

(写真上)満席の会場で熱心に聴講するセミナー参加者(日本クラブで)

外務省が作成した安全対策マニュアル

 同セミナーは外務省が現在全世界で実施している。在外日系企業の安全とリスクマネジメントを支援するコントロール・リスク・グループが、1975年の創設以来これまでに全世界で5300社以上、日本国内で300社以上の支援をしたノウハウをもとに当日は住友商事の安全対策推進担当の岡田法久氏が、一般犯罪対策、ヘイトクライムなどの突発的な暴力や傷害事件に対する対応、またテロ対策や無差別殺傷事犯対応など、具体的な事例を挙げて講義形式で説明した。

 セミナーでは、外務省が中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル版として制作した冊子、漫画家のさいとう・たかを氏(故人)の代表作『ゴルゴ13』=写真=のビデオが、舘ひろしの声で流され「たびレジ」の登録を呼びかけた。

 たびレジとは、外務省による在留届の提出義務のない日本国外への渡航者(3か月未満や住所・居所を定めない場合など)を対象にした海外安全情報配信サービスの登録システム(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html)で登録すると海外での出張先、滞在先の緊急情報や安全情報をメールで受け取ることが出来る。2014年7月1日より運用開始している。

テロから逃げる方法

在外安全対策セミナー
銃乱射現場では伏せること重要

 ニューヨーク日本総領事館は6日午後、「令和5年度在外安全対策セミナー」を日本クラブローズルームで開催した。ニューヨークにおける犯罪の傾向は、日本よりもはるかに高い発生率となっている。2023年の統計で強盗は1万6902件で、東京の399件のおよそ50倍と極めて高い水準。前年比では減少したと報道されているが、東京都比較すると極端に高い状況と報告された。殺人件数はNYは386件と東京の91件の4倍強。レイプはNYが1455件に対し東京は248件。犯罪統計全体でNYが12万6678件と東京の同7万8475件の約1・6倍。

 ヘイトクライムの主な標的はユダヤ系、アジア系、LGBTQで、ガザ紛争の影響を受けて最近はユダヤ系に対する犯行が急増していることも指摘された。昨年12月統計で全59件のヘイトクライム中、ユダヤ系に対する犯罪が31件を占めた。アジア系は4件だった。

 テロ、銃乱射からの避難、防衛については、逃げる、隠れる、誰かに助けを求めるという段階で、まず、伏せるということが一番大事だと解説した。立っている場合、しゃがんでいる場合、伏せた場合の被弾の確率が激減する。歩腹前進についての説明で、会場で経験のある人は皆無、実際にやってみることの難しさを紹介した。

 また、犯人の目的は、一人でも多く殺傷することで、最初の1発目の爆発の後、その周りに集まってきた群衆に向けて第2発目の爆発、攻撃があるので、その場から離れることが大切だと強調した。

 また文化の違いによって身柄を拘束されたりする例があり、日本人の親が空港で走り回っていた子供を厳しく叱責した様子を見た周りの人が警察に通報して、親が警察に児童虐待容疑の現行犯で逮捕された例などを紹介した。