幸子の幸はNYにもあったんだ

映画「佐藤敬子先生を探して」の映像を背景に歌うあがた森魚(9月29日、マンハッタンで)

あがた森魚がトーク&ライブ

ステージは「サルビアの花」で始まった。1972年「赤色エレジー」で電撃デビューを果たしたシンガーソングライター、あがた森魚のトーク&ライブショーが9月29日、マンハッタンのプロデューサーズクラブで2回行われた。
 当日は、2年前、自らの45年の音楽史を語るために制作を開始したドキュメンタリー映画「佐藤敬子先生を探して」の一部上映も行われた。映画では、森魚の探究心を執拗に駆り立てる担任佐藤敬子への羨望と畏怖の念、小学1年の森魚に驚愕の世界観を見せつけ、わずか2年の間で、幼い心に「自分を表現する」種を蒔き、今もなお創作の水源であり続けるその永遠の恩師を探し求めるあがたの姿を印象的に描く。
 今回は、ラジオ・パーソナリティ役の末永ジュンが、あがた森魚をゲストに迎えるラジオトークショーという趣向で進行。演奏曲は、「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」など7曲のほか、アンコールでは「赤色エレジー」を含め2曲歌った。  
 「漠然と考えてきたことが漠然とできた。日本ならお膳立てできて簡単だったろうけどここでは正直大変だったことが逆に素晴らしい発見だった。憧れのボブ・ディランとオレが父親だと勝手に思ってる稲垣足穂は達観したニヒリズムみたいなところや朗らかに見えてデッドなとこや、現代に対して冷静で愛の力のイメージが通底しているところが共通項だ。デビュー曲「赤色エレジー」は、今でいう東映動画のアニメーターのような画家を目指して上京した若き幸子と一郎の同棲生活を描いた林静一の漫画で、それに感動して作った曲。週刊NY生活の記者から『あれから50年たって、時代は変わっても、このニューヨークにも、現代の幸子と一郎がいっぱいいるので、なんでもいいので一言、言ってやってください』って言われた時、オレ、生きてるなって思ったよ。オレはそういう人たちと出会いたくてたぶん来たんだよねここに。ニューヨークで金もなく、将来の保証もなく頑張ってる現代の幸子と一郎たちよ—大変でも、たいしたことないよ。うまくいってもいろいろあるし。新聞で記事見てるあなたとオレはまたどこかで会える。今日はここの人たちに会いたくてきたからすごく嬉しい」。
 ステージで一語一語噛み締めながら語るあがたの頬に一筋の涙が光った。
 (三浦良一記者、写真も)

フロリダ州ディズニーワールド

エプコットの花火ショーと食の祭典

 もう昔の事になるが、フロリダ・ディズニーワールドのエプコットにある日本館スタッフとして約1年間勤務していた。レストラン勤務の私の生活は夜中心だったため、当時の生活を思い出す時、必ず頭に浮かぶのはエプコットの夜の花火ショー。それが始まる音が聞こえると閉店の合図。「今日もお疲れ様」ときちんとその日を終え、明日に紡いでいくような気持ちにさせてくれた。エプコットに来るゲストも心待ちにしているイベントだったし、内容も素晴らしかった。ディズニーワールド内の夜のショーはマジックキングダムが断トツで花形だったが、エプコットの花火ショーにはコアなファンが多く、それだけを見に来るゲストもいたほどだった。
 その思い出深い花火ショーが今年9月に20年の歴史に終止符を打つという悲報を聞き、これは最後の勇姿を見に行くべきだと、当時の仲良し同期4人(東京から2人、NYから友人と私)がフロリダに集合した。
 当日は朝から気合い充分で、事前にお揃いで用意していた「Reunion for the farewell illuminations」と書かれたオーダーメイドTシャツと、当時プログラム修了式でもらったミッキー卒業帽子を着用し、エプコットの大人気イベントであるフード・アンド・ワイン・フェスティバルを楽しんだ。いい歳してこの出で立ちは失笑されるかもという懸念もあったけど、老若男女問わず皆思い思いのディズニースピリットをさらけ出せるのがディズニーマジックということで全員一致だった。
 フード・アンド・ワイン・フェスティバルはエプコットの入場チケットだけで参加できる。入口でパスポートをもらって自分で好きなフードやドリンクを購入して楽しめる気軽さと、世界レベルでも引けを取らない料理の質の高さから不動の人気を誇り、年々ブース数も増え、ワールドショーケース(11か国のパビリオンが集まる万博のようなエリア)にある国以外にも多くの国々が自慢の数皿とそれに合うペアリングドリンクを販売していた。タイのレッドカレーとシュリンプサラダ、バハマのジャークチキン、メキシコのマルガリータとブレッドプディング、スイスのラクレットチーズ、インドのチキンコルマ、イタリアのスパークリングワイン、中国のブラックペッパーシュリンプヌードルとマンゴタピオカティー、スペインのパエリアと生ハムチーズオリーブのサラダ、日本の冷たいラーメン、カナダのフィレミニョンと赤ワイン。各国ご自慢の渾身の料理とドリンクを思う存分堪能しながら、花火ショーのどこが好きかとギークなトークに花を咲かせ、フロリダの生暖かい空気と湿り気を感じながら、花火ショーが始まるまでの長い日中、懐かしの地を練り歩いた。
 ショーはワールドショーケースの真ん中にあるラグーンで毎晩9時から行われる。開始30分前から思い出深い古巣である日本館の鳥居前に場所を取り、カウントダウン的なアナウンスを聞きながら待ちわびた。
 花火ショー(正式名称はイルミネーションズ : リフレクションズ・オブ・アース)は地球の始まり、歴史そして未来を、花火と映像と音楽で演出している。他のパークのショーのようにディズニーキャラクターが出て来ることは一切無く、キャラクター頼みもしない分、中身も深くブレない点が私たちのようなファンが愛してやまない部分だと思う。プロジェクション・マッピング全開のような華やかさは無いが、クリエーターによる丁寧な作り込みを感じることができる。
 前半パートは力強い音楽と共に迫力のある花火が打ち上げられ、ラグーンの水もウォーターアートとして彩りを添え、躍動感あふれる地球の誕生を祝っているかの様だ。そして大きな地球儀が水面上を中央に移動し、穏やかな音楽と共に、雄大な自然や世界の国々の歴史的映像がそこに映し出される。
 後半は明るい未来に向かっていくような音楽とともにワールドショーケースの各国の建物が順番にライトアップされ、どの国も例外なく頼もしく勇ましく映る。ラグーンの地球が半分にゆっくり割れて火が灯り、最後は壮大な音楽と花火でフィナーレ。「地球上のすべての国の未来が明るく素晴らしいものでありますように」というウォルト・ディズニーからの強くあたたかなメッセージを感じつつ、万感胸に迫る思いで最後の鑑賞を終えた。「私はどこかでずっとエプコットを引きずって生きてきたような気がするけど、やっと卒業しようかな」と友人に言うと「じゃあマイクを置こうか」などと皆で笑い合った。
 エプコットファンには朗報で、10月1日から「エプコット・フォーエバー(期間限定)」という花火のショーが始まり、さらに2020年「ハーモニアス」という花火ショーも始まる。音楽、LEDパネル、最新レーザー技術など余すことなく現代テクノロジーを駆使し、さらにスケールアップした壮大なショーになるというので、これも見てみたいという気持ちもやっぱり否めない。フード・アンド・ワイン・フェスティバルも来年はさらにパワーアップしているだろうし、卒業宣言を撤回し、またエプコットに行く日もそう遠くはない気がする。そして何よりも、ディズニーファンの方にもそうでない方にも次のご旅行プランに強くお薦めしたい。
(野田恵里子/IACEトラベル広報課)

スリーピーホロウに来たなら
スモークハウスバーガーを!

 タリータウン北側の町スリーピーホロウは首無し騎士の話で知られ、やたらと活気づくハロウィーンの季節を除けばとても地味な町で、街を東西に走るビークマンアベニューにも、わざわざ足を運びたくなるような魅力的な店は無い(と思っていた)。特に川に近い西の果ては店舗がなく、古く地味な一般住宅がひっそりと並ぶだけ(と思っていた)。しかし、そこには「ブリッジビュー・タバーン」があったのだ。
 ここのおすすめはなんと言ってもハンバーガーだ。店内を見渡すと客の7割がハンバーガーにかぶりついている。ならば私も、と食したのは「スモークハウス(16ドル)」。10パウンドのプライムビーフパテにアメ色に炒めた玉ねぎとチェダーチーズ、ベーコンを乗せて特製BBQソースを少々。この「少々」という量が非常に大切で、他店にありがちなBBQソースべちゃべちゃでは無い。パテの肉の旨味を損なわずスモーキーなBBQ風味がほんのり、絶妙なバランスだ。パテの外側はカリッと中はふんわりジューシーで肉の臭みがなく、実に美味しい。(砂)


Bridge View Tavern
226 Beekman Ave.
Sleepy Hollow, NY 10591
Tel: 914-332-0078
https://bridgeviewtavern.com/
月曜 16:00〜22:00
火〜日曜 11:30〜22:00

地元住民が大喜び
ダイソー北米3店舗目オープン

ウエストチェスターのスカースデール

 今年3月にクイーンズ・フラッシング店を、8月にニュージャージー・エッジウォーター店をオープンしたダイソーが北米3店舗目となるウエストチェスター・スカースデール店を9月21日にオープンした。場所はセントラルパークアベニューとアーズリーロードの交差点近く、ミッドウェイ・ショッピング・センターの一角。スーパーマーケットのショップライトやCVSファーマシー、大型手芸品店のジョアンなどが店を構え、もともと集客が良く活気のあるオープンモールだったが、ダイソーのオープンにより更に賑やかさを増したようだ。
 グランドオープン当日は一番乗りを目指す客が早朝から並び、10時の開店前にはモール北端に位置する店舗に沿って長い列が出来た。先頭に並んでいたヨンカース在住の米人女性は朝5時に来て一番のポジションを手に入れたそうで、「フラッシングとエッジウォーターのオープニングにも行ったんだけど、遠かったので一番になれなかった。ここは自宅から近いので、やっと一番乗りができたわ。とにかくダイソー商品の大ファンで、ここに来るとお金をいっぱい使っちゃうけれど、近所に開店してくれて本当にうれしい」と笑った。
 午前10時、他の2店舗のオープニングでも威勢良い太鼓を披露したニューヨーク太鼓愛好会による太鼓の音を合図に正面ドアが開けられ、買い物客がなだれ込んだ。総床面積1万1000スクエアフィート(約1022平方メートル)を持つスカースデール店は3店舗の中で最大面積を持つ。商品棚の間の通路もゆったり目なので、数百人の客が入っても息苦しい感じはしない。店内をぐるりと回って観察したところ、文房具やキッチン用品、和風の雑貨類が特に人気が高く、なかにはカラフルなフタがついた食品保存容器ばかり20個以上買い占めている人がいた。
 フラッシング店、エッジウォーター店の立ち上げにも関わった下司修平店長は、「他の2店はアジア系のお客様が多いのですが、ここスカースデール店は多彩な人種の方々がいらっしゃると予想しています。さまざまなバックグラウンドのお客様に来ていただいて、皆さんがリピーターになってくれる店を目指したいです」と話す。


ダイソースカースデール店 
925 Central Park Ave., Scarsdale
月〜土曜 10:00〜21:00
日曜 10:00〜20:00
www.daisojapan.com

つげ義春の最高傑作

つげ義春・著
青林工藝舎・刊

 およそ漫画の世界と縁のない人でも、この作品の名前くらいは耳にし、また目にしたことがあるはずだ。『ねじ式』は、つげ義治が、青林堂から出版されていた月刊漫画雑誌『ガロ』の1968年6月号増刊特集に描き、掲載された作品で、その緻密な作画だけでなく、描かれている世界が夢の中の幻影がそのままオムニバス形式の黒インクとオレンジ(朱色特色)2色で彩られたシュールな作品だ。あまりにも多くの批評と賛辞が寄せられ、作品が一人歩きしているが、幾つか出されている復刻本、単行本のなかでも、この作品をオリジナルの印刷状態で100%復刻できたのは、青林堂がなくなり、『ガロ』が廃刊となったのちも版権を持ち作品の保管、再出版をしている青林工藝舎の原画からのプリントだからだろう。1965年から70年発表の代表作を初出誌サイズで一挙に再現。単行本未収録を含むカットやエッセイも可能な限り収録し、単行本により微妙に異なっていたセリフもオリジナル無修正版としたという集大成だ。
『ねじ式』は、作品が発表されて以来、50年以上の年月がたつなかで60年代、70年代の時代を代表する作品として色あせることなく今なお、日本が残した前衛芸術作品として燦然とした光を放ち語り継がれている名作だ。
 なぜ、つげが、この作品を描き得たのか、つげ自身もその後のインタビュー記事などでも多くを語っていないが、明らかに、前後の当日の作品群『紅い花』、『ゲンセンカン主人』『無能の人』(いずれも映像化され、『紅い花』はエミー賞を獲得するなど海外でも高い評価を得ている)とは、世界観が明らかに異なる作品で、つげの作品の中でも、異色を放っている。『カムイ伝』や、『忍者武芸帳』を描いた白土三平の仕事を手伝い、『鬼太郎夜話』(後の『墓場の鬼太郎』、その後の『ゲゲゲの鬼太郎』)を描いた水木しげるのアシスタントをしていただけに、背景の描き込みは天下一品。そして、『ねじ式』は、現存する世界を描いていないところが、他の作品との決定的な違いだ。
 70年代の中頃、当時大学の漫画研究会にいた私は、神田神保町の材木屋の2階にあった青林堂の編集部を訪ねたことがある。編集者だった南伸坊さんが出てこられて、棚の引き出しから林静一とつげ義春の原画を出して見せて「ドラム缶一つ描くのでも違うだろ」と優しく解説してくれた。原画のあまりの美しさに愕然としたのを覚えている。
 同作品集には、前出の『赤い花』『ゲンセンカン主人』はもちろん『やなぎや主人』『もっきりやの少女』『山椒魚』そして『李さん一家』などの忘れがたい名作の数々が収録されている。  (三浦)

第一線で命を救うやりがい

アルバートアインシュタイン医科大学助教授 
モンテフィオーレ病院集中治療専門医 

コルビン麻衣さん

 Intencivistという専門医がいる。さまざまな集中治療室(ICU)で、重要臓器の機能不全などから生命が危険にさらされている患者を専門的に診る医師のことで、例えば心臓胸部ICUでは体外式膜型人工肺を必要とする患者や、心臓移植や心臓バイパス、肺移植などの手術を受けた患者の術後ケアを任される。また、入院中に突然容態が悪化した患者やERからICUへの入院が必要だと判断された患者を集中治療のコンサルタントとして診ることもある。ブロンクスの大病院で集中治療専門医として活躍しているコルビン麻衣さんに話を伺った。
 もともとユニセフや国連の仕事に興味があったのと、英語を真剣に学ぶために高2の夏に留学。渡米直後は英語力のなさを痛感したものの、恵まれた環境でスポーツ、芸術、勉強と充実した高校生活を送るなかで米国の大学に進学したいと思うようになり、名門カーネギーメロン大学に進学、4年半で修士号と学士号を取得した。「何かしら人のためになる仕事をしたいと思っていたのですが、大学在学中に病院でボランティアや、研修医についてまわるshadowing program をするなかで医師になりたいという決意が固まり、フロリダ州のメディカルスクールに進学しました」。 
 医師免許取得後はモンテフィオーレ病院の内科で研修医を務めた後、呼吸器と集中治療の専門研修を経て現職に就いた。同病院は地元ブロンクスに根付いた病院で毎日さまざまな患者が多数訪れる。なかでもERを訪れる患者数は全米でも10本の指に入るほど多忙だ。さまざまな分野があるなかで集中治療科を選んだ理由を尋ねると「研修医としてICUで働いた際に生命の危機に瀕している患者さんとその家族に寄り添い、どんな状況にあっても落ちついて的確に判断を下す指導医の姿を見て憧れを抱いたのがきっかけです。一つの臓器に特化するのではなく急性臓器不全の患者さんを総合的にケアできる事、仕事にメリハリがある事、そして何より第一線で誰かの命を救う手伝いができる事にやりがいを感じたことです。忙しくしていることが好きな性格ともあっていたんだと思います」。
 専門医研修中に2人の子供を出産、3歳の男の子と1歳の女の子の母親として、主婦として、集中治療専門医として多忙な毎日を送るコルビン先生。今後の目標は? との質問に「仕事と家庭のバランスを保ちながら仕事を続け、常に自ら学ぶ姿勢を忘れず、今後は医学生や研修医の指導にもっと力を入れていきたいと思います。また日本人として、自分らしい形で日本人コミュニティーにも貢献できたら幸せです。将来的に子供が独立したら、私が医師を目指すきっかけになったグローバル・ヘルス(地球規模の健康課題、公衆衛生)にも貢献できたら、と思っています」と笑顔で答えた。   (東海砂智子)

宮城聰のアンティゴネ ニューヨーカーを魅了

Photo: Stephanie Berge

 日本演劇界を代表する演出家の宮城聰(みやぎさとし)の舞台「アンティゴネ」が9月25日、マンハッタンのパーク・アベニュー・アーモリーで始まった。国王の命令に従って死骸を野ざらしにすべきか丁寧に埋葬するのが正しいのか。有名なギリシャ悲劇に日本人の死生観を重ねた本作品は、連日約1000席の会場を埋め尽くしたニューヨーカーの大絶賛を浴びている。
 驚かされるのは1万8000ガロンというプールのような水の舞台。上演前から役者が静かに水の中を歩いたり物語のあらすじを英語でコケティッシュに説明したりする前座、英語字幕を見せつつ台詞と動作を別の役者が演じる手法、能や文楽、盆踊り、僧侶など、日本的要素が織り込まれる舞台で観客を魅了する。。
 28日夜の公演では、「打楽器とスローな動作のコントラストが素晴らしかった」「ただただ美しい」などの声が聞かれた。終演後に出口で観客を見送る宮城に、感想を伝えたいニューヨーカーの列ができていた。宮城は本紙インタビューに対し、「これだけの規模としつらえでやれたことに感動しています。ニューヨークのお客様はさまざまなバックグラウンドを持っていらっしゃるので、ここで自分の作品が評価されれば自分の作品に普遍性が内在しているということが証明されたということになると思います。今回は自分にとって大きな経験になりました」と話していた。
 本公演は全11回、6日(日)まで。静岡県舞台芸術センター(SPAC)と国際交流基金との共催。 (小味かおる)

館に宿る真心と誇り
Downton Abbey

 20世紀のイギリス田園地方を舞台に貴族社会やその使用人たちの生活を描いた人気TVドラマの映画版。ドラマはイギリスでは2010年から、アメリカではPBSのマスターピース・クラシックとして11年から6シーズンにわたり放送。エミー賞作品賞ミニ・シリーズを含む数々の賞を受賞し、200か国以上で放送されるなど「世界がはまったドラマ」だけに待望の映画版だ。
 物語はドラマの最終回から2年後に当たる1927年の設定でいわば「続き」だ。ヒュー・ボネヴィル、エリザベス・マクガヴァン、マギー・スミスらメインキャストはドラマと同じ。脚本はドラマのクリエーター、ジュリアン・フェロウズ、監督はドラマでいくつかのエピソードを手掛けたマイケル・エングラーというベテラン陣。
ファンにとっては出だしのテーマ音楽とともに緑に囲まれたクローリー家の大邸宅が映し出されるとわくわくするような懐かしさがこみあげてくるが、ドラマを見たことのない人も単独の映画として十分楽しめる。
 ヨークシャーにあるカントリーハウス、ダウントン・アビーではグランサム伯爵クローリー家のファミリーと長年にわたりそこに働く使用人たちがまた新しい一日を迎えていた。しかし一通の手紙が伯爵のもとに届けられるといつになく騒がしくなる。なんと、国王と王妃が当地を訪問するという。
 クローリー家はもちろんだが王族を影でおもてなしする使用人たちの意気込みはそれ以上だ。グランサム伯爵の長女メアリー(ミシェル・ドッカリー)は万全を期すため引退した執事のカーソンを臨時に呼び寄せ、料理担当のパットモア夫人とデイジーは腕によりをかけたメニューを作り、メイドや下男たちは賓客室を初め屋敷全体に磨きをかけて準備に大忙しだ。
 華麗なる貴族らの夕食会、ダンスパーティやグランサム伯爵の母親バイオレット(スミス)の皮肉たっぷりの物言い、使用人たちの内輪もめなどダウントン・アビーの看板は健在。バロー、ブランソンらが絡むサブプロットも物語展開を面白くするが、何と言っても国王らに随行する使用人対ダウントン・アビー使用人の激突が見ものだ。2時間2分。PG。 (明)
https://www.focusfeatures.com/downton-abbey/video/official-trailer-1


■上映館■
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Loews
34th Street 14
312 W. 34th St.
AMCLincoln Square 13
1998 Broadway

稲森アートプロジェクト 11日からNY2カ所で

「長崎の奇跡」「消防士物語」

 2010年に稲森紀子さんによって結成、11年に設立された非営利団体の稲森アートプロジェクト(IAPG=代表:大和光剣、本部:東京)による演劇とミュージカル作品のニューヨーク公演が11日(金)から13日(日)まで、市内2か所で開催される。
 演劇は、江戸時代から現在にかけて同じ人物が時代を超えて登場する物語「長崎の奇跡」と、世界が震憾した米同時多発テロ事件で活躍した消防士を題材にした「消防士物語」。ミュージカル「ユニフィケーション」は民族や宗教を超えて共生する世界の創造理念のもとIAPGオリジナル曲をストーリーに仕立て歌、踊り、音楽、コーラス、太鼓で繰り広げる舞台。
 公演スケジュールは、11日(金)午後6時30分からザ・サルベーション・アーミー・テンプル(西137丁目とレノックス街)にて「長崎の奇跡」と「ユニフィケーション」。12日(土)午後2時からザ・サルベーション・アーミー・テンプルで「消防士物語」と「ユニフィケーション」、同日午後6時から「長崎の奇跡」。13日(日)午後4時からハーレム・スクール・オブ・アーツ(セントニコラス街645番地、西141丁目)で「消防士物語」と「ユニフィケーション」を上演する。
 全公演入場無料。問い合わせ・予約はEメールinfo@gatw.orgまで。