ジョーカーの階段 人気が止まらない

毎日階段を上り下りするという女性もポーズ(3日昼、ブロンクスで写真・三浦良一)

 R指定の映画としては歴代最高のヒットを記録している「ジョーカー」に出てくるブロンクスの階段を訪れる人が絶えず、住民は困惑しているが(本紙11月2日号既報)、そんなことにはおかまいなく、「階段聖地」を訪れる観光客人気が止まらない。
 ブロンクス区ハイブリッジにあるシェークスピア通りとアンダーソン通りを結ぶ歩行者用の階段は、ホアキン・フェニックス演じる主人公のジョーカーが奇妙な踊りを踊るシーンのロケに使われたことから一躍有名になった。今では通称「ジョーカーの階段」と呼ばれるようになり、普段は人通りはそれほど多くない場所に「インスタ映え」を求めて連日人が集まるようなっている。
 映画の興行成績などを分析するウェブサイト、ボックス・オフィス・モジョによると、映画「ジョーカー」の世界興収収入は10月27日時点で8億2908万ドルに達し、R指定作品としては、2016年公開の「デッドプール」の7億8300万ドルの記録を更新した。9月に公開された同作品は、日本を含む73か国で爆発的な大ヒットを生み出している。日本でも10月4日公開以降、興行収入35億円以上、観客動員数240万人以上と、ともに4週連続の1位を維持している。今年のベネチア国際映画祭では、最高賞に当たる金獅子賞を受賞した。144段ある階段を毎日使うという女性は、階段を降りながらポーズを取り「映画も良かったけれど、地元に光があたったようで私は嬉しいわ」と笑顔を見せた。

和央ようかイン ハロウィーン夜

 ブロードウエーミュージカル歌手によるハロウインコンサートが10月31日夜、マンハッタンのグリーンルーム42で開かれ、元宝塚スターの和央ようか(本名大川貴子)が日本で演じたブロードウエーミュージカル「ドラキュラ」から「ライフ・アフター・ライフ」など3曲を披露した。

NYシティーマラソン 竹ノ内さん(NTT西日本)8位

 ニューヨークシティー・マラソンが3日行われ、男子は17年大会の覇者ジェフリー・カムウォロレが、女子はマラソン初挑戦というジェイシリネ・ジェプコスゲイが優勝した。ハーフマラソンの世界記録を持つケニアの男女ランナーが制する結果となった。
 カムウォロレ選手の記録は2時間8分1秒。2位はアルバート・コリル(ケニア)、3位はギルマ・ベケレ・ゲブレ(エチオピア)が入った。大会連覇に挑んだレリサ・デシサ(ケニア)は世界陸上のドーハ大会出場から29日しか経っていないことがたたり、10キロ通過付近で棄権した。
 デビュー戦を優勝で飾った女子のジェプコスゲイは大会歴代2位の2時間22分38秒だった。同じケニア勢で昨年覇者のメアリー・ケイタニーが2位、エチオピアのルティ・アガが3位だった。
 日本勢では男子の竹ノ内佳樹(NTT西日本)が2時間11分18秒で8位に入った。中盤までペースが上がらないレース展開もあり、ハーフ地点では3位につけた。しかし30キロ過ぎから徐々に後れを取った。自己ベストにも届かなかったが「大きく落ちることはなくまとめられた」とメディアに語り、まずまずの表情だった。

令和元年 秋の叙勲 NYから森脇氏と八木氏

(左)八木氏、(右)森脇氏

 日本国政府は11月3日、令和元年秋の叙勲受章者を発表した。ニューヨーク日本総領事館管内ではゲーリー・俊一・森脇氏(元ニューヨーク日系人会会長)が旭小綬章を、八木秀次氏(現T.I.C. AKEAN(株)代表取締役社長)が旭日双光章を受章した。それぞれの功績は次の通り。

日米親善と日系社会に貢献

▽ゲーリー・俊一・森脇氏 昭和63年(1988年)にニューヨーク日系人会に入会以来、法律家としての専門的知見を活かし、ニューヨーク州に在住する日本人・日系人の社会福祉、教育・文化の向上、日米親善に資する同会の活動に積極的に取り組み、およそ25年の間、同会の理事、副会長、会長として、同会運営の中核を担った。また、日米関係の強化に貢献している米日カウンシルの理事、資金調達や広報を担当する副理事長として運営上の重要事項の決定に携わったほか、日本との独特の繋がりを持つ日系アメリカ人のリーダーの一人として、日米両国の多くの企業や個人と積極的に交流して日米関係促進の重要性を訴え、日米交流促進のために多様な協力関係を構築し、同団体の活動に不可欠な資金調達や人材発掘の面で貢献した。

米国で日本食文化普及に貢献

▽八木秀次(八木秀峰ボン)氏 昭和51年(1976年)に日本食レストランへの野菜の卸売業をスタートした後、常に時代を先取りし、寿司や日本酒、蕎麦、しゃぶしゃぶといった各種専門店形式の日本食レストランを次々に開業することにより(平成30年末時点で16店舗)、NYの新たな日本食市場を牽引し、その拡大に顕著に貢献してきた。また、コーリンの川野作織さんが創設した五絆ソサエティ(NYにおいて日本の食文化を発信する非営利団体)の理事を2006年から務め、日米料理界の架け橋となる諸活動を行うことにより、食文化交流を通じた日米間の理解を醸成し、ビジネスを超えて、米国における日本食・食文化の普及等に顕著に貢献してきた。さらにニューヨーク日系人会理事を務めるなど日系人社会及び地元コミュニティへも大きく貢献した。
八木さんのコメント「叙勲というこのような栄誉ある素晴らしい旭日双光章を受賞することが出来ましたことに私自身心より感激をしております。これもひとえにニューヨーク日系人、イーストビレッジのローカルコミュニティー始め、従業員スタッフ、日本酒業界蔵元様方達、そして家族のサポートであり、皆々様のご指導ご支援の賜物と深く感謝を申し上げる次第でございます 」。

その3  城主様

ジャズピアニスト浅井岳史の2019南仏旅日記

  やはり時差ボケだ。夜中 今日は、バルセロナ方面に3時間ドライブする予定であったが、時差ぼけで10時半まで寝てしまったので、急遽プログラムを入れ替え、Uzesの街を散策することにした。
アパートの朝の景色と風の心地よさはたまらない。今日び、世界中どこにいてもネットで繋がるので、いい気になって仕事をしていたらお腹が減ってきた。昼だ。昨日スーパーで買っておいたパスタを茹で、ズッキーニとトマトとロゼワインでソースを作り、勝手にプロヴァンス風と名付けたパスタを食べた。美味しい。ロゼはここの名産で、夏のこの気候によく合う。
 昼に出かける。昨日時間切れで行けなかった、Jardin Medieval (中世の庭)に出かける。優しいおばさんが出迎えてくれ、親切なフランス語で対応してくれた。入り口には少々素人っぽいが私が読んだ本の表紙と同じ作風の中世の壁画がある。園内にそこに描かれている猫と同じ猫がいた。早速おばさんに聞いてみると、本来の絵は犬であったが、そこで20年生きているトラ猫に敬意を表して、犬を描に代えたそうだ。当の本人は私たちが噂をしているにかかわらず、箱に収まって微動だにせず眠りこけていた。
 高い古い石の塔の脇に小さいが趣のある庭がある。ここは中世の宮廷で育てていた400種ほどのハーブを学術的に研究しそのまま再現してあるそうだ。医学が発達していなかった中世ではハーブは医学的に重要であったはずだ。渡されたブックレットには五ヶ国語で植物の名前が列記してあった。中には即売している植物もある。飛行機でなければ、買って家の庭に植えたいものだ。プロヴァンスの太陽は強烈である。枯れているものもいくつかあり、その手の届かなさに感動した(笑)。
 庭を見た後、中世のタワーに登る。入り口にはカウンターが設置してあって、一度に20人以上は入れないそうだ。途中で崩れるおそれがあるということか。典型的な狭い螺旋階段を登ると頂上からは街が見渡せる。石では高い建物が作れなかった中世に、これは権威の象徴であっただろう。今でも、街のどこからでも白い石の建物の間から荘厳に見え隠れする。頂上から見える景色は絶景であった。そもそも街自体が丘の上に建っているため、赤茶けた瓦の向こうに緑の山がよく見える。これなら、敵が攻めてきても事前にわかる。
 2本目の塔は、1493年に国王シャルル8世のために作られたものだが、いつしか牢獄となり、なんと20世紀まで牢獄として使われていたそうだ。壁には囚人たちが残した落書きが生々しい。ほとんどが、キリストの十字架かイエスで、中には斧を持った人物が描かれている。死刑執行人なのだろうか。痛々しい。塔から降りてくるとカウンターがマイナス1人になっている。どういう事?(笑)
 二つの塔を制覇してまた小さな庭に降りてくると、優しいおばさんが、ここで採れたレモングラス入りの美味しいティーを出してくれた。この手作り感、800年も建っているこの塔、ユーモアがあって優しいおばさん、眠りこける猫、ここにいると心が洗われた。どう言うわけか急にいい人になってしまって(笑)、昨夜ウブリエに落としたサングラスを拾ってくれたトニーにお礼がしたくなり、近くの酒屋で、よく冷えたここの名物ロゼを一本買って、隣の宮殿に持って行く事にした。その前に酒屋の隣のベーカリーでフレンチ・ドーナツとアプリコット・パイで腹ごしらえだ。
 城に行ったら、今日は様子が違っていた。人が殆どいない代わりに正門に黒塗りの車が止まって、中から品の良い夫婦が降りてきていた。とりあえずトニーを探していたら、その品の良い男性が、優しい英語で話しかけてくれた。昨日、サングラスを拾ってくれたトニーにお礼をしたいと言うと、彼が言付けてくれるとワインを受け取ってくれた。名刺を渡してお礼を言って立ち去ろうとした時に合点がいった。この夫婦、この城の今の城主様なのだ。1565年に、フランス国王シャルル8世から爵位を賜ったこのUzesの領主は、貴族として列せられ、それ以来同じ家族がここに住んでいるのだ。
 そういえば、昨日ルイ15世王妃など蒼々たる先祖のポートレイトに混じって今の家族の写真が飾ってあった。そうだ、その奥さんと旦那さんだ。二人とも写真よりはちょっと歳をお召しになり、ちょっと恰幅が良くなっているが、あの品の高さは並大抵ではない。Tシャツ短パンの汗だくな旅行者の私たちにも自ら言葉をかけてくれる。私たち夫婦もあの貴族のお二人のような気品を出そうと話しあった(笑)。
 感動を胸にアパートに戻る。ここに来てまだ二日目なのに何故か洗濯がしたい。家主が非常に複雑なフランスの洗濯機の使い方を教えてくれた。洗うだけで1時間40分。フランスは洗濯機が非常にややこしい。何故?
 自炊をして洗濯物を外に干して、夜の街に出て、美味しいドリンクを飲む。夜のライトアップした城が美しい。今頃、城の中であのご夫婦は何をされているのだろう(笑)。
 明日はダヴィンチ・コードの謎を求めてレンヌ・ル・シャトーに遠出。楽しみだ。(続く)
(浅井岳史、ピアニスト&作曲家)
www.takeshiasai.com

フォートリーで学ぶ、 楽しむ、無料イベント

 日本人も多く住むバーゲン郡フォートリーは、マンハッタンからジョージ・ワシントン橋を渡ったニュージャージー州の玄関口として暮らすのに便利という面がクローズアップされているが、米国建国の歴史上重要な場所であることは日本人にあまり知られていない。また、再開発により人口が増加して景気も良いフォートリーでは、ファミリーが楽しめるような大規模な無料イベントを毎年開催している。ここ数週間の間に予定されている、地元住民だけでなく他地区からの参加も歓迎の無料イベントを2つ紹介しよう。

【米国独立戦争の歴史を知る、再現パレード】

 米国独立戦争が激しさを増す1776年11月、後の米国初代大統領、ジョージ・ワシントン将軍率いる軍が英国の大軍と激戦を交わしたフォートリー。ここから一旦撤退して、ハッケンサックまで行進し、そこで英気を養って猛反撃に転じ、それが独立戦争の勝利に繋がったとされる重要な古戦場だ。
 フォートリー歴史協会は毎年この時期の週末に、ワシントン軍の陣地があったハドソンテラスのフォートリー・ヒストリカルパークからメインストリートを通り、メモリアルパークまで、ワシントン軍に扮した協会員らが当時の軍隊を再現した行進を行っている。メモリアルパークでは、迫力ある空砲の一斉発射など、見所もたくさん。身近な場所で家族で米国独立戦争の歴史を体験できるイベントだ。
 今年は、11月23日土曜日の正午ごろに開始。できれば、少し早めにヒストリカルパークに到着して出発から行進を追うと、タイムスリップした気分が味わえるのでお勧めだ。

【第12回ホリデー・ツリ 点灯イベント】


 ニューヨークでは冬の風物詩として、ロックフェラーセンターのツリー点灯式が有名だが、フォートリーでもロックフェラー点灯式翌日の木曜日に、フォートリー・コミュニティセンター広場でツリーの点灯イベントを開催している。今年で12年目を迎える同イベントは、「本当に無料!?」と驚くほど内容が年々豪勢になっており、地元住民だけでなく他地区からも大勢の人が参加する数千人規模のイベントになった。移動遊園地風の乗り物や、プレッツェルやポップコーン、飲み物などのほか、イベントを盛り上げるパーティグッズやアクセサリーなども無料で配布される。ツリー点灯カウントダウンのショーもどんどん派手になっており、今年はどんな風になるのか楽しみだ。消防車に乗ってサンタが登場した後は、小さい子たちとの記念撮影会もある。
 今年は、12月5日午後7時からスタート。乗り物やプレショーは6時台から楽しめる。

ゴーゴーカレー 成功の秘訣

NY MBAの会

NYMBAの会は10月24日、第57回月次定例会を開催し、「従業員は家族!ゴーゴーカレー米国事業立上からのフランチャイズ化戦略」と題して現在ゴーゴーカレー米国代表を務める大森智子さんが講演した。22人が熱心に聴講した。
 もともとは舞台女優を目指して渡米された大森さん。オフブロードウエーを中心に活躍した女優時代の後、テレビ局ディレクター、日系媒体の営業を経て、現職に。
 2012年に、ゴーゴーカレーの創業者と出会い、全米進出を任された。5年で5店舗を開けるという目標を与えられ、大森さんが大事にしてきた言葉は「可能か不可能かはただの意見であって、自分ができると思ったらできる、というかやる」。結果2年半で5店舗を開店させ、現在フランチャイズ含め全米8店舗を展開している。 レストランを成功させる秘訣は「事業の浮き沈みのドラマを楽しめるかどうか、次に繋げられるかどうか」と話した。(写真・植山慎太郎)

メキシコの民族音楽で踊る

ダンサー

谷口綾香さん

 谷口さんは、メキシコのフォークダンスカンパニーに所属するダンサーだ。髪の毛を三つ編みのお下げにして、大きな花を帽子の上につけたら、どこから見てもメキシカンの可愛らしい女の子に見える。「私もこのカンパニーに入っていて、皆からメキシコ人って聞かれるんです。それって自然に見えてラッキーかなと自分でも、メキシコ娘に見えるなって思いますから」と愛くるしい笑顔を見せる。
日本で師事していたダンスの指導者が縁となって、2013年から16年まで、アルビンエイリースクールでスカラシップ取得。 アルビンエイリーカンパニーの公演に参加したりガラパフォーマンスに特待生として踊るなど貴重な経験をした。
 16年から17年には、Judah International Dance Theater 所属で、協会と共に経営していたカンパニーだったので協会でのパフォーマンスを主体に舞台に立った。
 同じ時期にI KADA Contemporary Dance Company 所属。このカンパニーでコンテンポラリーダンスを多いに学び、とても良い経験を積んだと思っている。
17年から18年には、New York Theater Ballet に所属。「ここではチェケッティテクニックをたくさん学びました。 チェケッティはバレエのテクニック一つです。 これが難しく同じバレエなのに何故かうまく踊ることができず苦戦しました。ですがバレエテクニックを見直す良い時期でした。ディレクターのクラスを受ける度にノートにメモを取ったり・・・ただただがむしゃらでした。痩せるために少し無理をしてでもダイエットしたりジムに通ったり ・・・今思えばこの年は自分を見つめる良い機会だったかもしれません。自分の進む道が定まらないなかで、そこでウェブサイトでオーディションを見つけた。その時、谷口さんは、 「よし。このオーディションで絶対何かをかえよう”」と思った。 そのカンパニーがBallet Napantla だった。メキシコのフォークダンスのカンパニー、このカンパニーはヒュージョンカンパニーでバレエ、コンテンポラリー, モダン、アフリカンダンス など色々なスタイルのダンスを取り入れているカンパニーだ。 今までカルフォルニア、テキサス、ミシガン、カンザス、ニュージャージー、もちろんニューヨークでもパフォーマンスがあった。 来年2月からはフロリダ。カルフォルニアへツアーを予定している。 (三浦良一記者、写真も)

ぼくめいた 8

短期集中新連載えほん

作・絵 三浦良一

新聞の自動販売機くんが
おなかから明日の朝刊を取り出して言った。
「ねえ みんな これ読んでみてよ きみたちのことが出ているよ 
なになに ふむふむ・・・・??」みんなに聞こえるように読んでくれた
「このまえの女の子、自由研究でなんでも立派な賞を取ったらしい。きみたちの おなかの時計は、どれも少しづつ狂ってることが分かったって。それを町の偉い人が読んで、新しい機械に取り替えることになったって書いてあるぞ」
「そりゃ、大変だ」パーキングメーターたちは、みんな 一斉に叫んでしまった。
「Oh my God!」

(次号につづく)


   Newspaper vending machine took one newspaper tomorrow morning issue from his body and said.
“Look, there is a story about you. well, I will read it for you. “
“The girl is going to receive some award for her independent project. The report says that the parking meter’s clock is not accurate at all, and the Mayor of the town read the report and decided that he woud replace all the old meters to be a new ones.
Oh my God! That’s terrible! All parking meters shouted.

(to be continued)

黄緑のネームプレート

赤川次郎・著
光文社文庫・刊

 中学生くらいで教科書以外の本を読もうと思ったとき、読書好きの友人から「最初は赤川次郎から始めるのがいいらしいよ」と言われて読み始めたミステリー。難しい言葉や表現を避けた優しい文章と登場人物たちの軽妙なやりとりが読みやすく、面白くて次々読んでいったことを覚えている。その 「ライトノベルの達人」 赤川次郎を皮切りに、トラベル・旅情ミステリーの西村京太郎や内田康夫、山岳ミステリーや密室事件ものを経て、場面描写が巧みな真保裕一や理系ミステリーの森博嗣にはまり、さらに気軽に読める東野圭吾、イヤミスの湊かなえ、宮部みゆき、桐野夏生などの小説を楽しんで来た。特に最近人気がある「イヤミス作品」。ハッピーエンドとは無縁で残酷な展開も多く、読後感がすっきりせず後味が悪いと分かっていてもついつい読んでしまうことから「イヤな気分になるミステリー」の意味だが、赤川次郎作品はそんなイヤミスとは無縁の 「健全な」 物語を長い間つくりだしてきた。
 赤川氏は1948年生まれの現在71歳。76年に『幽霊列車』でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。以来、三毛猫ホームズシリーズや三姉妹探偵団など約20ものシリーズのほか、映画化された「セーラー服と機関銃」や「探偵物語」などの多彩な作品を書き分け、毎年10冊以上を刊行してきた。そしてついに2017年、著作600冊を突破する金字塔を達成。軽妙なユーモアのあるミステリーで老若男女問わず愛される物語を送りだす、国民的ベストセラー作家として活躍し続けている。
 ところで、本書『黄緑のネームプレート: 杉原爽香〈46歳の秋〉』は88年から続く人気シリーズで、今回で23作目。第1作目『若草色のポシェット』で杉原爽香は73年5月9日生まれの15歳(中学3年生)という設定でデビュー。親しかった級友が殺されてしまう事件に遭遇し、第一発見者だったことから容疑もかけられるが、持ち前の行動力と観察力で解決に導いた。それから毎年秋に刊行される同シリーズで1歳ずつ年を重ねながら、そのつど何らかの形で事件に巻き込まれている。登場人物が読者とともに年齢を重ねる世界的にも例の少ない「長期的な連続小説」をコンセプトに30年以上に及ぶ同シリーズは、一作一作が独立した作品ではあるが、もはや連続小説というより超長期連載の様相となっている。
 88年に15歳だった爽香はさまざまな事件を解決しながら大学卒業後、13作目(2000年)の27歳で同級生の明男と結婚、就職した会社でプロジェクトリーダーとして成功し、22作目(08年)に長女・珠美を出産。今作では10歳になる娘の珠美ちゃんの大人びた言動もファンにとっては微笑ましいはずだ。
 今回は殺人も起こらず、わくわくしながらページをめくっていた中学生のころに戻ったように赤川次郎を楽しめる。普段あまり読書をしない人も気軽に読める本書。ミステリーを読み始めたそれぞれの「あの頃」に戻って楽しんでみてはいかがだろうか。 (高田由起子)

ドキュメンタリー映画祭

力作話題作目白押し
日本関連「甲子園」「相撲人」

 今年で第10回目を迎える記録映画の祭典「NYC DOC」が6日、始まった。マンハッタン3会場15日(金)まで長編短編約300本を世界中から集めて紹介する。世界最大級規模のドキュメンタリー映画祭で、ほとんどの作品で監督や製作者が登壇するのも本祭の大きな魅力だ。
 日本関連では12日(火)に2本、マット・カイ監督の「リトル・ミス・スモウ(相撲人)」(19分)が午後2時50分から、山崎エマ監督の「甲子園:日本のフィールド・オブ・ドリームズ」(94分)は午後9時30分から、シネポリスチェルシー(西23丁目260番地)で上映される。 「相撲人」は、女人禁制の相撲界で奮闘する女性相撲家の今日和(こん・ひより)さんを追う。また「甲子園」は、母は日本人で父はイギリス人というニューヨーク在住の山崎が神奈川県の横浜隼人高校 に一年間密着取材、日本人の国民性に迫る。
 山崎監督は「夏の甲子園100回大会を記念した特別ドキュメンタリー『KOSHIEN: Japan’s Field of Dreams』。大谷翔平選手の母校などを長期取材したこの映画。高校野球を社会の縮図として見つめ、今までの日本、そしてこれからの日本を考える作品です」と本紙にコメント。
 そのほか、ロシアの爆撃機が飛び交うなか地下に病院を作り多くの命を救った女性医院長らの活動を追う「ザ・ケイブ」、2015年に終了した中国の一人っ子政策を検証する「ワン・チャイルド・ネーション」など、力作・話題作が目白押し。
 シネポリスチェルシーほか2会場は、SVA(西23丁目333番地)とIFCセンター(6番街323番地)。詳細は同会場窓口、またはウェブサイトdocnyc.netを参照。

次世代の未来を守る Terminator: Dark Fate

PHOTO : Kerry Brown/SKYDANCE PRODUCTIONS AND PARAMOUNT PICTURES

「ターミネーター」シリーズとしては6作目。初期2作を監督・製作したジェームス・キャメロンが28年ぶりに製作指揮をとる。物語のシンボル的存在のヒロイン、サラ・コナーズもカムバックしサラに扮するリンダ・ハミルトンは貫禄の演技でシリーズに活を入れる。
 共演はオリジナル・ターミネーター、T800のアーノルド・シュワルツェネッガー、「Always Shine」(ブラック・ビューティ、2016年)のマッケンジー・デイヴィスら。未来から送られた新ターミネーターに命を奪われるダニーにハリウッドでは新人のコロンビア出身ナタリア・レジェスが抜擢されている。監督は「デッドプール」(16年)のティム・ミラー。
 物語はシリーズ2作目「Terminator 2: Judgment Day」(91年)の続編という位置づけ。2020年、未来から新型ターミネーターREV-9とサイバネティクス技術を駆使した強化人間グレース(デイヴィス)がメキシコに降り立つ。前者はダニー・ラモスを抹殺する使命を受けた殺し屋。後者はダニーの命を守る戦士だ。地球の未来で繰り広げられているAI組織と抵抗軍(人間)との戦いでダニーが重要なカギを握っているためだ。もちろん今のダニーはそれを知る由もない。
 ダニーを殺そうとしたREV-9の前に間一髪でグレースが立ちはだかるも、二人は追い詰められ逃げ場を失う。その時、突如として現れたのがサラ・コナーズだった。サラは息子のジョンをT-800に殺された後も人類の未来を守り、いずれ息子の仇を打とうと活動を続けていた。
 自分がスカイネットに狙われたと同様に、新たなAI組織がダニーを殺そうとしていると推測する。しかしREV-9は身体の形状を自由自在に変えられる液体金属で出来ているうえに、身体全体が武器にもなる。とても逃げおおせる相手ではない。
 桁外れのアクションを演出する映像テクノロジーとハミルトンのカムバックによる物語へのノスタルジーが相乗効果を出す。2時間8分。R。 (明)

https://www.paramount.com/movies/terminator-dark-fate


■上映館■
Regal E-Walk Stadium 13 & RPX
247 W. 42nd St.
 
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
 
AMC Loews 34th Street 14
312 W. 34th St.