ぼくめいた 13

短期集中新連載えほん

作・絵 三浦良一

 女の子は、ちょうど、パーキングメーターの正確さを調査した先日の学校の自由研究が、市から正式に表彰されることになり、市役所に招かれていました。市長室に通された女の子は、最初はもじもじしていましたが、勇気を出して言いました。
 「市長さん、私の自由研究を表彰してくださってありがとうございます。とっても嬉しかったです。でも、できれば、古いパーキングメーターの機械は、直して使ってくださいませんか。直して使えるものは大事にしてください。あたしの時計は、おばあちゃんが使っていたものです。修理をしたら、この通り立派に使えるようになりました」
 それを聞いた市長は、最初はちょっとびっくりして黙っていましたが、すぐに笑顔を取り戻して「直せば使える!か。そうだね。それはいい考えだ。これから議会が始まるんだが君、そのことを議員のみなさんにこれから話してみてはくれないかな。議会で通れば力になれるよ」   

(次号につづく)


The girl was just about to receive an award from the city
for her independent study assignment for school the other day
where she checked the accuracy of the parking meters,
so she had been invited to the award ceremony at the city hall.
The girl, who was taken to the mayor’s office,
felt nervous at first, but she built up the courage to say,
“Thank you for awarding me for my independent study assignment, Mr. Mayor.
I am very happy. But, would you please fix and use the old parking meters
if you can? And please use them gently after fixing them. My watch here
belonged to my grandmother. After fixing it,
I’ve been able to use it just fine, like so.”
When the mayor heard what she had to say, he was a little surprised
and at a loss for words at first, but suddenly his smile returned to his face
and he said, “If you fix it you can use it, you say? That’s right. That’s a great idea.
The city council meeting is about to start, so would you try to tell the council members
what you just told me? If it goes well, I can help you.”

(to be continued)

美味しさまるごと カーボン・ポット

カーボン・ポットでの料理を説明するコルトンさん(左)と穴織カーボン株式会社の西村太一課長

NYのWAZAで実演説明会

 1962年にモーター用カーボンブラシ製造会社として創業した穴織カーボン株式会社(本社大阪府茨木市)が、20年以上前から調理器具を生産している。大手家電メーカーと共同開発した炭釜は、高級炊飯器の草分としてヒット商品となった。カーボンポットは、純度99・9%のカーボングラファイト(炭)を削り出したもので、高い熱伝導性と遠赤外線効果に加えて密閉性肉圧構造により料理を美味しく調理することができる。炊飯、煮炊きもの、無水調理、焼き物、オーブンなど様々な料理が本格的な味に仕上がり、そのままテーブルに出しても美しいデザインだ。
 7日午後、ノリータ地区にある和技WAZAショップ(スプリング通り33番地)で料理研究家のヒデコ・コルトンさんが、このポットを使ったトリュフ風味の鶏釜飯を実演調理した。鶏肉が柔らかくジューシーな味わいに「味のエッセンスが凝縮されていて美味しい」と会場から驚きの声があがった。実演に使ったポットは販売価格1200ドル。小型から大きなボリュームのある鍋数種類が同店で販売されている。

子どもの権利を守る本

国際子ども権利センター・著
合同出版・刊

「子どもの権利条約」が国連で採択されて30年、日本が批准して25年。東京に本部を置く「シーライツ:国際子ども権利センター」代表の甲斐田万智子さんを中心に国内外の31人が筆を執ったのが本書『世界中の子どもの権利をまもる30の方法:だれひとり置き去りにしない!』。
「子どもの権利」と聞くと、人身売買、児童労働、子ども兵士…発展途上国の子どもたちが直面する問題だと考える人も多いだろう。しかし、甲斐田さんたちは、日本の子どもたちにとっても決して他人事ではない。日本の多くの子どもたちが自分たちの権利を知らされていない、また学校の先生や子どもに関わる人々でも限られた実践をおこなっていると感じ、「子どもの権利条約」節目の年にあたる今年、本書をまとめた。 
 例えば児童虐待。この28年間は増加の一途で昨年度は16万件を超えたという記事を見た。本書によると「子どもの権利」第19条では「子どもは暴力から守られる権利がある」、第25条では施設で暮らす子どもの状況を定期的にしらべることを定めている。本書ではこうした法律の説明をした後で、「子どもは家庭で健康に育つ権利を持っている」と促し、つらい思いをしている時は相談しよう、と導く。
 例えばフリースクール。義務教育の「義務」は子どもが学校に行く義務ではなく、大人が子どもに普通教育の機会を保障する義務として、子どもには何らかの理由によって学校に行きたくない、行けないときは行かない権利があると説明が続く。
 甲斐田さんは、日本では子どもに「子どもの権利」を教えるとわがままになるという誤解があると綴る。確かに私など、部活の先生にはなぐられ、親に口ごたえしたら寒い玄関の外に立たされ「バカ」と言ったらほっぺたをつねられた。しかし時代は変わった。日本では今年6月、児童虐待防止表と児童福祉法が改正され、親による体罰が禁止されることになった。
 本書の冒頭で、カンボジアの小さな村での会話が紹介されている。子どもたちに「一番大切なものは何か?」と尋ねたら「権利。差別されないから」と答えたという逸話。その村こそ、20年ほど前に私がカンボジア南東端のスバイリエン州で教育事業に携わっていた際に、子どもたちがベトナムに物乞いに行き登校しないと嘆く校長先生に会った村だ。国境を越え困難に遭う子どもたちの状況に心を痛め、当時カンボジア在住だった甲斐田さんに状況を話した。村の貧しさを思うと子どもの越境物乞いを辞めさせられないと思ったが、甲斐田さんたちが事業を開始し、子供を主人公にして子どもとともに問題解決してきたからこその変化だ。甲斐田さんは普段はとても穏やかな人だが「子どもの権利を守る」という点に関しては屈強な意志と行動力の持ち主。本書は、子どもたちにぜひ読んでもらいたいとともに、子どもは黙っていなさいなどと育った私自身ももっと、未来を担う子どもたちのことを理解するために学ばなければならないと感じた。(小味かおる)

告発の鍵を握る援軍 Bombshell

同じエレベーターに乗り合わせたメーガン(セロン)、グレッチェン(キッドマン)、ケイラ(ロビー)、写真左から

 2016年、フォックス・ニュースを巻き込んだセクハラ・スキャンダルの実話ストーリー。職場や業界での地位で優位に立つ男性がセクハラで女性を食い物にする現実を実際に起こった事実に基づいて描き出すパワフルな展開だ。華やかなテレビの世界を背景に深刻な社会問題を提起するエンターテインメント要素も取り入れた作りだ。
 告発されたのは1996年に開設されたフォックス・ニュースの創設者でありCEOのロジャー・アイレス。メディア・コングロマリッド、ニューズ・コーポレーション率いるルーパート・マードックの号令の下、リベラルのケーブルニュースCNNに対抗するアメリカ保守層向けニュースという位置づけだ。
 アイレスに扮するのは映画、舞台、テレビと幅広く活躍するジョン・リスゴー。身体も顔も一目見ただけではわからないほどの特殊メイクで役に挑戦。メイク担当は「Darkest Hour」(2017年)でゲイリー・オールドマンをウィンストン・チャーチルに仕立て上げアカデミー賞主演男優賞に導き、自らもメイクアップ&ヘアスタイリング賞でオスカーを手にした辻一弘。
 アイレス告発の先陣を切るグレッチェン・カールソンにニコール・キッドマン。人気キャスター、メーガン・ケリーにはシャーリーズ・セロン。この二人の実在人物に加え、実在の数人の体験、情報を一緒にしたフィクション・キャラクター、ケイラにマーゴ・ロビンスというトップレベルの女優三人が顔をそろえる。監督は「オースティン・パワーズ」シリーズのジェイ・ローチ。
 権力を利用したセクハラや性的暴行では大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインや俳優ビル・コスビーなども有名どころでしかも氷山の一角。告発者がかかえる不安と圧力、自分の夢をかなえるために権力に屈したことへの当事者の屈辱、加えて、働くために保守系を装い同僚らにブレンドインする隠れリベラルやゲイなど社会を包み込む人間模様も作品の魅力だ。1時間58分。R。 (明)

https://bombshell.movie/videos/bombshell-movie-official-trailer


■上映館■
Regal Union Square Stadium 14
850 Broadway
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway

編集後記12月7日号

■【編集後記】
みなさん、こんにちは。 12人の日本人アーティスト作品を紹介する「エマージング・トウキョウ(Emerging Tokyo)」展が3日から7日(土)まで、イーストハーレムの会場ホワイトボックス(東121丁目213番地)で開催されました。(主催:ギャラリー・タグボート)。タグボートはアジア最大のオンラインギャラリーです。ヘタウマな画風で知られるイラストレーターのしりあがり寿は、すみだ北斎美術館でライブで描いた「赤富士」(2018年)を、山口真人はドローンを飛ばしたり掃除機ルンバに絵の具を装着して制作した作品、また、足立篤史は古い新聞紙を使って「千と千尋の神隠し」を連想させるインスタレーションを展示しました。また三隅幸(あたり)は、粒子の運動が観測行為によって変化する現象を水中に浮かぶ時計で、太田三砂貴は、四季を色調レイヤーの亀裂や発色で表現します。そのほかの出展作家は、坪山斉、神田さおり、Kamihasami、伊藤咲穂、ひらのまり、伊東ケイスケ、丹治基治。 タグボートを主宰する徳光健治代表取締役は「ニューヨークはアーテイストをリスペクトする空気に溢れていてそれが地域社会の豊かさにつながっている」と話していました。それでは、みなさんよい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】
(2019年12月7日号)

(1)ブルームバーグ氏出馬  1面
(2)アポロ劇場沸く  1面
(3)日本の介護事情  3面
(4)高免信喜に作曲賞  4面
(5)JS新旧理事長披露  6面
(6)TWAスケートリンク  8面
(7)ダンサー下田めぐみ  15面
(8)エマージング東京  22面
(9)封切り映画 KNIVES OUT 22面
(10)日本画の大竹寛子  23面

大統領選出馬表明ブルームバーグ前NY市長

打倒トランプで米国の再建宣言

 米大統領選に出馬するとの噂(=本紙11月16日号既報=)があった前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏(77)が11月24日、正式に出馬表明した。声明で「トランプ氏を倒し、米国を再建する」と述べ、民主党から出馬するが、同党の候補者争いの混戦に拍車がかかるのは必須だ。
 ブルームバーグ氏は声明で「トランプ大統領の無謀で非倫理的な行動に4年以上耐える余裕はない。彼は私たちの国と私たちの価値に対する実存的な脅威だ。彼がまた大統領となった場合、損害から回復することは決してできないだろう。私たちはこの選挙に勝たなければならない。そして、アメリカの再建を始めなければならない」と述べている。
 民主党は17人が立候補する混戦状態。本命とされていた中道のバイデン前副大統領(77)が支持に伸び悩み、民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員に加えエリザベス・ウォーレン上院議員(70)など左派が躍進している。
 トランプ氏に勝つには中道の有権者の取り込みが必要とされているが、バイデン前副大統領は思うように支持率が伸びていない。
 大統領選としては異例の遅い出馬表明だが、ブルームバーグ氏はトランプ氏と渡り合えるリーダーが出てこないことから決断したと見られる。声明では「ビジネス、政府、慈善活動における私のユニークな経験が、私が勝ち、リードすることを可能にすると信じている」と自信を示している。
 同時に発表されたビデオでは、中流階級の家に育ち、実業家として成功した後、ニューヨーク市長になり、米同時多発テロで衰退したNY市を再建した経過を辿り、最後に「富裕層が税金をより多く支払い、苦しんでいる中流階級が公平な分配を得る国にする」というテロップが入る。

資産トランプの17倍

 同氏はロシア出身のユダヤ人夫婦の間に生まれ、ジョンズホプキンズ大学電子工学科、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業。証券会社のソロモン・ブラザーズに入り、39歳の時に整理解雇された後、投資情報を有料で提供する会社を設立し、現在のブルームバーグ社に成長させた。
 民主党員だったが共和党に党籍を変えてニューヨーク市長に当選し2002〜13年の3期務めた。フォーブス誌の2019年米国長者番付では第9位。現時点での保有資産は541億ドルで、トランプの保有資産31億ドルのおよそ17倍。気候変動対策や銃規制などの問題に寄付した資金は約80億ドルで慈善活動家としても知られる。

アポロ劇場沸く、日本人歌手優勝、吉本興業派遣2組にも喝采

 ハーレムのアポロシアターで11月27日、アマチュアナイト2019年決勝ラウンド(スーパートップドッグ)が開催され、日本在住のシンガー高橋あず美が98点を獲得し、アポロアマチュアナイト85年の歴史上、日本人「シンガー」としては初の年間優勝を果たして賞金2万ドルを獲得した。
 またアジア人初の「決勝ゲスト」として日本から2組が登場、目利きで有名なアポロの観客を沸かせた。
 今年、吉本興業が世界初の公式ライセンス契約を結び、日本で開催したアポロアマチュアナイトジャパン2019で優勝した14歳から22歳の4人組ダンスユニット544-6th Ave.(愛知)とNYプロデューサー特別賞のシンガーWAKASA(東京)がニューヨークに招待され、日本代表としてステージで堂々のパフォーマンスを魅せた。
 当日は大物R&Bシンガー、ジョー・グレイの引退セレモニーもあり、アポロシアターCEOも来場し登壇。フィナーレで出場者全員がステージに上がり、会場に「JAPAN」が連呼された模様は、インターネットストリーミングを通じて世界に発信された。

写真:年間優勝の小切手を手にする高橋(右端)。日本からゲスト出演した2組(左端)

日本の介護事情 帰国支援セミナー盛況

シニアライフを日本で
お金、健康、人間関係、どれも、みんな大切

 日本で介護事業を展開するケアブリッジ株式会社を中心に、業務提携する各部門の専門会社らで構成され、シニア世代の日本帰国支援サービスを行っている「かざぐるま・ふるさとプロジェクト」は、11月22日、市内のグローバルラボで、ニューヨークでは通算5回目となる「日本の介護事情・帰国支援セミナー」を開催、今回も初参加の人を中心に約30人の参加者が集まった。
 当日は、同プロジェクト代表の青木幸司さんと医療コンシェルジュの加藤千晴さんが講師を務め、青木さんは介護施設経営者の立場から、加藤さんは介護・看護に実際携わる看護師の立場から、日本に帰国してシニアライフを送るメリットについて解説した。
 日本人の平均寿命と平均健康寿命の差が年々開いていることを説明、介護を受ける年数が増えていることを示した。それにより、例えば10年間米国で介護を受ける場合の費用と、日本で介護を受ける場合の費用の差を説明するとどよめきが起こった。また、今回のセミナーでは、昨年セミナーに参加したのち個別相談を経て同プロジェクトの支援サービスで今年実際に帰国してシニアライフを日本で始めたクライアントの実例を挙げ、現在の生活環境や入居施設の費用なども具体的に説明した。
 後半では、「お金」「健康」「人間関係」「生活」各ジャンル合計20問の質問に「はい」がいくつ付くかによる参加者それぞれの「日本帰国緊急度診断」を行い、「もし帰国して送る幸せなシニアライフを選択肢に入れているなら、手遅れにならないうちに準備して早く行動することが大事だ」と説いた。
 セミナー終了後と翌日には、参加者のより具体的な悩みに対応するため個別相談会も行われた。同プロジェクトは今回、ニュージャージー日本人会主催のセミナーでも講演した。今後はニューヨークにも拠点機能を置き持続的なサポート活動を行うことを宣言、次回は来年3月にまたセミナーを開催することも発表された。

作曲賞全米1位 ギタリスト高免信喜

 ジャズギタリストの高免信喜(たかめん・のぶき)氏は、全米の作曲コンペティション「USAソングライティング・コンペティション2019」のインストルメンタル部門においてオリジナル曲「Helsingin taivas(ヘルシンキの空)」で第1位を獲得した。
「ヘルシンキの空」は高免氏が2017年にフィンランドに演奏に行った時に思いついたメロディーをもとに、ニューヨークで完成させた曲。18年にリリースした8枚目の最新アルバム「The Nobuki Takamen Trio」に収録されている。高免氏は、「ソングライティングのコンペティションに応募したのは今回が初めてで、受賞の知らせが届いた時にはかなり驚きました。これを励みにこれからもオリジナル曲100曲を目指して、作曲に取り組んでいこうと思っています」と喜びのコメントを寄せている。

ジャパン・ソサエティー 新旧理事長交代を披露

 ジャパン・ソサエティー(JS)は3日夕、櫻井本篤理事長の退任とジョシュア・W・ウォーカー博士の新理事長就任を披露するレセプションを開いた。ウォーカー氏は、2009年からJS理事長を務めた櫻井さんに代わり2日付で第20代理事長に就任した。
 ウォーカー博士は地政学的リスク分析専門コンサルティング会社ユーラシア・グループの前グローバル戦略事業部長兼日本部長。2歳から18歳までを主に日本の札幌で過ごし、日米両国の文化・慣習に精通、プリンストン大学で政治学と公共政策における国際関係と安全保障を研究テーマに博士号を取得した。ユーラシア・グループ以前は、米国国務省や国防省を含む米国政府機関に勤務、米国大手戦略コミュニケーション会社APCOワールドワイドの世界戦略プログラム担当バイスプレジデントとして17年アスタナ国際博覧会(カザフスタン共和国)で米国パビリオン館長を務めた。国際関係、官民パートナーシップなどを専門にグローバルなビジネス外交分野での経験は20年以上にわたる。イェール大学国際問題ジャーナル創刊編集長で、トライリンガル(英語、日本語、トルコ語)。3期10年、理事長を務めた櫻井理事長が次世代に託した札幌育ちの38歳。見事な世代交代となった。

写真:ウォーカー新理事長(左)と櫻井前理事長 (写真・本紙 三浦良一)