アルコールインク・アート展を開催

ブルックリンで28日まで

 アルコールインクアートのグループ展が28日(金)まで、ブルックリンにあるバー「MIKA Bushwick」(25 Thames St)で開催されている。ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、小林園実さんが昨年から行っているアルコールインク・ワークショップの参加者から募集した人たちの作品を多数展示。日本人参加者は、井上久子、遠藤良子、北川なつ子、松村牧亜、高氏奈津樹ほか8人。同じ画材でありつつも、それぞれの個性豊かな作品を見ることが出来る。(=写真)

アルコールインク・ワークショップの様子

 作品展の最終日となる28日(金)午後5時から8時までは、クロージング・レセプションが行われる。会場のMIKAではローカルクラフトビール、酒、ワインが充実し、日本食フュージョンを楽しめる。入場無料(ドリンク・食事は各自で購入)。会場の詳細はウェブサイトhttps://mikabushwick.com/を参照する。

新年賀詞名刺交換会NYで

年頭の所感、米国から

 ニューヨーク日本総領事館主催、ニューヨーク日本商工会議所、ニューヨーク日系人会、日本クラブの日系3団体共催によるバーチャル令和四年新年名刺交換会が13日正午から1時まで対面とZOOMで開催された。各団体代表による年頭の挨拶と鏡開き、ジェトロと日本政府観光局のNY代表のゲストスピーチ、バーチャルでの名刺交換が行われた。オンラインで101人が参加した。


主催者挨拶 山野内勘二大使

「共に明るい未来を」

 2022年、まず思うことは、「コロナとの戦いも3年目。この戦いは容易ならざるものとなるが、我々は打ち勝つのである。コロナは止めても、経済と社会は止めない」という意気込みで2022年を臨みたいと思う。ホークル知事、アダムス市長も「感染対策には万全を期すが、経済はしっかり回していく」と同趣旨を述べた。お二方の決意・リーダーシップを参考にしていきたい。2022年は、3つのことが150周年という重要な節目となる。一つは、岩倉具視使節団の派遣。日本の日米交流を振り返る良い機会だ。二つ目は、ニューヨーク総領事館の開設。気持ちを改めて、今後も仕事に臨みたいと思っている。三つ目は、野球の伝来。世界の中でも特に野球を愛するアメリカと日本。アメリカのベースボールが日本に伝来してから150年経ったことは、日米の友情を考える上で非常に重要な出来事だ。そして、国際情勢を見れば北朝鮮のミサイル、ウクライナ情勢、中国をめぐる様々な課題、激動の年だ。ビジネスの現場でも、競争が厳しい中では、大変な状況だからこそ新しいチャンスが生まれる。150歳になった総領事館、我々のミッションは「日本コミュニティを支え、守り、手伝いをする」に尽きる。我々は、皆様と共にあって、一緒に明るい未来を築く一助になればと思っている。最後に私事だが1日4日付で帰朝命令が出た。3年3か月にわたって、総領事大使として努められたのも皆様の支えがあったからこそ。この場を借りて、御礼を申し上げます。後任の支援もよろしくお願いします。(写真上)


NY日本商工会議所 高岡英則会頭

「米国社会と共に発展を」

 オミクロンの爆発的感染、ウクライナ情勢、インフレ、サプライチェーン問題と、騒々しい年明けになった。日本の入国制限もなかなか緩和されず、悲願の訪来もなかなか叶わない不自由な生活が続いている。しかしながら、私は楽観視している。コロナとの戦いも3年目を迎える。事前事後の対策で、我々もずいぶん学んできた。オミクロンの正体が徐々に明らかになってきた。マスクやディスタンス、そして何よりもワクチン、ブースター、テストにアイソレーション。知恵を総動員して、コロナとの共生社会に向かおうと思っている。

 経済の方も、インフレを背景に各国の金融政策が変更に向かい、サプライチェーンの問題もあって、なかなか厳しい状況になっている。一方、消費は堅調だ。コロナ禍からのリカバリー、コロナ禍によって加速された生活スタイルの変化により、旺盛な消費力、そして市場、ビジネスモデルの進化に大きな期待を寄せている。チャレンジングだが、ビジネスチャンスに満ち溢れた一年になると思っている。JCCIの活動を振り返ると、年始交換会。その後いくつかのセミナー。ワクチン接種が進んだ7月にはサマーウェルカムバックパーティーは久々のインパーソンでの開催で大変盛り上がり、最大の催し、アニュアルディナーもインパーソンで開催ですることができ、200人も参加した。総領事館とJTBの支援もあり、日本語対応のCOVID-19情報コールセンターを3か月間実施した。日本クラブでは、2020年に引き続き、医療機関にお弁当を届ける弁当プロジェクトを開催。現在も、1万5000個の弁当を届けており大変好評だ。世界情勢は日々変化しているが、変わらないものはアメリカの重要性と、日本の大切な信頼関係だ。日系企業が広く、かつ深く米国社会に根付き、米国社会と共に発展していけるよう努力を続けて行きたい。


NY日系人会 佐藤貢司会長

「日本の伝統文化を継続」

 明けましておめでとうございます。新年は、新しいスタートの始まりです。新しい市長エリック・アダムス氏を迎え入れたニューヨーク、そして2年目に突入するバイデン政権にとっても、新しいスタートです。2021年は、パンデミックが続いたため、皆さんにとってもまた、ニューヨーク日系人会にとっても非常に困難で挑戦的な年でした。しかし、敬老会、桜祭り、七夕まつりなど、バーチャルやハイブリット方式を取り入れながら、いくつかのイベントを再開することができました。今後もJAAは、日本のコミュニティを支援し、日本の伝統文化をあらゆる年齢や背景の人々と共有し、祝福するという伝統を継続したいと思います。新年も皆様のご多幸をお祈り申し上げます。(英語スピーチを翻訳)


日本クラブ 上野佐有会長

「日米友好の深化に貢献」

 2021年は、ワクチン接種が進捗したおかげで、経済活動の再開、力強い需要が見られた年だったと思う。一方でサプライチェーンの問題や、人手不足を背景にインフレが高まっている状況だ。だが、総じて見れば、着実に力強くポストコロナに向かって進み始めた年だったと思っている。気候変動については、バイデン政権によるパリ協定への復帰を皮切りに、気候変動サミット、COP26など、国際協調の舞台においての(アメリカの)存在感が一層高まった年だったと思う。また、インド太平洋地域においては、Quadを経済関係の要の一つとする中、基本的価値観や戦略的利益を共にする日米両国において、経済・パンデミック対策・気候変動・安全保障、幅広い分野において、一層の関係深化から、この地域が直面するさまざまな課題の解決に繋がると確信している。昨年を振り返ると、文化・教養・スポーツなど多彩な活動を通じて会員の親睦を図ると同時に、地域社会との有意義な交流の場として日米の親睦交流に尽してきた。

 昨年はワクチン接種の進捗に伴い、夏のサマーフェスティバル、秋のクラシック音楽の夕べ、冬のクリスマスパーティーをハイブリットとインパーソンを交えて開催することができた。医療関連ウェビナー、文化、芸術、ファミリーイベントなどバーチャルイベントにも多くの方に参加していただいた。新年早々から、オミクロン株が猛威を奮っており、今年も残念ながら、新型コロナと共存せざるを得ない年となった。それでも日本クラブは、創意工夫を凝らして、会員の皆様の多様なニーズに応えられるイベントを企画し、そしてそれらを通じて日米の友好の深化に貢献できればと思っている。


ジャパンデー・インク 上田淳会長

「ジャパンパレード実施」

 ジャパンデーは、日米市民の交流促進、ニューヨークへの感謝の表意、日系コミュニティーの連帯強化の3本の柱で2007年から毎年5月セントラルパークで開催し、2019年には13回目を迎えることができた。今年は初めての試みで5月14日にセントラルパークのイベントに代わり、初のジャパンパレードを計画している。ニューヨークで「ジャパン」と名がつく初めての記念パレードになる。ルートは、セントラルパークウエストの81丁目から61丁目へ南下するように行進する。参加団体には、日本の文化・伝統・文化・スポーツ・コスプレ・マーチングバンド・学校など、日本の多様な魅力、日米親善を、ニューヨーカーにアピールする内容だ。パレードに必要となる予算は、現段階見積額で113万3000ドル、そのうち85万5000ドルの収益見込みまで到達している。引き続き、宣伝広告、寄付のスポンサーシップを募集している。協力企業には、パレードのフロートのモニターで企業名を表示するなど、いろいろなパターンでアクノレッジさせていただきたいと考えている。税制優遇措置にも登録可能になっている。パレード参加団体の募集を開始している。山野内大使の「志があれば必ずや実現する」との言葉を信念として、記念すべき第一回のパレードが、誰もがこのパレードの名前を知っていて楽しみにしている、そんなイベントになるよう努めていきたい。


ジェトロNY事務所 河本健一所長

「米国の先行き占う5点」

 米国の2022年が幕を開けたが、依然先行き不透明なままだ。次の5点が今後大いに注目される。まずコロナ禍。経済社会活動に対する制限を必要最小限に抑え、コロナと共存しようとする動きが本格化しているのではないか。次に、ビルド・バック・レター・法案。バイデン大統領の肝いりのこの法案は、昨年12月民主党中道派マーチン上院議員の反対表明によって暗礁に乗り上げた。この法案が成立しなければ、バイデン政権にとって大きな失点となる。続いてインフレ。サプライチェーンの混乱による供給不足で物価が急上昇した。バイデン政権を批判する勢力は、このインフレをバイデンフレーションと揶揄している。今後サプライチェーンがいつ正常化するのか、またFRB連邦準備制度理事会がインフレの収束と雇用の最大化の両方をコントロールして達成できるのかがポイントになる。国際面では米中関係。それによって日系企業にも少なからず影響を受けると思われ、日本としてどのようなスタンスをとるのか問われる。そして中間選挙。バイデン大統領の支持率は、8月下旬以降、不支持率が支持率を上回る。日系企業は今後どのように組織を運営していくのか、働き方はどうするのか、さまざまな思いを巡らせる。ジェトロも例外ではない。職員に対し三つのワークを示した。情報を収集・伝達するネットワーク、必要なサービスを迅速的確に届けるフットワーク、仲間と協力連携して仕事を行うチームワークだ。日米経済の橋渡し役として今年も日系企業の米国での事業展開をサポートしたい。


日本政府観光局 山田道昭NY事務所長

「旅行のトレンドに変化」

 2021年をインバウン観光の視点から見ると、新型コロナウイルスに翻弄された1年だった。アメリカでは、7月4日の独立記念日周辺では国内旅行の需要が一気に加速し、アメリカ国内の航空需要は2019年にまで回復した。それに続き、日本では東京オリンピック・パラリンピックが無観客で開催された。日本国内の感染者数は急増し、開催自体の賛否両論もあったが、「オリンピックに直接関連した感染はそれほどなかった」「日本はパンデミックの中、オリンピックという比較的難しい局面をうまく乗り切った」というのが海外からの評価であった。その後、日本では感染者数が減少。ところが、ホリデーシーズンに合わせたかのようにオミクロン株が登場し、アメリカで瞬く間に過去最高の新規感染者数の更新。日本でも新規感染者数が急増している。感染力が強い一方で、重症化しないという見方もあるが、予断を許さない状況だ。

 こうした中、日本では引き続き外国人を入国制限しているが、アメリカ発の海外旅行の状況は「行けるところに行く」というものだ。また、パンデミックを経験して、旅行者が海外旅行に求めるものにも変化が出ている。

 例えば、都市観光よりも自然を体験する需要が高まっている。さらには、気候変動からSDGsを考慮する観光客も増えている。日本の旅行関係者の方々にとっては、コロナ禍をいかに乗り切るかが課題だが、旅行トレンドの変化を敏感に捉え、来たる海外旅行の再開の時に備えることも同様に重要だ。

ティファニーズ・ランプ展

クイーンズ美術館

 1939年の万国博覧会のために建てられた歴史ある建造物のクイーンズ美術館は、地下鉄7番線のメッツ・ウィレッツポイント駅近くの広大なフラッシングメドウ・コロナパーク内にある。ティファニー創設者の長男でガラス工芸家であるルイス・C・ティファニーによるガラスランプのコレクションを常設展示している同美術館では現在、ティファニーグラスのノイシュタット・コレクションが主催するもう一つの展示会「ティファニーズ・ランプ=ライトニング・ラグジュアリー」も開催されている。

 1898年から販売されたティファニーのガラスランプは、彩色ガラス(ステンドグラス)と自然や動植物の模様をかたどったブロンズ彫刻からなるもの。当時、その美しさから非常に高額ながらも人気となり、実用品としてのランプではなく芸術作品として扱われた。また「アメリカン・アールヌーボーの傑作」と言われ、世界中の美術愛好家の憧れでもある。2つの展示でこれまで以上の数多くの貴重なコレクションが見られる機会となっている。

 入場料は任意(推奨8ドル、シニア4ドル)、18歳以下は無料。月・火曜は休館。チケット・詳細はウェブサイトhttp://www.queensmuseum.org

米国のメジャー舞台で大活躍

ダンサー TOMO

 TOMOこと本名・石川智子(32)。身長148センチの小柄な外見からは想像できないダイナミックなダンススタイルで、数多くの有名アーティストのバックダンサーを務めるなど、今ニューヨークで最も注目を集める日本人ダンサーの1人だ。

 東京出身、6歳からダンスを始め22歳で来米。これまで、マドンナ、リルキム、ファットジョー、レミーマ、フレンチモンタナと言った錚々たるメジャーアーティストのバックダンサーとしてミュージックビデオや、ショーなどに出演した。

 最近では、世界中で大ブレイクしたカーディービーや、KPOPアーティストBTS、有名ラッパー、フィフティーセントとの共演など、彼女の快進撃は止まらない。

 また、ダンス以外でも映像大手ドルビーのコマーシャル、運動靴メーカー大手コンバースの広告でモデルを務めるなど多彩な才能を発揮している。

 もちろんここまで来るには平坦な道ではなかった。22歳の時に右も左も英語も分からず、知り合いが1人もいないニューヨークに。ハーレムにあった、2段ベッドが2つある7畳の部屋での共同生活、それが最初に住んだ場所だった

 ダンススタジオで毎日悔しい思いをして帰りの地下鉄で泣くこともあった。3か月のトレーニングを終えた帰国前、恩師に「必ず戻って来い」と言われ心を決め、帰国半年後、ペリダンスの学生として再来米した。

 高校までダンス以外には目もくれずに過ごしたが短大でダンスと一度離れたことで自分を見失った時期があった。「母親が『今ならニューヨークに行く支援をしてあげるけど、今行かないならもう一生行かせない』とダンスを本気でやるきっかけをもう一度くれた。この時の母の後押しがなかったら、今の私はいないと思う」と振り返る。

 今はハリヤマバレエや卒業したスクールのペリダンスを含む4つのスタジオで講師をしている。教えることや、振り付けなどの仕事も更にやっていきたいと将来への展望も語る。

 ダンサーになることに大反対だった父親は、今では彼女の一番のファンだ。帰国するといつもディスコに連れて行ってくれる。「20代は自分のことで精一杯だった。最近は親の近くにいてもいいかなという気持ちになることもあるけどいつかビザが取れなくなるその日までは頑張ります」と答えた。  (三浦良一記者)

@tomo6kaijohn

Photo by Naoto Sawaki

編集後記 1月15日

 みなさん、こんにちは。今週号の1面と中面で、米国の物価高騰の話を記事にしています。今朝1月13日付ニューヨークタイムズ紙の1面でもトップ記事に、サプライチェーンの停滞で、米国のインフレ率7%、1982年以来最高という見出しが踊っていました。末端の小売価格で消費者が物価の値上がりを本当にここ数か月味わっています。日系スーパーの店頭に、年末年始の料理詰め合わせおせちセットの売れ残りが目について、値札をみたら、海老2尾、数の子2本、卵焼き2切れ、蒲鉾2切れ、昆布2つ、伊達巻2切れに黒豆少々のお世辞にも豪華とは言えない質素なセットがなんと68ドル。レストランのシェフが精魂込めて作る伊勢海老がドーンと入った200ドルのお節なら、内容が伴っているので買う人も納得でしょうが、スーパーのプラスチック皿にポロポロと乗っかったみても侘しくなるおせちの68ドルにはびっくり。年明けに半額になってましたが売れ残ってました。お店の人も「高いですよね」と呆れていたくらい。何しろ、通常はコンテナ1本3000ドルで入荷できたのが、昨年はそれが最大3万5000ドルにまで10倍以上も値上げになり、大手食品卸し業者の倉庫がガラガラになってしまう状況だったそうで、食品メーカー、流通業、小売店も理不尽な値段にやり場のない思いをしたはずです。ご家庭ではこんな時こそ自炊、家庭料理の腕の見せどころだったかもしれません。オミクロン株の急速拡大の中で経済と社会に歯止めをかけないというムードがあります。バランスを崩しそうな綱渡りのようです。健康には気をつけましょう。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年1月15日号)

(1)米国で物価高騰続く

(2)雪の降る街 

(3)よいしょ!ツイてるぞ 餅つき

(4)ドライブ・マイ・カー受賞 ゴールデングローブ賞で

(5)バイクの次は傘シェア

(6)輸送費10倍 邦人家庭の食卓直撃

(7)猛煙一気に建物充満 子供8人含む17人死亡

(8)クオモ元知事のセクハラ容疑 検察が訴追断念

(9)NY生活ウーマン W2NXT

(10)日本クラブWEBギャラリー展 「富士山と羽衣伝説」

米国で物価高騰続く

経済再開にヒト、モノ供給追いつかず

 米国で2021年春より始まった物価高騰が止まらない。米労働統計局による2021年11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6・8%上昇、変動が大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4・9%上昇となった。前年同月比の伸びは、CPIは1982年6月以来、コア指数でも1991年6月以来最大だった。

 品目別に前年同月比で見ると、まずガソリンが58・1%上昇を記録。車の値段上昇も顕著で、中古車が31・4%上昇、新車11・1%上昇となった。食料品は家庭用が6・1%、外食5・8%と共に伸びており、合わせると6・1%上昇で2008年以来、最大の上がり幅となった。また住居費が3・8%と、最近になって上昇が顕著となっている。住宅ローンや家賃、光熱費など、住居維持のために必要な費用も上昇しており、インフレ圧力を証明するものとなっている。航空運賃とアルコール飲料を除けば、ほぼすべての分野で価格上昇が続いている。

 米労働統計局によると、食料品や住居費、中古車、トラック、新車の価格上昇が物価高騰の大きな要因という。バイデン大統領は「加速するインフレを下げることが最優先事項」と述べており、例えばガソリン代の高騰に対応するため米政府は11月23日に石油戦略備蓄の市場放出を決めた。これによりいくつかの州でガソリン価格が低下し始めた。

 物価高騰の原因としては、国内総生産がコロナ禍前に戻りつつあるなかで、労働市場がひっ迫していることが挙げられている。コロナ禍で一部商品の供給が減少していたにもかかわらずワクチン接種が進むなどして経済活動が再開され需要が高まった。このためかなりの業種が人手不足となっており、流通の滞りを含めた供給不足が物価上昇を生み出している。

 港湾ストライキも懸念

 ニューヨーク共同貿易では、昨年夏前からビジネスが戻ってきているが、コンテナの滞留問題で通常ドライコンテナ1本3000ドルだったものが3万5000ドルまで値上がりし、一時は倉庫がガラガラになった。レストランで、塩や砂糖などどうしても日本製のものが必要なものは航空便なども使い手配した。何よりも供給を止めないことを最優先にしたという。昨年末からコンテナの手配もできるようになったが、4月から港湾組合のストライキが控えているのでそれも懸念材料だという。 

(関連記事)邦人家庭の食卓を直撃

邦人家庭の食卓を直撃

輸送費10倍に

ジェトロが影響調査報告

 西海岸ロサンゼルス港でのアジア発北米向けコンテナが荷上げできずに港に長期間滞留されている問題で、日本から輸入している食料品などに大きな影響が出ている(関連記事:米国で物価高騰続く)。北米ジェトロ各事務所が食品商社、輸送会社など企業などに聞き取り調査をしレポートにまとめた。

 それによるとコンテナ船の輸送スペースの確保は、困難を極め路線によって数か月待ちが常態化していることがわかった。また貨物の増加、現場人員の入場制限などによる混乱が継続。主要港湾の遅延・欠航・滞貨が深刻化している。

 ■滞留コンテナに課金

 ロサンゼルス港は12月30日、海上ターミナルに空コンテナを9日以上滞留させた海運会社からの手数料徴収を開始すると発表した。ロサンゼルス港湾委員会の承認を経た上で、1月30日から適用を開始する予定。9日間以上滞留した空コンテナについて、ターミナルを離れるまで海運会社に対し、コンテナ1個につき1日当たり100ドルの累積の追加料金を課すことで事態の打開を図ろうとするが、今後の見通し(解消時期)などは、少なくとも2022年の中国の春節が終わるまでは現在の混乱が続く、というのが共通の見通しとなっていると分析している。

 特に輸送価格が常規を逸した値上がりとなっている。コンテナ輸送価格は路線によりバラツキもあるが、アジア発北米向けなどで、平常の10倍以上との報告もあった。プレミアム料金での優先予約や、一部、法外な価格での売り込みに応じざるを得ない事例もあったとしている。ジェトロの報告書からは業者の苦しい状況が伝わってくる。項目別に紹介する。

■推奨される対応

 他社と共同でのスペース確保、航空チャーター便などによる輸送機会確保と効率的な活用、 特に、船荷の直行便ではなくトランジットやコンテナを積替えが発生する航路では、遅延を見越した納期設定・交渉が必要になる。市の空港・航路の活用(陸送との併用)検討することも指摘する。

■今後の見通し

 少なくとも2022年の中国の春節が終わるまでは現在の混乱が続くだろう。価格高騰の解消は、現在発注済みの大型船舶が就航可能となる23年以降との見方も。航空輸送は、便数回復が2022年も不十分。スペース不足と運賃高騰は継続。燃料価格高騰が拍車。港湾におけるマンパワー不足解消は、感染状況次第のため見通しは立たない。

■ロサンゼルス港の状況

 港湾混雑による沖待ち、引き取り遅延が慢性化。西海岸の沖待ちは17日間、搬入作業に3〜4日、コンテナ滞留は約10日間(10月末)。国内のドライバー不足、トラック輸送費も高騰。

■輸送料高騰小売価格に

▽港湾が24時間7日体制になったものの、夜間シフトの稼働率は低く、貨物引き取りニーズも少ない。夜間の時間帯の有効活用が課題。(物流会社)

▽ 日本や中国、東南アジアから米国向けの路線では、40フィートコンテナの運賃は、コロナ前の3000ドルから、最大で1万8000ドルから2万ドルまで上昇。ここ1か月半ほどで下降気味となり、直近では1万1000ドルから1万3000ドル程度。(小売)

▽コンテナ運賃は、通常、4〜5月に3社から年間のフラットレートの見積もりをもらい、その中から状況に応じて使い分けているが、コロナ禍でそれが機能しなくなった。プレミアム料金の追加支払いも発生。極端な場合、200万円の商品を搭載しているコンテナに170万円の運賃を支払う場合もあるが、欠品を出せないためしょうがない。(食品商社)

▽米国内のトラック輸送のコストが平時の1・5倍から2倍に高騰している。(機械商社)

▽船会社は新規顧客を受け付けておらず、輸送貨物増を目的とした新規契約ができない。(機械商社)

▽商品の不足が深刻で、代用品を提供することもあるが、その代用品も奪い合いとなり、顧客には代用品を本日仕入れなかったら明日以降に卸せる保証はないと話している。物流の混乱などで商品がないため、顧客側では運賃の転嫁も含めて価格を2倍にしても理解して受け入れてくれている。バブルと感じている。(食品商社) (ジェトロ調べ)

(写真)NY市内食料品店で68ドルで販売されたおせちセット

(関連記事)米国で物価高騰続く

雪の降る街 日常へ回帰

 ニューヨークは、年末年始のホリデーシーズンも終わり

お祭り気分も去って景色だけは普段の冬に戻ったようだ。

 ただいつもの普段と違うのはコロナウイルスオミクロン株の拡大。

ワクチン接種が進んだせいか、爆発的感染拡大の最中にあっても

重症化で市内の病院が逼迫しているというニュースは聞かない。

応急仮設の野戦病院や軍の病院船が出現した昨年とは何かが違う。

 これをwithコロナ、ニューノーマルというのだろうか。

摩天楼の谷間にコロナ3年目の雪が降る。

       (1月7日午前8時30分、42丁目で、写真・三浦良一)

よいしょ! ツイてるぞ

クイーンズ区サニーサイドで
新春餅つき大会

 1月2日、クイーンズ区サニーサイドで新春餅つき大会が開催された。主催は地元で人気の日本料理店「有吉」。今年で5回目を数える恒例の正月行事で、サニーサイドだけでなくマンハッタンから家族で訪れた人たちも含め参加者は150人を超えた。イベントは午後1時から始まり、ニューヨーク育英学園より貸与された臼杵を使って本格的な餅つき実演が計3回行われた。自分の身の丈ほどある大きな杵で一生懸命餅をつく子どもたち、それを暖かくサポートする保護者たち、木こりの斧のようにダイナミックに杵を振り下ろす巨漢のアメリカ人、元気よく声を掛け合う餅つき名人たちなど、未就学児童からシニア層まで、あらゆる文化背景を持った人々が参加を楽しんだ。つき方のスタイルこそ十人十色だが、思いはひとつ「粘るぞ、克つぞ、伸びるぞ!2022年」だ。

 つき終わってうっすら汗ばんだ参加者は、その場でつきたてを頬張った。お餅は温かくて、お米の風味が立つ優しい食感で、縁起良く伸びた。磯部巻、あんこ、きなこ、納豆の4種はどれも同等に人気だった。(中村英雄、写真も)

ドライブ・マイ・カー受賞

ゴールデングローブ賞で

 米国アカデミー賞の前哨戦とされる第79回ゴールデングローブ賞が9日発表され、濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」が非英語映画賞を受賞した。

 同映画は、村上春樹の短編小説が原作、濱口監督が脚本を手がけた。妻が急死した舞台演出家(西島秀俊)と専属運転手(三浦透子)とが過去を見つめ合う物語。昨年のカンヌ国際映画祭でも濱口監督らが脚本賞を受賞している。

 ニューヨーク市内では、ウエストビレッジのフィルムフォーラム、ブルックリンのBAMで上映中。詳細はfilmforum.orgwww.bam.orgを参照。

(写真)Courtesy of Sideshow and Janus Films

バイクの次は傘シェア

1日レンタルは無料

 自転車シェアに続き、NY市でこのほど傘をシェアする新規事業がスタートした。同サービス「レントブレラ」は、2018年にブラジルで創業した。傘100本を収納する自動販売機のようなキオスクは、現在マンハッタンとブルックリンの35か所に設置されており、今年中に全100か所の増設を予定している。スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、QRコードを読み取ると鍵が解除され傘を借りることができる。レンタル料は、最初の24時間は無料で、2、3日目は1日当たり2ドル、4日目以降は16ドルだが実質買取りとなり、そのまま所有することができる。同社によると、昨年10月の開始以来、利用者の98%は24時間以内に返却しているという。同社の収益は、傘に印刷された広告料となっている。同サービスの詳細はrentbrella.comを参照する。