SOHOを軽やかバレリーナ

 再びソーホーの街角。週末の朝、軽やかな足取りで歩く女性にファッションインタビュー。おさがりのダウンジャケットの下はAmerican EagleのTシャツにアマゾンのレギングスだ。全身黒色で、極めてラフなアスレジャースタイル。「走るのも好きだから」とコメントする彼女は履いているスニーカーブランドを思わず失念。同行する友人に教えてもらい、「そうそう!ニューバランスよ」。ピンと伸びた左足を軸に綺麗に折り曲げた右足を空中でピタリと固定し、抜群の安定感で数秒間スニーカーを指さし続けていた。「実はバレリーナなの」というコメントに納得。

 普段はスポーティーな衣服に身を包みつつ、Brandy Melvilleのようにトレンドに敏感でフェミニンなスタイルや、ヴィトンファッションショーやモデル達の私生活を追うのも大好きだ。余暇はリンカーンセンターでバレエ鑑賞。「METにもよく行くの。マンハッタンは至る所がアートで溢れているから、そこにいるだけで自分がアートと融合してゆくような気分になるの」。ゆったりと週末を過ごすため、ソーホー在住のバレリーナ友達の家に前泊。朝食を食べてから一緒にバレエ教室に向かい、その後は車を運転してロングアイランドの実家に帰る予定だ。一流ブランドファッションショーにアートやバレエ。中身は芸術志向の素敵な人たちが、さり気なくラフな服装で闊歩するマンハッタン。その神秘的な魅力は、ニューヨーカーへの街角ファッションインタビューを通して深まるばかりだ。

(Wear2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

ミュージック・フロム・ジャパン

3月5日スカンジナビアハウスで

講演会やフォーラムも

 ミュージック・フロム・ジャパン2022年音楽祭が、3月5日と6日にスカンジナビア・ハウスのヴィクター・ボージ ホールで開催される。音楽祭では、1日目は「最近の日本の
音II」と題した若手作曲家3人による委嘱新作を中心とするコンサート。2日目は「池内友次郎とその門下」と題したコンサートで、作曲家そして師として日本の音楽界に多大な影響をもたらした池内友次郎とその影響下の作曲家の作品を彼の孫でチェリストのクリスティーナ・レイコ・クーパーの演奏を通じて披露する。加えて、恒例の講演会、フォーラムも開催する。入場者数は、コロナ禍のため140席に制限。入場の際にはワクチン証明とIDの提示、またマスク着用も必要。参加費は各コンサート一般25ドル(MFJメンバー20ドル)、学生・シニア20ドル。申し込みリンクはhttps://musicfromjapan.org/upcoming-events。詳細リンクはhttps://mfj2022.eventbrite.com

高氏奈津樹が新作

シンボルと人間の心

 ブルックリンにあるセントフランシス大学(180 Remsen Street, Brooklyn Heights)にて、さまざまな年齢や国籍を持つ23人のアーティストによるグループ展「ウィー・アー・ザ・ワールド」が開催されている。アートコレクターのリーズ・カリーとフランシン・ロジャーによるキュレーションで集められた多様性溢れる絵画、版画、彫刻とともに、在学生によるポートレート写真作品も展示されている。同展に参加する日本人作家は遠藤良子、神野忠介、高氏奈津樹(たかうじ・なつき)、マーク・タナベ。参加者の高氏は「この作品は私がパンデミックから始めた、人が何を信じて生きているのかということをテーマにしたシンプロジェクトの一環で、古代からさまざまな国の信仰など重要な意味を持つシンボルを組み合わせ1つにしたもの。人間の心、アイデンティティー、想像力とアートやデザインは密接な関係があるので、その人が何を見て育ち信じているかなどで、作品の見方や感じ方が変わるのがまた面白いと思う」とコメントしている。

 入場無料。展示会最終日の25日(金)午後6時から9時までは、クロージングレセプションが行われる。詳細はウェブサイトhttps://www.sfc.edu/を参照する。

編集後記 2月5日号

【編集後記】
 みなさん、こんにちは。海外在住邦人の在外投票は不便すぎるとしてネット投票の導入を求めるオンライン署名運動が行われ1月31日、集まった署名2万6027人筆が林芳正外務大臣に手渡されました。署名運動は昨年10月の衆院選がきっかけで、ツイッターなどで知り合ったニューヨーク在住の子田雅子さん、イタリア在住の田上明日香さん、ドイツ在住のショイマン由美子さんの3人で開始。署名サイトChange.orgを使い同年11月4日よりオンライン署名「在外ネット投票の早期先行導入を求めます!」を実施、3か月あまりで2万6000筆が集まりました。ショイマンさんは「海外有権者およそ100万人のうち選挙人証を持っている人は約10万人で、投票は昨年10月の衆院選で2万人ほどとなっているのが現状で投票率は2%ほどでしかない。これを打開する方法がネット投票です」と訴えました。林大臣からは「在外選挙は平成10年に創設されてこれまで15回行われてきた。時代が変化しており見直しが必要。所管は総務省だが皆様のご要望を踏まえて改善していきたい。デジタル庁で現在いろんな観点で検討してもらっている。2万人投票の現状を一桁増やしたい」と応えました。海外有権者ネットワークNY共同代表・竹永浩之さんは「30年近く前に私たちがやった在外投票制度の実現を目指す署名運動では1万1000人筆の署名を集めるのに1年半かかった。今回の在外ネット投票の署名運動ではたった3か月で2万6000人を超える署名が集まった。時代の変化を感じる」と驚く。元在外投票推進議連会長の藤田幸久さんは「在外ネット投票署名の林芳正外務大臣への提出は歴史的快挙」と称賛、「面識のない3人の共通点は、外からだから見える日本の問題」という。海外から見る日本人の視点は、きっと日本の将来にも大きな刺激となり、役立つものと期待したいですね。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年2月5日号)

(1)海外有権者の声届く 林外相にネット投票署名

(2)治安悪化のNY 警察官の殉職続く

(3)美味しいもの見つけた記 高級料理店の食材自宅で

(4)極端な多様性CM   ニューヨーカー街角の声

(5)フレッド・コレマツデー フォートリーで記念行事

(6)野田さんに外務大臣表彰 NY日系人会事務局長

(7)ジャパンパレード 5月14日開催決定

(8)雨の日には車を磨いて 五木寛之は大の車好き

(9)TOGETHER FOR 3.11    10年間ご支援ありがとうございました

(10)ポップの王様   MJ・ザ・ミュージカル始まる

海外有権者の声届く

林外務大臣署名受けとり「改善したい」

在外ネット投票

 海外在住邦人の在外投票は不便すぎるとしてネット投票の導入を求めるオンライン署名運動が行われ1月31日、集まった署名2万6027人筆が林芳正外務大臣に手渡し(手交)された。(写真=海外在留邦人2万6027人の署名が入ったUSBメモリースティックを受けとる林外務大臣(右端)写真提供・change.org Japan)

 署名運動は昨年10月の衆院選がきっかけで、ツイッターなどで知り合ったニューヨーク在住の子田雅子さん、イタリア在住の田上明日香さん、ドイツ在住のショイマン由美子さんの3人で開始。署名サイトChange.orgを使い同年11月4日よりオンライン署名「在外ネット投票の早期先行導入を求めます!」を開始、3か月あまりで2万6000筆が集まった。

 林外務大臣への手交では、欧米にいる発起人3人とネットで繋ぎ、署名が入ったUSBメモリーをChange.org Japanのスタッフが代理で手渡した。会合には小林史明デジタル副大臣も参加した。ショイマンさんは、海外有権者およそ100万人のうち選挙人証を持っている人は約10万人で、投票は昨年10月の衆院選で2万人ほどとなっているのが現状であり2%ほどでしかない。在外公館が遠い人が投票を断念するケースや郵便投票の問題点などを指摘した。「小さなUSBメモリーですが、その中には早くネット投票を実現したいという声がたくさん詰まっています」と語った。請願書では2022年夏の参院選で在外邦人を対象にネット投票の実証実験をし、2025年の参院選には在外ネット投票の確実な全体運用を求めている。

 林大臣は「在外選挙は平成10年に創設されてこれまで15回行われてきた。時代が変化しており見直しが必要。所管は総務省だが皆様のご要望を踏まえて改善していきたい。デジタル庁でいろんな観点で検討してもらっている。2万人投票の現状を一桁増やしたい」と応えた。

ネット投票早期実現を
公館投票、郵便投票の限界訴え

 林大臣からは「在外選挙は平成10年に創設されてこれまで15回行われてきた。時代が変化しており見直しが必要。所管は総務省ですが皆様のご要望を踏まえて改善していきたい。デジタル庁の小林副大臣もおられますが、ネット投票の実証実験も行っている。マイナンバーカード、二重投票、投票の秘密保持、セキュリティー対策など、いろんな観点で検討してもらっている」と応えた。

 大臣は在外投票の大変さを聞きたいということで、田上さんは昨年の衆院選で郵便投票をしようとしたがコロナ禍で郵便事情が悪く間に合わないことがわかり、在外公館投票にしたが往復8時間、一泊して費用2万6千円かかったことを紹介、「このアナログな制度では経済的にも体力的にも物理的にもこの先も続けていくのは大変厳しい、ネット投票を強く切望します」と話した。子田さんは「ニューヨークでも総領事館まで出かけるのが大変で投票を躊躇する声があり、自宅でできるネット投票をぜひ実現させて欲しい」と語った。

 林大臣からの「遠くて大変だということ以外ではなにかありますか」との質問に田上さんは、投票の期間がとても短いという問題をあげた。平日の1日しか投票ができなかった在外公館、またコロナ禍で飛行機が飛ばないので票を日本に持っていけないため在外公館投票自体が行われなかった在外公館が15カ所あったことなどを指摘した。在外公館からコロナ禍で郵便投票を推奨しますと言われて9月から準備したが、むしろコロナ禍で郵便事情が悪く間に合わないため在外公館投票した経験を語った。

 ショイマンさんは、エクスプレスで送っても郵便投票が間に合わない事例もあったことを紹介、「お金をかけたのに投票できなかったという無念があります」と語った。小林デジタル副大臣からは、2024年の法改正で海外邦人のマイナンバーカード利用が可能になる可能性が高く、個人認証が簡単にできるようになればネット投票の環境が整うことが語られた。

 林大臣は「これだけ大変ななか投票してくださった2万人には心よりお礼を申し上げたい。残る課題は投票の秘密保持などがあるようだ。制度を作るのは総務省、デジタル庁だが、100万人のうち2万人投票という現状を一桁変わるようにしっかり後押ししたい」などと応じた。

発起人3人がオンライン記者会見

「当事者が声をあげることが大事」

 林芳正外務大臣への署名手交後、発起人3人による記者会見が行われた。

 この署名運動を始めたきっかけについて田上さんは、林大臣との会合の際にも話したが、昨年の10月の衆院選で在外公館投票で、往復8時間、一泊して費用2万6千円かかったことをあげ、「ネット投票を強く切望します」と語った。ショイマンさんも在外投票に往復10時間かかり、そのハードルの高さを痛感したことがきかっけと語った。また、ネット投票は総務省が国内で実証実験するところまで来ているが、本当に実現させるためには「当事者が声をあげることが大事で、社会を変えていくのは市民」と語った。

 子田さんはこの署名運動は「海外有権者100万人が憲法第15条で保障された選挙権を行使できる世界」を目指すもので、在外選挙は超党派的課題であり与野党双方との会話を進めていきたいと語った。ニューヨーク市内に住む子田さんは「私自身は総領事館まで電車で数分のところに住んでおり在外投票で苦労したことはないのですが、周りにはいっぱい苦労されている人がいます。衆院選で在外投票に関する総領事館からのメールに『皆様の大切な一票です。必ず投票に行きましょう』という一節があったのですが、その文章がとても残酷だということを知って欲しいと思いました。行きたくても行けないような人がいなくなるネット投票に期待しています」と語った。

 記者会見では在外投票自体だけでなく在外選挙人証にも取得の煩雑さなど課題があることが取り上げられた。今回林外務大臣へ署名を提出した経緯については「デジタル副大臣と面談する機会があり、副大臣から外務大臣の方に話をしてもらった。外務大臣に在外邦人の声をいったん受け止めてもらい外務大臣から総務大臣にプッシュしていただく形になった」と田上さんは語った。署名は外務大臣と共に総務大臣、デジタル庁大臣宛てとなっており、未定だがそちらへの提出も考えているという。署名は現在も受け付けている。

時代の流れにあと一歩

 30年近く前に私たちがやった在外投票制度の実現を目指す署名運動では1万1000人筆の署名を集めるのに1年半かかりました。今回の在外ネット投票の署名運動ではたった3か月で2万6000人を超える署名が集まったと。時代の変化を感じます。

 今回の署名提出は在外ネット投票実現への第一歩だと思います。勝負はここからです。同制度の実現、つまり法制化のためには今回の署名運動だけでなく、多くの日本人有権者の具体的な行動が必要です。在外ネット投票実現に賛同される方にはぜひ、ご自身の選挙区の衆議院議員及び参議院議員に直接SNSやメール、電話などで同制度の実現を訴えていただきたいです。(海外有権者ネットワークNY共同代表・竹永浩之さん)

                  

 在外ネット投票署名の林芳正外務大臣への提出は歴史的快挙です。在外邦人から投票の権利を奪ってきた選挙制度を変えることは日本の民主主義の前進です。私も在外投票推進議連の会長として活動しましたが、法律の壁の厚さと、海外から日本を変える難しさを実感していましたが、3人の女性の決起により、3か月で局面を変えてくれました。3人の共通点は、外からだから見える日本の問題であり、時間とコストをかけなければ民主主義が守れないという体験です。コロナ「禍」は遠くの人々の問題を共有し、繋がるネットという手段を提供してくれました。この「福」を活かして、日本をchange する闘いを進めましょう!皆さん有難うございました。(元在外投票推進議連会長・ 藤田幸久さん)

治安悪化のNY、警察官の殉死続く

 ニューヨークの五番街がブルーの警察官の制服で埋まった。1月22日、ハーレムで家庭内暴力の通報を受けて駆けつけ撃たれて死亡したジェイソン・リベラ巡査(22)の葬儀が28日セントパトリック寺院で厳かに行われた。ニューヨーク市では銃が使われた痛ましい犯罪が立て続けに起きている。警察官に対しても、今年に入り6人の警察官が死傷した。ニューヨークは、マフィアが隆盛を誇った1970年代の「フィアーシティ(恐怖の街)」のような無法と絶望の状態に戻りつつあるのではと懸念する声すら出始めている。NY市警(NYPD)のデータによると、2021年の同時期に比べ、今年に入ってから市内での発砲事件が16%増加している。

(写真)葬儀で五番街に整列する警察官(1月28日昼、写真・三浦良一)

美味しいもの見つけた記。高級料理店の食材自宅で

 1年前にクチコミでニューヨーク市内で始まったトモエフードサービスの生肉販売は、最初は20人のごく内輪でスタートしたが、高級料理店に卸している食材がそのまま手に入ることから現在利用客はニューヨークだけで500世帯に膨らみ、ほぼ全てが日本人家庭での根強いファンに支えられている。この冬から、グローサリーNYがトモエフードサービスから提供を受けた生肉商品を一手に引き受け一般市販している。配布は月に2回、ニューヨークとニュージャージーの20か所以上ある「ごきんじょピックアップ」スタイルをとっている。

 早速購入していただいてみたのはまずチャーシュー(26ドル)=写真右=。冷凍になっているので常温で溶かし、包丁で数枚ごとに切り分けて保存。1本で5ミリ程度の厚さの焼豚が40近くスライスできたのでラップに包んで冷凍保管。購入したものは脂身がほどよく入っていてラーメンがお店の味になるほど美味かった。続いてUS和牛の切り落とし(3ポンド32ドル)が、使い道ありのお買い得。すき焼き=写真中央=にして食べたところほぼ一流店に負けない味に。そしてモツ(1ポンド11ドル)は、ニラとキャベツを鍋に入れて生姜をたっぷり入れたモツ鍋に=写真左=。寒い冬に心まであったまる北国の味で大感動。

 このサービスのファンだという主婦の声を聞くと「ひき肉(チキン、2ポンド・12ドル)がアメリカではなかなかみない太さなので、とりつくねだったり、大きな歯応え十分の肉団子ができて美味しかった」。また、チューブ入りの明太子(10・6オンス、14 ドル)も「明太スパゲティ、おにぎり、マヨネーズドレッシングとなんにでも使えるのはホールセールならでは。料理のメニューの幅が広がった」と大評判。一度オンラインで購入すると登録されて、毎月の中旬と下旬のピックアップに合わせた配布食品カタログがメールで送られてくる。すぐ注文しないと売り切れが続出するのが目下ファンの悩みで、翌月に再度期待をかけることになる。(三) 

詳細は https://thegrocerynewyork.com 

Fコレマツデー、フォートリーで認定記念行事 NJ州

カレン・コレマツさん

 第二次世界大戦中の米国における日系人の強制収容所送致を指示した大統領令9066を、違憲判決に導いた日系人人権活動家フレッド・コレマツ氏の偉業を讃え、彼の誕生日である1月30日を「フレッド・コレマツ・デー」とし、歴史を学び移民の自由と人権尊重を考える日にしようという動きが、2010年のカリフォルニア州をはじめに、日系人人権活動家の地道な議会への働きかけにより 全米に少しずつ広がっているが、東海岸では2017年のNY市に続き、2020年にニュージャージー州フォートリー区が同記念日を正式に認定した。

 3年目となる今年は、フォートリー図書館が主催し、1月27日夜、オンライン形式で記念行事を開催した。同行事は、フォートリー図書館ディレクターのクリス・ユージェロニスさんが進行を務めた。マーク・ソコリッチ区長のスピーチのあと、動画で佐藤貢司NY日系人会会長と、キャロル古本さん(写真上=古本夫妻)の代読で吉岡まこNJ日本人会会長もそれぞれスピーチをした。そして、フレッド氏の長女でフレッド・コレマツ財団の創設者であるカレン・コレマツ氏が、父との思い出話や、彼の遺志を継いで現在、全米各地の学校や自治体に行っている教育活動の報告を行った。

ソコリッチ区長

 そして、NY市とフォートリーでのフレッド・コレマツ・デー認定の功労者である古本武司氏が、第二次世界大戦時の強制収容所のスライドを見せながら当時の日系人の過酷な生活と、1980年代に起きた「ジャパンバッシング」、コロナ禍で始まった「アジアンヘイト」など、日系人が受けてきた迫害についてプレゼンテーションを行った。自身が強制収容所で生まれ、戦後は広島で幼少期を過ごし、アメリカに帰国後は米軍兵としてベトナム戦争に従軍と、常に「人権と平和」について考えさせられる環境に置かれてきた古本氏の体験談や、だからこそフレッド・コレマツ・デー認定に向け奔走する理由には説得力があった。ソコリッチ区長も、「タク(古本さん)から、日系人が受けてきた不当な扱いや、フレッド氏の偉業を何度も聞かされて、大勢の移民が暮らすフォートリーを預かっている自分が、この運動に賛同しないという選択肢はなかった」と語っていた。

 質疑応答コーナーでは、古本氏にとって第二の故郷である広島の学校で行われている「平和授業」を例に挙げ、「自分と違う容姿の人や考え方も受け入れ、相手を認めていけば、アメリカも変わっていくと思う」と話していた。イベントの最後には、古本氏とキャロル夫人の結婚記念日が奇しくもフレッド・コレマツ・デーと同じ1月30日で、今年が金婚式となることが明かされ、参加者から祝福を受けていた。

 イベント終了後、古本氏は本紙の取材に対し、「次のステップとしては、フォートリーだけでなくNJ州全体でのフレッド・コレマツ・デーの認定を目指しており、これはもうあと一歩のところまで来ている。また、いくつもの高校や大学で、次世代を担う若者たち相手に歴史の生き証人として講演も予定している」と語った。 (本紙・久松茂)

黒人とアジア系目立つ極端な多様性CM

ニューヨーカー街角の声

 ジョージ・フロイドさん死亡事件から1年半、新型コロナウイルスの武漢での最初の発症から2年が過ぎた。これらの事件を背景に始まった抗議活動のブラック・ライブス・マター(BLM)や、ストップ・アジアン・ヘイトの影響から、世の中における差別や偏見に対しての注目度は以前よりも増している。人種・宗教・性別などの違いによる偏見・差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指すポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)を意識せざるを得なく、例えば、私たち日本人が割と普通に話している身長や体型、肌の色などに関しての言及も、人の外見を馬鹿にしたり批判するという「ボディ・シェイミング」に繋がる可能性があるのだ。このようなことから、私たちは、それぞれの違いや傾向、すなわち多様性(ダイバーシティ)を理解して受け入れ合い、日常生活上の言動においても日々気を配る必要があるのだが、企業はここぞとばかりに広告を通じて、多様性への理解を示すようなアピールをしている。

 一昔前は白人モデル起用が多く見受けられたファッションブランドのアバクロンビー&フィッチ、バナナ・リパブリックやブルックス・ブラザーズなどの広告を見ていても、最近は、黒人、アジア人、プラスサイズ(平均より大きい身長や体重)のモデル起用のオンパレードだ。セクシーな下着に身を包んだ細身のモデルたちによる派手なショーを行っていた女性ファッションブランドのヴィクトリアズ・シークレットでも、時代にそぐわないとして、プラスサイズモデルを起用するなど、広告業界は多様性に対して柔軟な姿勢を見せることに躍起になっている。そのような街中の広告を見て、ニューヨーカーはどう感じるのか、聞いてみた。

 企業は心の底から問題解決に取り組もうなんて思ってはいないと思う。お金になるからやっているだけだ。(50代・リタイヤ・ヒスパニック系アメリカ人)

 自身の会社でも多様性のコマーシャルを制作している。正直強制されているように感じるときもあったが、対応していかなくてはならない時代だし、それが当たり前の時代になっていくと思う。(40代・会社員・白人系アメリカ人)

 多様性が認められるようになってきて、そのような広告が増えてきたことは全体的に考えればいいことだと思う。広告のモデルに自分を投影して自信がもてるようになるから。でも、本来は投影しなくとも、ありのままの自分で自信がもてるのがベストなはず。「誰でもヒーローになれるし、みんなが主役だ」というのは良いことだが、企業がこぞってやっているのは安易にみえる。今後は、白人主催のビッグカンパニーがリードするのではなく、マイノリティ自身らが作品を創り出していく側になり始めたらいいと思う。(20代・俳優・日系アメリカ人)

(佐久間千明)

ポップの王様、MJ始まる

 キング・オブ・ポップと呼ばれたマイケル・ジャクソン(1958〜2009年)の半生を歌とダンスで描いたブロードウエーミュージカル「MJ・ザ・ミュージカル」が2月1日、ニール・サイモン劇場(西52丁目250番地)で初公演を迎えた。同日午後5時過ぎレッドカーペットで主演俳優のマイレス・フロストが報道陣の前に姿を現した。ストーリーは、1992年に行われた「デンジャラス・ツアー(Dangerous Tour)」の開始前まで遡り、その頃のマイケルに焦点を当てたもの。ステージでは、これまでにリリースされた266曲の中から選りすぐりの25曲をライブ形態で魅せる。

 ピューリッツァー賞を2度受賞したリン・ノッテージによる本を題材に、トニー賞受賞者であるクリストファー・ウィールドンが監督と振付を担当。「ビートイット」「ビリージーン」「スムースクリミナル」などの大ヒット曲や舞台用にアレンジされた曲も盛り込み、舞台上だけでなく舞台裏の顔も知ることができるファン待望のミュージカルだ。

(写真)初公演前にレッドカーペットを歩く主演俳優のマイレス・フロスト(1日午後5時、写真・三浦良一)

野田さんに外務大臣表彰

NY日系人会事務局長

 令和3年度外務大臣表彰受賞者である野田美知代ニューヨーク日系人会事務局長への表彰状の伝達式が1月27日夕、ニューヨーク総領事、山野内勘二大使公邸で行われた。外務大臣表彰は諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をするなかで、特に顕著な功績のあった個人及び団体の功績を称え、活動に対する一層の理解と支持を目的としている。(写真=山野内大使(右)から外務大臣表彰の表彰状を受け取る野田さん)

 野田氏は34年にわたりニューヨーク日系人会事務局に勤務し、歴代会長を支え、事務局長として同会の多様な活動を展開するために尽力した。在留邦人・日系人の声に熱心に耳を傾けて各種行事や支援活動に反映させ、ニューヨーク近郊における在留邦人、日系人の福祉向上、教育・文化活動の促進に尽力し、日米友好親善に貢献した。とりわけ、2005年の高齢者問題協議会設置やコロナ禍での高齢者・フロントワーカーへの日本食弁当配達の実施に中心的役割を果たした。

 野田さんは「JAAはボランティアの存在で成り立っている団体で、34年間働けたのもその支えがあったからです」と開口一番感謝の言葉を述べ、JAAの2つの役割について話した。「1987年に44丁目の6階で勤め始めた時に初めて目にしたのが8つほど棚に並んだ箱だった。それは身寄りのない無縁仏で、メモリアルデー前の納骨を待っているとのことだった。生活に困って訪ねてきた人をさっと食事に連れて行ったり衣服を提供したりするボランティアの姿を見て、地味な活動だがこれがコミュニティーに寄り添うことかと思った。もう一つは100年も続く団体なので多くの資料が残っており、1927年に編纂された『日本人発展史』を読んでNY日系人会を創設した高見豊彦医師の当時の苦労を知り、大切な歴史があるということを知った」という。

 34年の間には、初の女性会長のスーザン大沼さんの誕生でソフトタッチの女性らしいさまざまな企画を力強く推進したこと、JAA理事のスキ・ポーツさんの活躍でアジア系コミュニティーの一員としての日系社会の存在を高めたこと、森脇元会長に頼んで始まった相談室の開設や高齢者への無料ヘアカットなどプロフェッショナルたちの協力があったことを振り返った。

 また、式典後には、サプライズで、帰国が決まった山野内大使に対してNY日系人会から感謝の盾が贈られ、佐藤貢司会長から手渡された=写真下=。

 最後はジャズミュージシャンでJAA事務局スタッフでもある三上クニさんがNYの地名にちなんだジャズのメドレーをピアノで弾いて会場の招待客たちを楽しませた。