日本人女性に乳がん啓発活動

BCネットワーク代表

山本眞基子さん

 在米の日本人女性のための婦人科系疾患の啓発団体、BCネットワークを設立して今年17年になる。コロナ禍の過去2年間はオンラインなどでセミナーを行ってきたが、5月1日(日)に3年ぶりに対面式とオンラインのハイブリッド方式でニューヨーク日系人会で乳がんシンポジウムを開催する。参加・視聴は無料で、講師にテキサスMDアンダーソンがんセンターの上野直人医師がヒューストンからオンライン参加し、最新の検査による乳がん個別化治療について、またコロンビア大学病院産婦人科准教授の常盤真琴医師が、更年期と閉経と婦人科系がんについて解説する。当日は、山本さん自身も乳がん再発患者としての16年間と題して乳がんサバイバーストーリーを話す予定だ。

 乳がんにかかる年齢は、米国人の場合が50代後半からが多いのに対して、日本や韓国、中国など東アジア地域の女性が乳がんにかかるのは40代後半からと比較的若い年齢となっているという。また一生涯にかかる乳がんの確率、いわゆる罹患率は、ここ10年で米国で8人から9人に一人と言われて横ばいなのに対して日本人の場合は30人に一人だったのが10人から12人に一人と急増している。

 この数字に異変については、日本女性の乳がんに対する意識の高まりから、日本国内でのマンモグラムなどの検診率が高まり早期発見率が高まったとも言えないこともないが、山本さんは「日本はまだマンモグラム検診率が4割前後のため、 7割前後の欧米に比べると乳がんの早期発見の確率が低いと思います。 ぜひ毎年の検診に乳がん検診を入れていただきたいと思います。米国では、健康保険を保持している 50歳以上の女性は、無料で毎年のマンモグラムが受けることが可能です」と話す。

 米国では、乳がんについては誰もがかかり得る病気との認識で、大概の民間保険にも検診費用が無料で受けられるよう組み込まれている上、いざ、乳がんにかかってしまった場合の治療も日本のように長期の入院などもないため、極端な話、医療費を負担できる経済的な力がない場合でも、救済の方法、セーフティネットが充実しているのは米国の方だという。

 「これをしていれば、これを食べてれば安全ということはないが、健康な体と免疫力があった方が、治療の幅も広がるので、健康な体と体力作りは大切」と話す。(三浦良一記者、写真は本人提供)

乳がんシンポジウム5月1日に開催

 BCネットワークは5月1日(日)午後1時から4時45分(米東部時間)まで、NY日系人会(西45丁目49番地11階)で「日本人乳がんシンポジウム@イーストコースト・サウスを開催する。講師は上野直人医師(テキサスMDアンダーソンがんセンター)「最新の検査による乳がん個別化治療」、常盤真琴医師(コロンビア大学病院産婦人科准教授)「更年期と閉経と婦人科系がん」。参加・視聴無料。講師は会場で講演。申し込みはBCネットワークホームページから。

http://bcnetwork.org

編集後記 3月26日号

【編集後記】
 みなさん、こんにちは。ロシア軍がウクライナに侵攻して明日24日で丁度1か月。この4週間でウクライナ国民約350万人以上が国外に脱出し、国内を合わせると1000万人が家を出て避難したという。ウクライナ国民の犠牲者数は、国連高等弁務官事務所発表で子供78人を含む977人としているが、ウクライナ政府は東部マリウポリだけで3000人の市民が爆撃と攻撃で死亡したと発表、その全容は不明だ。今後ますます犠牲者が増えるものとみられる。ゼレンスキー大統領が本日、日本の国会で演説し、更なるロシアへの経済規制強化とその継続を呼びかけた。日本にできるのは人道支援と経済制裁のみと理解して軍事支援の要求はなかった。一方ウクライナでは、一般市民や大学生たちが、即席の軍事教練を受けて銃の使い方などを学んでいる。昨日までコンピュータ会社の会社員だった人も兵士予備役になっている。現代社会にこんなことが現実に起きるとは思っていなかったはずだ。こんな中、ニューヨーク州ナッソー郡のブルース・ブレイクマン郡執行官(郡長)が18日、ウクライナ政府に460丁のライフル銃を供与すると発表した。郡内の住民から提供された60丁に、ウクライナと取引のある銃の製造会社ケルテック(本部フロリダ)から寄付された400丁を加えた。ケルテックを通じて送られるもので連邦政府の承認は取れているという。近くウクライナ国防省への輸送手続きに入る。ウクライナ出身の曽祖父母をもつブレイクマン郡長は今月初旬、住民に銃の寄付を呼びかけていた。3月4日からフランクリン・スクエアにある銃砲店SPファイアアームズで寄付を受け付け、60丁が集まった。米国市民による銃の寄付は、米国でも現時点では唯一とみられる。ロシアは、敵にやられる前に相手を退治するための偽装工作「偽旗作戦」に出て、生物・化学兵器を使用する危険が高まっているという。ロシア大統領報道官はCNNの取材に答え、ロシアの存亡が危ぶまれる場合は、核兵器の使用を排除しない(使う)と明言した。なんということだ。今後、ロシアが我田引水で、自分に都合のいい理由をつけて西側諸国にどんないちゃもんをつけてくるのかわかったものではない。岸田首相には、被爆地広島出身の首相として、核をちらつかせた戦争の末路の悲劇をNATOの会合でしかと各国の元首に伝えてきて欲しい。化け猫の首に鈴は付けたが、どうするのか。「軍事作戦しか他に方法がなかった」と述べたプーチン大統領の言葉は、第二次世界大戦前夜にも聞かれたセリフだったのではないか。お互いの国が「大本営発表」でしかニュースを知らされない現状だったとしても、過去と違って今の時代にはSNSがある。いろんな手を尽くせば最後は、勧善懲悪の筋書きであることを信じるしかない。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年3月26日号)

(1)アジア女性に正義を ヘイトクライム抗議

(2)沖縄伝統舞踊と音楽 ニューヨーカーを魅了

(3)ウクライナ政府に銃供与 ナッソー郡が460丁

(4)本社装い振り込め詐欺 NY日系企業狙われる

(5)生き生きEATS  チキン南蛮と和風タルタル

(6)ブルックリン発 美味しいドーナツ

(7)自由に自然に自分の俳句 俳人 太田風子さん

(8)JS棟方志功の版画展 盛況裏に終了

(9)ランの万華鏡 NY植物園で開催中

(10)おにぎりの魅力を紹介 日本産米の認知度向上

アジア女性に正義を

ヘイトクライム差別
声を上げて止めて

 アジア系アメリカ人へのヘイトクライムが深刻化している。昨年1年間に5人に1人がヘイトが原因の事象に巻き込まれたという数字があるほどだ。

 アトランタで8人が殺害された事件から1年となる16日、「アジア系女性に正義を」と題された集会が全米12都市を結んで同時開催された。主催したのはスタンド・ウィズ・アジアン・アメリカンなど複数の団体。ニューヨークではタイムズスクエアに約250人が集まり「アジア系へのヘイトをやめろ」などのプラカードを掲げた。全員女性で構成された登壇者の1人でアジアン・アメリカン・フェデレーションのジョアン・ユー氏は「私たちアジア系もアメリカ人。安全に暮らせる権利がある」と訴え、キャシー・ホークル州知事は「ニューヨーカーが一致団結してアジア系へのヘイトを終わらせよう」と宣言した=写真右=。

 アジア系の中でも女性は74%が差別を経験している。そのため多くが公共交通機関を避けたり、隠れるようにして不安の中で生活していると涙ながらに語ったのは、ベストセラー小説『パチンコ』の著書ミン・ジン・リー氏。「憎まれるのは自分たちのせいと考えてはいけない」と訴えた。登壇した3人のヘイトクライム犠牲者の1人エスター・リー氏は「沈黙を破ろう、私たちは弱くない」と力強く語った。

 スピーチと共に音楽の演奏も行われた。ニューヨーク在住のビッグバンド作曲家で指揮者の宮嶋みぎわさんは、この日のために書き下ろした曲を披露、和太鼓やバイオリン、サックス、トランペットの音色と共に観客の歌声が1つになってタイムズスクエアの夜空に響いた=写真左=。演奏を終えたみぎわさんは「日本以外のアジア系の人たちとここまで深く本当のこころの繋りを持てたと感じたのは今日が初めて。歴史的な日になるだろう」とイベントを振り返った。聴衆の1人中国系アメリカ人の大学院生スザンナさんは「アジア系にとって今のニューヨークは恐ろしい場所。変えるために団結したい」と語り、その友達のキャスさんは「 アジア系ではないけれどアライ(同志)としてサポートしたい」と意気込んだ。     

 主催者の代表としてインタビューに応じたフランクリン・シェン氏は「全米のアジア系が結集したのは快挙、しかしヘイトクライム犠牲者が声を出すのは簡単ではなく問題も山積みだが、確実な変化を起こしていきたい」とコメントした。

 イベントの模様はストリーミング(https://youtu.be/nYKDmKAelXg?t=24633)で見ることができる。(シェリーめぐみ、写真・植山慎太郎)

(写真) 「声をあげよう」タイムズスクエアでアジア系女性へのヘイトクライムに抗議する集会

沖縄伝統舞踊と音楽

NY公演について語る嘉数監督

ニューヨーカーを魅了
ジャパン・ソサエティーで公演

 沖縄返還50周年記念公演「時を超えた波音 沖縄の伝統舞踊と音楽」が18、19の両日、ジャパン・ソサエティー(JS)の劇場で開催された。前半では琉球王国(1429〜1879年)後期から300年にわたって継承されてきた宮廷の歌舞劇「組踊(くみおどり)」=写真上=演目から名場面集を、後半は明治以降に生まれた民衆の雑おどり(ぞうおどり)や創作舞踊からなる演目を、国立劇場おきなわ芸術監督の嘉数道彦(かかず・みちひこ)氏(42)の監修・構成で、ライブの演奏家を交えて上演した。

 ステージは、1時間40分をたっぷりと使い踊り手5人と音楽家6人が、沖縄の音楽、舞い、パフォーマンスでニューヨーカーを魅了した。両日ともに265席が満席となった。(写真上:厳かで煌びやかな舞い Photo Maria Baranova)

 今回の公演はジャパン・ソサエティーがグリーンビル(サウスカロライナ州)、ワシントンDC、イーストン(ペンシルベニア州)、シカゴなど5都市の巡回ツアーを主導した。

 自らも出演した芸術監督の嘉数さんは「とても真剣に見てもらって嬉しかった。言葉の方言がうまく伝わるか心配だったけれど字幕があったのでうまく伝わったようだ」と話す。

 観客のスーザン・マコーマックさんは「パワーとエレガンスのバランスが絶妙なパフォーマンスでした。ダンサーの動きも、ミュージシャンの音楽も、ひとつひとつが見事に表現されていました。それぞれの曲を通して、組踊や象踊りのスタイルを学ぶだけでなく、琉球王国と沖縄の痛ましい歴史と、その歴史がどのように芸能を形成したかを垣間見ることができました。沖縄のハーフとして、誇らしい気持ちでいっぱいです」と語っていた。

 ジャパン・ソサエティーでの公演は2000年、2004、2015年に次いで4度目だが、沖縄芝居という海外には出たことのない演目が今回上演された=写真下=。能に狂言があるように庶民の笑いを生かした舞台に会場から歓声が上がった。「アメリカ人の人たちが一緒に盛り上げ一緒に楽しんでもらえた実感を得られた」と嘉数監督が話すとJSの芸術監督の塩谷陽子さんも「パフォーミングアーツは、演者がいいと、いいものを見せてもらったという気持ちになる。村人の楽しい生活をミュージカル仕立てにした卓越した芸だった」と絶賛した。

大好評だった庶民の生活を描いた沖縄芝居 Photo Maria Baranova

 嘉数監督は「沖縄芸能は、海外の影響を受けながら形成された歴史もあり、できるだけ良いものをできるだけ良い形で県外の人に伝えていきたい。沖縄復帰以降、県立芸術大学、国立劇場ができて組踊を学ぶことが広くできるようになった恵まれた世代に私たちはいる。今回はそんな同世代の力をつけてきているメンバーで来ることができている。皆、沖縄の芸能に対して強い情熱を持っているので、残る舞台も愛情を持って演じあげることができれば観客にも伝わるのではないかと思います」と話した。(三浦)

ウクライナ政府に銃供与

ナッソー郡がライフル460丁

米国市民が寄付

 ナッソー郡のブルース・ブレイクマン郡執行官(郡長)は18日、ロシアの侵攻を受けているウクライナ政府に460丁のライフル銃を供与すると発表した。郡内の住民から提供された60丁に、ウクライナと取引のある銃の製造会社ケルテック(本部フロリダ)から寄付された400丁を加えた。ケルテックを通じて送られるもので連邦政府の承認は取れているという。近くウクライナ国防省への輸送手続きに入る。

 ウクライナ出身の曽祖父母をもつブレイクマン郡長は今月初旬、住民に銃の寄付を呼びかけていた。3月4日よりフランクリン・スクエアにある銃器店SPファイアアームズで受付をし、60丁が集まった。市民による銃の寄付は米国でも現時点では唯一とみられる。

 ニューヨーク州は全米でもっともウクライナ系住民が多い州とされる。その数約15万人で、マンハッタンのイーストビレッジとブルックリンのブライトンビーチに集中しているが、クイーンズに隣接するナッソー郡にも多いという。

(写真)寄付されたライフル Nassau County Executive Bruce Blakeman

本社装い振り込め詐欺

日系企業狙われる
NY総領事館が注意呼びかけ

 在ニューヨーク日本国総領事館は、日系企業に対する詐欺と思われる電話に関する注意喚起を配信した。詳細は次の通り。

 当地日系企業に対し、同社(本社)の社長を名乗る人物から財務担当者の名前を尋ねる電話があり、対応した幹部職員が社長の声と違う旨指摘したところ、電話が突然切れたとの情報提供があった。被害はなかったが、流暢な日本語を話し電話番号は非通知だったという。過去にも、当地及び欧州所在の日系企業に対する類似の振り込め詐欺が疑われる電話やメールが多数報告されており、組織的な犯行の可能性がある。今後、同様の手口で振り込め詐欺の電話を試みる可能性があるため、企業関係者はこのような不審な電話等に対して、電話口の相手の指示に従って直ぐに情報を伝えたりすることなく、一旦電話を切って幹部に報告し指示を仰ぐなど、慎重な対応に徹し被害に遭わないよう注意を促した。

詳細はウェブサイト「日系企業に対する振り込め詐欺電話についての注意喚起」

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/oshirase/2019-12-24.html

チキン南蛮と和風タルタルソース

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (23)

 マンハッタンのチェルシーにある居酒屋&寿司レストランNorikoH。300席ある店内は日本でもお馴染みの居酒屋メニューのほか、バーカウンターでは焼酎を使用したカクテルなどを提供。別室では日本直送の鮮魚を使ったお任せコースを堪能することができる。コミュニティをサポートしてきた、チキン南蛮やハンバーグなど懐かしのお弁当は、手頃な価格で満足する味を楽しむことができると評判だ。今回は、NorikoHでシェフとして腕をふるう礒田直人さんに、人気の2品をご自宅で簡単に作れるレシピでご紹介いただきます。

■チキン南蛮

 日本では宮崎県の郷土料理として欠かすことができない「チキン南蛮」。宮崎県に留まらず、日本全国へ普及、今ではニューヨークでも欠かすことができない人気料理。サクッと揚げた鶏肉に甘酢タレとタルタルソースをかけたチキン南蛮は、ご飯もお酒も進む人気の1品。

【作り方】

①鶏もも肉をフォークで両面穴をあける

②ジップロックに鶏肉、ニンニク、生姜、酒を入れ冷蔵庫で15分ほど寝かし下味をつける

※鶏肉を冷蔵庫で下味をつけている間に、甘酢タレ作り

③ケチャップ、調理酒、醤油、みりん、酢、砂糖、本だしをフライパンで温めたところに、水溶き片栗粉少々入れ、とろみをつけて完成。

④冷蔵庫から取り出した鶏肉の両面に軽く塩胡椒、片栗粉をつける

⑤家庭用のフライパンに鶏肉の3分の1位が浸かる量の油を入れ、油を温める。

⑥下味をつけた鶏肉を入れ、両面を中火で約10分揚げ焼きにする

⑦取り出した鶏肉を食べやすい大きさに切り、お皿に盛り付け、甘酢タレとタルタルソースをお好みの量をかけて完成。

材料

鶏もも 肉1枚

片栗粉 少々

すりおろしニンニク

大さじ1/2

すりおろし生姜

大さじ1/2

お酒 適量

ジップロック

甘酢だれ材料

ケチャップ 大さじ1

調理酒 大さじ2

醤油 大さじ2

みりん 大さじ2

酢 大さじ2

砂糖 大さじ1

本だし 小さじ1

水溶き片栗粉 少々


■たくあんを使った和風タルタルソース

 日本でタルタルソースが発売された昭和40年代。日本人には馴染みのなかったピクルスの代わりに、日本  人の味覚に合わせて、たくあん等の漬物で作られていたタルタルソース。

 チキン南蛮だけでなく、魚のフライ、サラダやサンドイッチなど、様々な料理でお召し上がりいただけます。

【作り方】

①たくあん、万能ネギ、玉ねぎをみじん切りにする

②ボールにゆで卵2個を入れ、フォークでつぶす

③たくあん、万能ネギ、玉ねぎ、マヨネーズを入れ、黒胡椒で味を整えて完成。

材料 4人分

ゆで卵 2個

万能ネギ 少々

たくあん 4切れ

玉ねぎ 1/4個

マヨネーズ 大さじ3

黒胡椒 適量


シェフ紹介:礒田直人

 寿司職人の父を持ち、Jewel Bakoにて修行を積んだ後、Tori bei、Naruto Ramenでのマネージャー経験を経て、NorikoH にて日本人唯一のシェフを務める。

レストラン情報:NorikoH

43 W 24th St

New York, NY 10010

(646) 230-8191

www.norikoh.com/

自由に自然に自分の俳句を

俳人

太田 風子さん

 本名は太田房子さん。俳句仲間の間では「風子さん」と親しみをこめて俳号で呼びあう、ニューヨークの俳壇を開拓し支えてこられた大先輩でもある。

 風子さんは先に来米していたご主人に続き1967年に来米、注文家具、インテリア改装などを請負う「たんすや」を始めた。その後1990年から、倉庫街の雑多な空気が残るソーホーでアートギャラリー(Cast Iron Gallery)を経営していた。2人の娘さんたちも結婚し、孫たちも生まれ、家族が確実にアメリカに根付いていくのを見届けたのち2012年に帰国。今は日本とアメリカ、家族それぞれ忙しく過ごされている。風子さんは俳句三昧の毎日だそうだ。

 風子さんが俳句を始めたきっかけは、「たんすや」で一緒に働いていた美術家の木村玲二さんに「こんなのがあるけど、やらない?」と俳句会「方舟」に誘われたことだった。「中学生以来だなぁ」と何気なく始めて、気が付けば40年の経歴。ニューヨークでは気のおけない仲間たちと、句会ならぬ「食う会」とワイワイ冗談を言い合いながら楽しんだ。

 帰国してからもますます俳句の活躍の場をひろげ、今では俳句結社「三河」の同人であり、「両町句会」「鹿垣句会」「ペンキ句会」「名古屋句会」、ニューヨークでは「星の島句会」「ハコ句会」「NY方舟」など10もの句会に参加し、「未来吟行句会」「十六夜句会」の2つの句会の世話人として仕切る傍ら、「ホトトギス」を代表する稲畑汀子さんが審査員を務められた俳句賞に入賞するなど、多くの賞を受賞した。

 今新年は「渓谷の風に錆ゆく冬紅葉 太田風子」の句が、第五回山里俳句コンテストの優秀賞(岡崎市教育委員会賞)に選ばれた。17文字の中に、冬のひなびた風景に紅葉が揺れる様が目に浮かぶ。

 風子さんは、自由に自分の言葉で俳句を作りたいと言う。それは厳しいまでに基本をしっかりと身につけたからこそできる、しなやかさであり、おおらかさであろう。風子さんの人となりに触れたことのある人なら、直ちに納得できる。

 「ニューヨークにいたころは、仕事や家庭のことや趣味のタップダンスなどで忙しくしていたけれど、今は俳句に専念しています。日本各地やニューヨークとも繋がるネット句会だけではなく、皆で集まって句会も開催し、『太田サロン』などと呼ばれています」とにこやかにおっしゃる。そのエネルギッシュなバイタリティーが、人を惹きつけ、頼りにされる源だろう。(フェイダーちえ)

ブルックリンのおいしいドーナツいかが?

 バレンタインにはピンク色、セントパトリックスデーにはグリーンなど、季節の行事に合わせた商品を発表し、大人も子供も美味しく楽しく食べられるアメリカのドーナツ。今回はブルックリンにある話題のドーナツショップ4店を紹介。


Peter Pan Donut & Pastry Shop

(727 Manhattan Ave ) 

 グリーンポイントにある60年以上も続く家族経営のドーナツショップ。店内は飾り気がないが、昔ながらの気さくな雰囲気があり、カウンターでコーヒーと大きなドーナツがリーズナブルに楽しめる。ドーナツはどれでも1ドル50セント。平日は早朝(午前4時30分)からオープンし、焼きたてのベーグルサンドで近隣住人の朝食を担っている。

http://peterpandonuts.com


Brandon’s Donuts

(449 Court St )

 「ブランドンズ・ドーナツ」はブランドンの父マットが24年前にスタートしたキャロルガーデンで人気の店。バニラ・チョコレート・レッドベルベットなどの4種の生地と、ブルーベリー・レモンなど8種類のアイシング、ココナツフレーク・チョコレートスプリンクルなど10種のトッピングを選んで注文するカスタムドーナツが特徴の店。 

https://www.brandonsdonuts.com


Dun-Well Doughnuts

(222 Montrose Ave)

 地元の食材を使って地元企業を支援し、動物由来成分を含まずに作ったドーナツが食べられるイースト・ウィリアムズバーグにある店。パンデミック中にはブルックリン区内の病院に2000個以上のドーナツを届けてコミュニティに貢献した。提携するブルックリン・ロースティングカンパニーのオーガニックコーヒーを提供している。

https://www.dunwelldoughnuts.com/


The Dough Club

(294 Bedford Ave)

 2019年にウィリアムズバーグ・サウスにオープンした、軽くてふわふわの日本のもちドーナツがメインの店。可愛い耳がついたネコ型や目のついたカエル型も登場して写真映えもするドーナツ。常に新しいフレーバーが登場するので毎回行くたびに違う味と出会える。抹茶のパンケーキやワッフルも人気商品。

https://www.thedoughclub.com/

JS棟方志功の版画展、盛況裏に終了

 ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーで昨年12月からスタートしていた木板画の世界的巨匠、棟方志功(1903〜1975)の100点に及ぶ作品を紹介する展覧会「棟方志功 板極道(ばんごくどう)」が20日、盛況裏に終了した。

 米国最大の棟方コレクションであるJSの貴重な所蔵品をもとに構成された同展は、木板画だけでなく書道や墨絵、水彩画、リトグラフや陶芸など幅広く展示。東海道各所の風景を描いたカラーとモノクロの61点の板画作品「東海道棟方板画」(64年)の全作品や、59年「プリント・アーティスト・プログラム」フェローとして初めて来米した棟方がNY滞在中に制作した作品も展示し、20世紀を代表する想像力豊かな芸術家である棟方の魅力を紹介した。期間中、女性や菩薩の姿を数多く描いた素朴で力強い作品は多くの来場者の足を止め、魅了した。(高田)