なにげない日常にある本質的な瞬間捉える

織晴美、ナウヒアで

 ニューヨーク在住の日本人クリエイターをサポートするソーホーのギャラリーNowHere(ナウヒア:ウースター通り40番地)は23日(木)から6月30日(日)まで、ブルックリンを拠点に活動するアーティスト織晴美さんの2回目となる展覧会「I am Here」を開催する。詩人、まど・みちおの詩「ぼくがここに」からインスピレーションを得たシリーズは、工事現場などで見かけるオレンジ色のメッシュを用い制作され、何気ない日常にある本質的な瞬間を捉えている。

 入場無料。オープニング・レセプションは23日(木)午後6時から8時まで、参加希望者はhttps://www.iamhere.eventbrite.comから申し込む。詳細はウェブサイトhttps://www.nowhere-nyc.com/を参照。 

編集後記

【編集後記】



みなさん、こんにちは。 今週末の11日(土)午後1時、マンハッタンのセントラルパークウエスト81丁目からスタートする第3回ジャパンパレードは、100団体が67丁目まで14ブロックを南下してフロートや行進で練り歩くニューヨークの日系社会をあげての盛大なイベントとなりそうです。土曜日の天気予報も晴れで、多くのニューヨーク市民が沿道に繰り出しそうです。参加団体の行進順番や出発時刻は本日8日、水曜日現在まだ報道関係者にも公表されていませんが、パレード前日の10日(金)までには参加団体に通知され、公式ウエブサイト(https://www.japanparadenyc.org/)にも行進の順番などが公開されるので、パレードを見に行く人は事前のチェックができますね=今週号5面に記事=。日本から招待する今年の目玉ゲストとなる「鬼滅の刃」のパレードスタート時刻もまだ公表されていなくて、確認も取れなかったので新聞には書けませんでしたが、関係者によると午後2時20分のスタートで調整が進められているようです。ただし、諸般の事情で前後に動く可能性も大いにあり、流動的ですので外れたらごめんなさい。裏を取れないことは紙面では書けませんが、ここでは編集後記として聞き流してくださいね。土曜日は、ニューヨーク地区で約1000人近い日本人の子どもたちが補習授業校に通っているため、事務局では今年はその子どもや保護者もパレードを少しでも楽しんでもらえるようメインゲストのスタートを後ろにずらす調整作業をギリギリまで行っているようです。ニューヨーク補習授業校の場合、幼初等部の授業が終わるのが12時50分。午後まで授業がある中高等部は間に合いませんが、幼初等部は、ウエストチェスター、クイーンズ、ニュージャージーともに下校から1時間程度で会場メインスタンド近くまで来ることができれば、上記のスタート時間が当たっていれば、鬼滅の刃をなんとか見ることができそうです。会場は相当の混雑が予想されます。お子様連れは、子供が迷子にならないよう手をつないでご注意ください。私は一日中、カメラマンをしてます。パレードの様子は、来週号でお届けします。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年5月11日号)

(1)渋滞税NYで6月30日から

(2)巨大なHOTDOG 毎日正午に紙吹雪

(3)ハリヤマバレエ来年開講20周年 9月生の募集開始

(4)ガザ攻撃反対の学生運動をどう考えるか?

(5)今週末はジャパンパレード 日系100団体が行進

(6)ブリキの兵隊、再び 視座点描

(7)出版は家内制手工業のワン&オンリーたれ 早川書房 早川浩社長

(8)あなたも審査員に! 日本とNYを結ぶ美と平和のイベント

(9)明日から使える腰痛改善セルフケア 一万田彬志氏が解説

(10)アメリカが壊れる時 Civil War  シネマ映写室

渋滞税NYで6月30日から

マンハッタンの60丁目以南に入る車両に課金

 メトロポリタン交通局(MTA)のジャンノ・リーバー議長は5月3日、「渋滞税」の徴収開始を6月30日から開始したいと述べた。料金徴収システムであるEZパスと車のナンバープレートを撮影できるカメラはすでに数十か所に設置済みだ。ただし、ニュージャージー州に与える影響を考慮していなかったとして同州から訴えられており、係争中であることから6月30日に開始できるかはまだ不透明となっている。

 渋滞税はマンハッタンの60丁目以南に入る車両に1日1回徴収される。料金はピーク(平日午前5時から午後9時、土日午前9時から午後9時)とそれ以外のオフピークの時間帯では違う。一般乗用車はピークが15ドルでオフピークは3ドル75セント。オートバイは7ドル50セントでオフが1ドル75セント、トラック・バスは24ドル〜36ドルで、オフは6ドル〜9ドル。ウエストサイド・ハイウエー、FDRドライブ、バッテリーパーク地下道を通過する車には徴収されない。またリンカーントンネルなどトンネルを使用して入ると、乗用車であれば5ドル、オートバイで2ドル50セント、小型のトラック・貸切バスで12ドル、大型トラック・観光バスで20ドルがクロスクレジットとなる割引措置がある(いずれも最大で。夜間を除く)。マンハッタン居住者、低所得者、障害者などは居住者向け低所得税額控除および低所得者割引が申請できる。渋滞税が適用されないのは緊急車両、障害者輸送車両、市教育省と契約しているスクールバス、政府特殊車両など。

 都市交通改善を目的にする市民団体ライダーズ・アライアンスのダニー・パールスタイン広報担当は「裁判所による土壇場の介入がなければ6月30日には渋滞料金設定が現実となるだろう」と述べた。「すべてのニューヨーカー、通勤者、訪問者にとって有利であり、より良い公共交通機関、よりきれいな空気、より自由な交通をもたらす」と歓迎している。MTAは渋滞税の導入により年間10億ドルの収入を想定している。これを150億ドル相当の債券の販売に充てて資金を調達し、システム全体の信号のアップグレード、新規車両購入、地下鉄駅利用の拡大を図る計画だ。

NY市内の鉄道定期券渋滞税で10%割引

 都市交通局(MTA)は4月30日、NY市内の利用に限り、ロングアイランド鉄道(LIRR)とメトロノース鉄道の1か月定期券の価格を10%割引にする計画を可決した。

 6月末の渋滞税執行に伴い、地下鉄アクセスが不便な市民に鉄道機関の利用を促すことを目的とした同「シティ・チケット」は、LI鉄道はゾーン1内及びゾーン1と3間、メトロノース鉄道はブロンクス〜マンハッタンが対象で、片道料金はオフピークが5ドル、ピーク時は7ドル。1か月定期券の料金は、LI鉄道のジャマイカ〜ペンシルベニア駅は20ドル以上減の198ドル、メトロノース鉄道のグランドセントラル駅〜ブロンクス北部は約20ドル減の180ドルとなる。6月25日に発売で、7月1日から使用できる。

 同プログラムはMTAにとって400万ドルの収入減となるが、同局のアウターボロー(マンハッタン以外の行政区)の交通会計で賄うという。MTAのジャイ・パテル最高財務責任者は「NY市内のLIRRとメトロノース鉄道の1か月定期券の購入数は、年間約7万件にのぼる。毎年、学割定期券を購入する約1万2000人の学生にとっても有利になる」と話している。地下鉄を運営するNYトランジット公社(NYCTA)も、今年に入ってから週間の運行本数を1200本に増加し、6月にはさらにB、D、M、J、3、5系統の本数も追加する。同局は、年収5万ドル以下の家庭や障害者を対象にした割引や特例制度も制定している。そのほか渋滞税に伴うMTAの料金や対策に関する詳細はhttps://new.mta.info/を参照する。

巨大なHOTDOGタイムズスクエアに出現

毎日正午に紙吹雪舞う

17日に早食いコンテスト

 たっぷりのマスタードを塗った長さ約20メートルのホットドッグがタイムズスクエアに登場した。「ホットドッグ・イン・ザ・シティー」と題したこのアート作品は、ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、ジェン・キャトロンとポール・アウトローによるもの。毎日正午12時になると油圧装置が作動し、斜めに傾いたホットドッグに内蔵されたキャノン砲から紙吹雪が舞い上がる。この紙吹雪は、大晦日や故郷のパレード、政治集会や性別発表パーティーなど、アメリカの典型的なお祝いを遊び心たっぷりに表現したものだという。

 また、作品公開を記念したさまざまなプログラムも開催中。17日(金)正午からは同作品の前で「ホットドッグ早食いコンテスト」が行われ、この日の上位入賞者は7月4日の独立記念日にコニーアイランドで開催される「ネイサンズ・フェイマス・国際ホットドッグ早食いコンテスト」に出場できる。作品展示は6月13日まで。詳細はhttp://arts.timessquarenyc.orgを参照する。

    (写真・笹野大輔)

ハリヤマバレエ、来年開講20周年

9月生の募集を開始

 来年開講から20周年を迎えるニューヨークダンスアーティストリー・ハリヤマバレエ(針山真実主宰)では2024年9月よりこれまで同様の通常プログラムとジュニア集中プログラムを開設する。

 ジュニア集中プログラムは、バレエをもっと追求し、更なる上達を目指したい生徒、プロになることも視野に入れ、深く熱心にバレエを学びたい9歳以上の子供たちを募集している。

 年齢に応じて週に4回以上のバレエクラスのほか、コンテンポラリークラス、個人レッスンなどを受け上達を目指し、集中プログラムは、オーディション制で意欲と技術が認められる場合は授業料のスカラシップも受けられる。問い合わせはEメールContact@nydanceart.com針山さん。

ガザ攻撃反対の学生運動をどう考えるか?

 マンハッタンの北、ハーレムに隣接しているコロンビア大学のキャンパスは、かねてよりガザ問題における両派が対立する中で、学生のデモが激化していた。イスラエルのガザ攻撃の激化、とりわけラファ攻撃が逼迫する中で攻撃への反対派の活動が活発化。これに対抗して、大学側はキャンパスを占拠した学生を処分するとともに、警察力を導入し多くの逮捕者を出した。

 このニュースであるが、同大学のOBである筆者には特に驚きはなかった。大学院のMBAコースを除外すれば、姉妹校である女子大のバーナード大学を含めて、この大学にはリベラルな学風が根強いからである。昨年、日本でヒットしたドラマ「VIVANT」で堺雅人さんの演じた主人公は、コロンビアに留学していたという設定になっていた。ドラマの中では、911テロに触発された多くの学友が兵役に志願したのに刺激を受けた、というエピソードがある。だが、この挿話は本学の学風を考えると違和感がある。反対に、今回の活発なデモの動きには『いちご白書』以来の伝統の延長を感じるのは事実だ。

 そうは言っても、気になる点も多い。まず学生たちの扮装であるが、パレスチナ国旗を掲げ、白黒チェックのバンダナを身にまとうのは、やや行き過ぎと思う。少なくとも20世紀後半において、PLOやPFLPが武闘路線を取っていた時代を想起させるルックスであり、暴力の記憶が纏わりついているのは否定できないからだ。確かに3万4000という民間人犠牲に憤慨し、即時停戦を求めての行動には一理あるが、これでは対立を煽っていると言われても反論は難しい。

 一方で、イスラエル支持の側が、反戦運動の側を「反ユダヤ(アンチ・セミティズム)」という言い方で決めつけるのも困ったものだ。この言葉は、20世紀前半まで欧州とロシアにあったユダヤ系への根深い差別を意味する言葉である。従って、イスラエル建国に伴うパレスチナの地を巡る争いにこれを適用するのは、誤解を招くし卑怯である。言葉の拡大解釈は続いており、「即時停戦」を言っただけでそれが反イスラエルのヘイトスピーチだという言論もまかり通っている。ハマスが拘束している人質の生命を軽視しているからヘイトだというのだが、そこにはイスラエルが「このような事態」を予測して拘束している千人を超えるパレスチナ政治犯という「人質」の存在が無視されている。いずれにしても、舌戦が劣化しつつ激化しているのは問題だ。

 更に問題なのは、今回の対立劇を政治利用する動きである。コロンビアでもそうだが学園の自治を侵犯するかのような、政治の介入がひどすぎる。例えば、同じニューヨーク州の選出である共和党のエリス・ステファニク議員などは、反戦運動への取り締まりが甘いとして、各大学の学長人事に介入し続けている。保守系の有権者にアピールしようという意図が露骨であり、それが更に対立を煽る結果となっている。同じく共和党のジョンソン下院議長も同様だ。問題の渦中であるコロンビア大学のキャンパスに乗り込んでいって、学長の取り締まり不行き届きを責め立てるなど、完全に学問の自由への介入である。日本で言えば、戦前の平賀粛学に際して、東大の河合栄治郎が追放された事件並みの暴虐だ。

 この問題だが、解決の道筋を描くことは可能だ。ハマスが監禁している昨年10月に誘拐した人質を全面的に解放するのは当然だ。そして、イスラエルが確保している千人を超えるパレスチナ人の政治犯を解放するのも当然であろう。その上でハマスの武闘路線を指導して、昨年10月の奇襲テロに関与した人物、あるいはイスラエルにおいて民間人殺戮を承知でハマス掃討を遂行した人物は、双方ともに国連が主導して特別法廷で裁かれねばならない。その上でガザの自治には武闘路線を放棄したグループを据えて、国際的な枠組みで復興支援を行うことも必要だ。

 残念ながら、問題の当事国であるイスラエルと米国にはこのような「当然の解決案」を自分たちで選択する能力はない。そのことを前提に、日本は欧州と連携し国連を支えて動くべきだろう。日本の外交は、この問題に関してはイスラエルとパレスチナの双方を仲介できるだけの信用は確保しているはずだ。

 いずれにしても、今回の各大学における動きは、アメリカ社会が「911テロ」を完全に過去のものにしたことを示している。言い方を変えるのならば、「911テロ」を知らない世代が大学生になっているという時の流れを示している。そのような新たな世代が社会の主な舞台に上がりつつあるのだ。そして、チャーチルが言ったという(諸説あるが)「20代でリベラルでなければ情熱が足りない。40代で保守でなければ思慮が足りない」という格言を信じるのであれば、現在、やや過剰であるとはいえ、このような情熱を持ち、20年後には思慮を持つであろう新しい世代が、再び分厚い人口の層として登場しているのは注目に値する。いずれにしても、ドーハで行われたという和平交渉(なぜかアメリカでは大きく報道されていない)の行方を見守りたい。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

今週末はジャパンパレード

日系100団体が行進

5月11日セントラルパークウエストで午後1時から
行進予定は前日までにサイトで公開

 今週末の11日(土)午後1時、マンハッタンのセントラルパークウエスト81丁目からスタートする第3回ジャパンパレードは、100団体が67丁目まで14ブロックを南下してフロートや行進で練り歩くニューヨークの日系社会をあげての盛大なイベントとなりそうだ。天気予報も晴れで多くのニューヨーク市民が沿道を埋めるものと予想される。(写真上:民舞座の華やかな踊り(昨年のパレードで、本紙撮影))

 参加団体の行進順番や出発時刻は7日現在まだ事務局で調整中のため公表されていないが、前日の10日までには参加団体に通知され、公式ウエブサイト(https://www.japanparadenyc.org/)にも公開されるので、パレードを見に行く人は事前のチェックが奨励される。

ⒸKoyoharu Gotoge/SHUEISHA ⒸKIMETSU NO YAIBA the stage committee

 日本から招待する今年の目玉ゲストとなる「鬼滅の刃」のパレードスタート時刻もまだ公表されていないが、関係者による調整が進められている。ただし、諸般の事情で前後に動く可能性も大いにあり流動的だ。スタート地点から来賓など招待客が座るメインスタンドのある70丁目まで来るのに20分から30分程度はかかり、スタートが後ろになればなるほど、時間が押して出発時刻が遅くなるため、中弛みを避けるためにメインをそれ以上後ろにずらすことはないとみられる。当日の天候は晴れだが、第一回の時は終盤に大雨に見舞われ観客が帰ってしまうなどのハプニングがあったこともあり、目玉行進は無事になるべく早く終わらせたいという主催者側の思惑もある。ただ、土曜日は、ニューヨーク地区で約1000人近い日本人の子どもたちが補習授業校に通っているため、事務局では今年はその子どもや保護者もパレードを少しでも楽しんでもらえるようメインゲストのスタートを後ろにずらす調整をギリギリまで行っている状態だ。ニューヨーク補習授業校の場合、幼初等部の授業が終わるのが12時50分。午後まで授業がある中高等部は間に合わないが、幼初等部は、ウエストチェスター、クイーンズ、ニュージャージーともに下校から1時間程度で会場メインスタンド近くまで来ることができれば、鬼滅の刃をなんとか見ることができそうだ。当日は72丁目のセントラルパークウエストとコロンバスアベニューの間で、お祭り縁日フードなどの屋台などが出るジャパンフェスも共同開催されるため、食べ物の長い行列に並ぶか、パレードを見るかの「また割き」状態になるが、パレードは午後3時過ぎ、遅くても4時までには終わるため、午後5時まで営業しているフードテントをパレード終了後にゆっくり回ることもできるし、お目当てのパレード種目を事前にサイトでチェックしておけば、現地での時間配分もしやすい。

ブリキの兵隊、再び

 「ブリキの兵隊とニクソンがやってきて」で始まり「オハイオで4人が死んだ」で終わるニール・ヤングの『オハイオ』は、1970年5月4日、オハイオの名門ケント州立大学でベトナム反戦集会の学生たちに州兵が発砲し、4人が死亡した暴挙を歌ったものです。その2年前の68年にはコロンビア大学でも反戦運動が激化し、それは青春映画『いちご白書』(70年)で描かれました。

 ベトナムとガザの違いはあれど、半世紀以上前と同じ学生逮捕劇が今、そのコロンビア大など全米百近い大学で再現中です。欧州でもユダヤ人差別が絶対タブーなドイツですら名門フンボルト大などで、英国はケンブリッジ大でもテント運動が始まり、フランスもソルボンヌ大が「ガザよ、ガザ、ソルボンヌはあなたとともにある」という学生たちのコールが響きます。

 昨年10月のハマス奇襲に端を発したイスラエルによるガザ徹底殲滅。12月には米連邦下院教育労働委が大学における反ユダヤ主義に関する公聴会を開き、ハーバードとペンシルベニア大の両学長は「学生の反ユダヤ主義を黙認」として辞任。その経緯を知るコロンビア大のシャフィク学長は先月の公聴会で学生への強硬姿勢を示し、首はつながったものの翌日に警官を投入して今回のこの全米大学の抗議の火に油を注いだ。

 しかしこれは反ユダヤ主義ではない。これは「反大量虐殺」「反ネタニヤフ政権」です。学生たちの要求は明らかです。米国では年7万ドル(現レートで1千万円)も珍しくない学費を元手に、この10年ほどで百以上の大学がイスラエル投資や業務契約で計360万ドル(同540億円)も利益を上げています(米教育省)。ハーバード大は5年前の時点で「Booking.com」の親会社であるブッキング・ホールディングズに2億ドル(同300億円)ほどを投資。同社は国連がパレスチナ人居住区へのイスラエル入植事業に関係していると認定した企業。またMIT(マサチューセッツ工科大学)はこの10年以上にわたりドローンやミサイル防衛技術供与の契約などでイスラエル国防省から1100万ドル(同17億円)以上を受け取っている。

 学生側は自分たちの払う学費を大量殺人や入植事業に使わせるなと軍産イスラエルとの断絶を要求している。しかしバイデン大統領も長年の政治家生活でイスラエル・ロビーから計440万ドル(同6億6千万円)もの献金を受けてきました。「イスラエルによるガザへの無差別攻撃に抗議する若者たちvsイスラエルに反対できない既成権力」という構図の硬直。

 11月の大統領選がこれでさらに予測不能です。4年前にはバイデン当選を支えたZ世代でも、今18〜22歳の学生たちはトランプ政権当時は10〜14歳。あの4年間の強権と混乱を自分ごととしては知らない。だからそんなトランプを差し置いて、現在の若者には「民主主義を守るために支持を」と訴えるバイデンこそが反民主主義に映っている。

 8月にはシカゴで民主党全国大会があります。正式なバイデンの候補決定です。その際、バイデンの対イスラエル政策を批判するリベラル派が、会場内外で抗議デモを行うことになる。大学は夏休み中。全米からバイデン抗議の学生たちがシカゴに結集するかもしれない。思い出すのはやはり68年8月のシカゴでの民主党全国大会。ベトナム戦争反対の約1万人のデモ隊と警察が激しく衝突し、多数の死傷者が出たあの大混乱です。で、その後の11月選挙ではニクソンが勝利した。

 トランプはいま刑事裁判などで大忙しですが、彼の周囲の「ブリキの兵隊」チームが眈々と前回以上の政変計画を準備中です。

(武藤芳治/ジャーナリスト)

出版は家内制手工業のワン&オンリーたれ

株式会社 早川書房代表取締役社長

早川 浩さん

 ハヤカワミステリーなど、日本で、SF小説とミステリー作品を数多く出版している早川書房二代目の社長だ。毎年春に開催される米国ミステリー作家協会主催のエドガーアランポーアワードの授賞式にコロナ禍を除いて過去50年毎年出席している。自身も1998年にエラリークイン賞を受賞していて今では主催者側も含めて最古参のうちだという。同社は元々、神田で祖父が航空機部品を軍事協力工場として製造していた早川製作所が東京大空襲でなくなり、戦争嫌いの父が、戦後、演劇雑誌出版社として興した会社だ。

 早川さんは、1964年、慶應義塾大学4年生の時に元陸上部の経験もあって東京五輪の外務省の公式通訳の試験に合格して採用され、海外に目を向けるきっかけとなった。同大商学部を65年に卒業と同時に早川書房に入社、1年間経理部で書籍の売り上げ動向を勉強したあと、1年間の条件付きで両親の許可をもらってニューヨークのコロンビア大学語学学校に留学した。大学のカフェテリアで知り合ったウイルキンソンという名の学生の姪がロンドンで英国屈指の名門出版社ウイリアム・コリンズ&サンズで版権担当として働いていることが縁となり、帰国前にはロンドンで2日間で30社の出版社相手に早川書房をPRする好機にも恵まれている。

 このニューヨーク滞在中に、父親が部下を連れて息子である早川さんの様子を見に来たことがある。その部下というのが当時ハヤカワ・ミステリーの編集部長をしていた常盤新平だった。常盤氏は本紙・週刊NY生活2007年11月10日号の連載「常盤新平のニューヨーカー三昧3」にその時のことをこう書いている。「はじめてニューヨークに行ったときは、プラザに泊まった。勤務していた翻訳中心の出版社の社長のお伴である。(中略)活字で読んだNYと自身で見るニューヨークはまったく違った。まさに百聞は一見にしかず、だ。五番街を歩いていたとき、ミニスカートを初めて見た。ミニスカートが流行しはじめていたのだ」と記述している。

 早川さんはこう言った。「出版というのは家内制手工業なんです。ボタンを押せば立派な文章が出てるくるわけじゃない。翻訳権を買う時には、訳者、邦題、宣伝の仕方を考え、本のデザインなどを瞬時に考える。同時に紙やハードカバーにするかソフトカバーにするか本の体裁を編集者と製作者で相談して本作りに入る。社是は『ワン&オンリー』です。活字というのは『字が活きている』と書く。一字一字が『私の顔を見てください。私の身体を見てください』というように立ってこないとどんどんと読み手を失う。出版は大きな文化の担い手だと思う」。4日には、慶應義塾ニューヨーク学院で講演し「自分の言葉で文章を表現するために新聞を読んで下さい、本を読んで下さい」と呼びかけ、出版人としての魂をニューヨークで語った。(三浦良一記者、写真も)

早川書房社長が来米

慶應義塾NY学院で講演

 慶應義塾ニューヨーク学院で4日、SFやミステリー文学に強く多くの海外文学を日本に紹介したことでも知られている早川書房の早川浩社長が「出版者のひとりごと」と題して講演した。高校にいながら大学レベルの講義を聴ける学院のシグネチャープログラムである、オムニバスレクチャーシリーズの第13回目。国際派の出版社の代表として世界の作家たちとの交流をはじめ数々の貴重なエピソードを紹介した。

 質疑応答コーナーでは、将来、出版関係の仕事に就くことを目指す生徒達から熱心な質問が寄せられた。短期間で契約する作家や本を決める時の選ぶポイント、日本文学を海外に紹介するために必要なこと、最初の導入の文章が人を惹きつけるのに重要と言われるがどうやって書いたらいいか、翻訳本は国によって売れるものと売れないものがあると思うがそれはどこで判断するかなどの質問に早川社長は、「興味を持ったことを積極的に勉強して吸収すること」や「社会人としての教養や常識を身に付けることなど深い考察が大切なこと」を強調した。また「大人にとってファンタジー文学はどんな役割があるのか」という質問に対して「人々に希望を持たせ、明るさを投げかけてくれる」と語った。講演後のレセプションでも、生徒達からの質問が絶えなかった。 

 また早川社長は、SF評論家としても知られる巽孝之学院長に学院の図書室を案内され、所蔵のカズオ・イシグロ全編、アガサクリスティー全編を始め、ハヤカワSF文庫、ミステリー文庫など昨年同社が寄贈した345冊に及ぶ新蔵書とも対面。「本棚に私が入社した当時の作品もあって驚いた」と感激していた。

あなたも審査員に!

日本とNYを結ぶ美と平和のイベント

 ワンストーリーアワードNY大会実行委員会(代表・USAディレクター長久保美奈)は5月23日(木)午後6時30分から午後9時まで、スカンジナビアハウス(パーク街58番地)で美と平和の祭典「ONE STORY AWARD 2024 NY」を開催する。

 「Beauty & Peace」をテーマに1部では学生による3分間のスピーチで、それぞれが持つ美や平和に対する考えを発表。2部では今回70名の応募の中からオーディションで選ばれたニューヨークで活躍するモデル達が美と平和のテーマでランウエーを歩き、アピールを行う。それぞれの優勝者は来年2月に開催される日本大会へ招待され、さまざまな日本文化を体験する国際交流のアンバサダーとなる。

 当日は会場の観客にも投票権があり、参加型のイベントになるほか、来場者先着50名に日本の箸置きなど可愛い小物をプレゼント。ゲストにオペラ歌手の青木麻菜美氏、「美しい心が宿る花咲く世界のシェア」を掲げ活動中のフローリストで株式会社Magenta代表の山田剛氏=写真上=も来米。舞台上での独自の花のインスタレーションを披露。空間やモデルたちに美しい華を添える。

 審査員としてサラ・ジェシカ・パーカーやジョン・ボン・ジョヴィなど数多くのセレブを撮影する写真家のダフネ・ユリー氏、世界的バイオリニストのデイジー・ジョプリング氏、「週刊NY生活」発行人兼CEOの三浦良一、プロデュース兼審査員としてNYファッションウィークで日本人メンズデザイナーとして最年少でコレクションを発表したSHUN氏、米国NPO法人CUPA副代表理事の河野洋氏、セレブリティスタイリストのベイザ・コバン氏、日本からは株式会社ONE STORY AWARD 代表取締役の鶴田一磨氏が審査員として来米する。

     ◇

 当日は午後6時に開場し、入場料は無料だが25ドル以上の寄付を奨励。当日来場も歓迎。詳細はHP: https://www.onestoryawardny.com/

明日から使える腰痛改善セルフケア

一万田彬志氏が解説

  ニューヨーク日系人会(JAA)主催第16回春のヘルスフェアで、NY日系ライオンズクラブが企画したプログラム「ライオンズ大学:大人の教養講座シリーズ」第8弾が4月20日(土)から5月5日(日)まで YouTubeで公開された。現在も参加は無料で申し込める。今回は4人の講師が連続してセミナー配信を行った。各講師30分程度の凝縮セミナー。期間中何度でも自由に視聴できる。

 第2回目の講師は、大分県で慢性腰痛を改善する方法を伝えている一万田彬志氏(柔道整復師)が「明日から使える!腰痛改善セルフケア」と題して腰痛にまつわる、今日から誰でも使えるケア方法を紹介した。

 腰痛は症状が出やすい人とそうでない人がいる。全身は筋膜に覆われており、腰痛の9割は腰以外に原因がある。100人いれば100通りの腰痛があると言われるが、次のケア方法は100人居れば100人にやってもらいたい方法なので実践してほしい。

 どこから腰痛が来ているのかを判断する方法は、立って身体を反らしてみた時に、肩が前に出ている人は上半身由来の腰痛、身体を胸を張って反らした時に痛みがある人は下半身由来の腰痛といえる。

 少し歩いた後に片足立ちをしてみるとぐらつきに左右で差があることが多い。風呂上がりに、手の指と足の指を噛ませて足の水掻き部分を割いて広げ10秒間止める。足首を内回りと外回りそれぞれ10回ずつ大きくゆっくり回す。指の根本の骨を10回ずつ押し出す運動をする。歩いてみると、安定度が増すことを実感できるはず。この運動を風呂上がりに3セットする。

 次に、胸椎の動きを調整する。四つん這いになり、腕を反対方向に滑らせて寝るだけ。息を吸って7回に分けて吐き出す。これを左右やって最後に背骨を伸ばす。この運動を毎日することで、腰痛予防と緩和につなげることができると解説した。

     ◇

 動画はこちら。(https://youtu.be/SOAFr-G_2Us