NY渋滞税の詳細

今月5日に開始、割引も

 交通渋滞課金制度が1月5日に開始され、5つの行政区およびそれ以外の地域に住む通勤者に影響を与えている。この制度は、マンハッタン60丁目以南の道路や大通りに入ったドライバーに課金する政策で、乗用車の場合、E-ZPass利用で平日の午前5時から午後9時まで、週末の午前9時から午後9時までの「ピーク時間帯」の料金は9ドルを支払う必要がある。E-ZPass利用の乗用車の場合、夜間は料金が2ドル25セントに引き下げられる。

 マンハッタンの高速道路のみを走行する場合、混雑ゾーンを通る2つの主要高速道路、ウエストサイド・ハイウェイとFDRドライブは課金の対象外。ただし、いずれかの高速道路から混雑ゾーン内のローカルストリートやアベニューに降りた場合は課金される。メトロポリタン交通局(MTA)および港湾局の橋やトンネルに関しては、現行の混雑時以外料金が適用されるが、E-ZPass搭載車は、リンカーン、ホランド、クイーンズ・ミッドタウン、ヒュー・L・ケアリー各トンネルを通ってマンハッタンに入る際、混雑時以外料金が割引される。

 MTAは「割引額は、乗用車では最大3ドル、オートバイは最大1ドル50セント、小型トラックおよび貸切バスは最大7ドル20セント、大型トラックおよび観光バスは最大12ドルとなる」と述べている。

 ジョージ・ワシントン橋(ニュージャージー州からマンハッタンへ)は、混雑ゾーンより北のマンハッタンへの車の乗り入れとなる。 60丁目より北の住宅街の通りを通行して南側に入った場合のみ、混雑料金が課される。目的地が60丁目より南で、住宅街の通りを通行する必要がある場合は、料金を支払う必要がある。リンカーン・トンネルは、60丁目より南の住宅街に車両を乗り入れさせることからこのトンネルからマンハッタンに入ると、渋滞課金が課される。マンハッタンからリンカーン・トンネルを通って出る場合、渋滞ゾーンから出発していない場合でも、トンネルへのアクセスには住宅街を通らなければならないため、課金される。

 ホーランド・トンネル(ニュージャージー州からマンハッタンへ)も、60丁目以南の住宅街に直接つながっている。このトンネルからマンハッタンに入るドライバーには、混雑料金が課される。ホーランド・トンネルからマンハッタンを出るドライバーにも同じルールが適用される。混雑ゾーン内で移動を開始していない限り、料金が課される。

 ブロンクスの北部からメジャー・ディーガン高速道路、ヘンリー・ハドソン・パークウェイ、その他の高速道路を利用するドライバーは、混雑料金徴収区域の北側からマンハッタンに入ることになり、他の入口と同様に、住宅街の60丁目より北を走行する場合は、混雑料金は発生しない。

昼前の時間帯、普段は車で混雑するブロードウエー60丁目。上部には課金する装置(6日午前11時30分)

NYで渋滞税施行 確かに車は減ったが・・・

タクシー運転手「客いない」
駐車場はガラガラ


 交通渋滞課金制度がニューヨーク市のマンハッタンで1月5日に開始され、翌日のホリデーシーズンが明けた6日月曜の午前中は、マンハッタンの60丁目以南の主要道路は、見た目にも車の数が少なくなっていた。この制度は、マンハッタン60丁目以南の道路や大通りに入ったドライバーに9ドルを課金する全米でも初の政策で、昨年の実施がいったん棚上げされて今年から値下げされて実施に踏み切った。タクシー運転手は「客がいなくなって大打撃だ」とコロンバスサークルの空車の列で語る。マンハッタン46丁目5番街と6番街の普段は大混雑する駐車場も「ごらんの通りガラガラだよ」と従業員も諦め顔だった。  (写真・三浦良一)

NYで始まった渋滞税課金

3年後と6年後順次値上げ計画

 米国で初めての渋滞税が、マンハッタンで導入された5日午前零時過ぎ、レキシントン街と60番街の角には100人ほどが集まり、これを祝った導入支持者らが「通行料を払って」「通行料を払って」と叫ぶなか、最初に通行料を払った車が入ると拍手が起きた。この声をかき消そうと反対派の一人がカウベルを鳴らしたりした。

 メトロポリタン交通局(MTA)によれば、5日は日曜日で大きな問題はなく、平日の6日朝のラッシュ時でも大きな混乱はなかった。10%ほどの渋滞緩和が見込まれているが、今後検証されていくことになる。

 渋滞税によって得られる数十億ドル規模の資金は新しい地下鉄車両やバス、2番街地下鉄の大規模プロジェクトなどに充てられる。

 マンハッタンの60丁目から以南に入る車には、乗用車で日中9ドル(夜間は2ドル25セント)の料金がEZパスで課金される。EZパスを使わない場合は郵送で請求書が送られるが13ドル50セントと割高になる。

 渋滞税はロンドン、ストックホルム、シンガポールなどで導入されている。ニューヨークでは数十年に及ぶ議論が続いた。世論調査では市民への負担を強いるものと常に不評だった。昨年6月に開始予定だったのを見送り、11月に通行料金を15ドルから9ドルに下げることに決め、今回の導入に踏み切った。トランプ次期大統領がニューヨークの競争力を阻害するものだとして反対しており、大統領就任前に開始したと見られている。

 ニュージャージー州では渋滞料金は非常に不評で州当局は環境への影響から訴訟を起こしていたが、連邦判事は3日、これを棄却した。同州ではたまたま橋とトンネルの3%値上げと重なったことから不満も大きいようだ。リンカーンとホランドの両トンネルではクイーンズ・ミッドタウン・トンネルなどと同じく通行料が3ドル割引されるが、ジョージ・ワシントン橋は渋滞緩和区域に入らないため免除はない。

 MTAは渋滞料金導入で渋滞緩和区域に入る車両は毎日8万台減ると予想している。ロングアイランド鉄道などが混雑する可能性も指摘されているが、渋滞税で得られる資金は鉄道の整備にも回される予定で、通勤環境も改善されていくだろうとしている。

 ニューヨーク州のホウクル知事は1月の第三週に行われる年次州議会演説でメトロノース鉄道ハドソン線へ大規模投資を説明する予定だ。通行料は2028年までに12ドル、2031年までに15ドルに値上げされる予定だ。