NYで人材紹介会社経営の邦人ビジネスマン
駐日米国大使に嘆願書提出
このままでは、米国の日本人が消滅してしまう。それは米国経済にとってもマイナスになる。打開策として米国永住権の日本人枠を増やして欲しいーそんな嘆願書をニューヨークで人材紹介・派遣会社を営む日本人がラーム・エマニュエル駐日米国大使に出した。提出したのは5月21日。
内容は「現在の日本人人口に関する入手可能な情報に基づき、添付の請願書を作成した次第である。日本から米国への、そして米国内への移民の不均衡を是正するために、賢明な判断と迅速な行動を強く奨励する」というもの。
差出人はニューヨークに本社のある株式会社インテレッセ・インターナショナルの経営者、藤原正人さん(66)。藤原さんが、日本人の労働人口がパンデミック以来急速に萎んでいることに危機感を覚え、過去に遡って在米日本人人口の推移と他のアジア系諸国との人口動向を調べてみて愕然とした。10年に一度国勢調査(センサス)で日本国籍を持つ米国永住者の高齢化が進んでおり、このままでは先細りになっていくことがわかった。
藤原さんによると「現代の日本人は移民としてアメリカに来るケースは稀である。かつては専門職対象のH1-Bビザの取得により、その後のグリーンカード申請による永住権取得、その中から米国市民権を取得する構図となっていた。この構図がリーマン・ショック後に著しく変化し、H1-Bビザ取得が極めて困難になってきた。このため第一弾の母集団であるH1-Bが著しく減少し、米国市民権取得そのもの件数も大幅に減少していることは容易に想像できる。アメリカに在住する代表的なアジア系住民の中で日本人の高齢化は著しく進んでいる。センサス 2020で比較すると60歳以上の日本人住民は日本人住民全体の36・95%を占めており、第2位の韓国系住民の22・45%を大きく引き離している。アジア系住民で60歳以上の住民が最少のインド系住民の比率は12・04%であり、日本人住民のそれと比較して3倍以上となっている。加えて、センサスのデータにはアメリカに在住する日本語が可能なすべての日本人の統計となっており、この中には日本国籍者で数年間のみ滞在する日系企業の駐在員、学生、報道関係者、在外公館員、日本の政府外郭団体職員などとその家族も含まれている。この人々の殆どが60歳未満である。日本の外務省の海外在留邦人数調査統計報告によると、2020年度のアメリカ在住の長期滞在者合計は21万1110人(2020年10月1日時点)。この数値をセンサス2020のデータから差し引いた母集団を元に再計算すると、60歳以上の日本人の比率は49・11%に上昇する。この数値はすでに人口減少による日本人社会の消滅が間近いことを示している。多様な民族文化・価値観の存在が認められているアメリカにおいて、日本文化・習慣の継承・継続の点においても極めて困難な状態に直面していると言える。結論として、今すぐにでも米国内の移民の不均衡の是正が必要である。日米両国は自由、民主主義、人権の尊重といった基本的価値観を共有している。また、アジア太平洋地域では依然として不安定性・不確実性が増しており、パートナー国である日本の米国内日本人住民の存在は重要であることを踏まえると、この著しい人口減少は友好な日米間関係にも支障をきたす可能性を秘めている」としている。
(写真)藤原さん