ネット投票に必要な政府の信頼回復

海外日本人サポート(4)藤田幸久

 7月4日締め切りの参議院選挙の在外投票について、外務省は8つの在外公館で投票所開設ができないと発表しました。大使館員が退避中のウクライナ、アフガニスタン、シリアなどや、安全上の理由でのイラク大使館などです。昨年10月の衆院選ではコロナの影響等で15の在外公館で開設できませんでした。

 昨年の衆議院選挙で在外公館に行くのに飛行機代が6万円かかったという事例も含め、在外日本人の約2%しか投票できなかった不平等制度が明らかになりました。加えて上記のように紛争が投票を妨げる状況が増えています。

 海外ネット投票に関しては、これを求めた2万6千余りの署名を受け取った林芳正外務大臣が「2万人投票を一桁増やしたい」と述べたことを実行してもらうことです。

 日本国内でもコロナや自然災害による施設入居者や自宅療養者などの投票困難者が増えています。行政負担の軽減や人的集計ミス削減などにも効果のあるネット投票の検討の時です。エストニアで先行しているネット投票の諸課題の検証が有効です。投票行動と個人情報との分離による個人情報の保護や二重投票の防止。これにはマイナンバーカードが前提です。そのためにもコンビニで住民票まで取得できるマイナンバーカード制度の信頼を高めることが不可欠です。公共性の担保や第3者による制度検証も重要です。またネット投票と現行の「紙投票」の併用も一案です。

 ネット投票は先進国中最低レベルの日本の投票率向上の切り札です。また住民投票や政策評価にも活用できます。こうして小さな声や届きにくい声を反映することも民主主義の基本です。

 最も重要なのは、国民の政府に対する信頼回復です。近年日本では公文書や政府統計の改ざん、コロナの持続化給付金を国税庁や経産省職員が不正取得する前代未聞の事件が起きています。近代国家の基本要件が崩れています。信頼できる政府でなければ投票というルールを決める資格はありません。逆に、投票機会が不平等な「憲法違反状態」を改善することは、政府の信頼回復にも直結します。海外日本人の皆さんが始めたネット投票運動はますます重要な意味を持っています。

ふじた・ゆきひさ=水戸一高、慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。対人地雷禁止条約加盟、アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。世界52ヵ国訪問。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。