邦人家庭の食卓を直撃

輸送費10倍に

ジェトロが影響調査報告

 西海岸ロサンゼルス港でのアジア発北米向けコンテナが荷上げできずに港に長期間滞留されている問題で、日本から輸入している食料品などに大きな影響が出ている(関連記事:米国で物価高騰続く)。北米ジェトロ各事務所が食品商社、輸送会社など企業などに聞き取り調査をしレポートにまとめた。

 それによるとコンテナ船の輸送スペースの確保は、困難を極め路線によって数か月待ちが常態化していることがわかった。また貨物の増加、現場人員の入場制限などによる混乱が継続。主要港湾の遅延・欠航・滞貨が深刻化している。

 ■滞留コンテナに課金

 ロサンゼルス港は12月30日、海上ターミナルに空コンテナを9日以上滞留させた海運会社からの手数料徴収を開始すると発表した。ロサンゼルス港湾委員会の承認を経た上で、1月30日から適用を開始する予定。9日間以上滞留した空コンテナについて、ターミナルを離れるまで海運会社に対し、コンテナ1個につき1日当たり100ドルの累積の追加料金を課すことで事態の打開を図ろうとするが、今後の見通し(解消時期)などは、少なくとも2022年の中国の春節が終わるまでは現在の混乱が続く、というのが共通の見通しとなっていると分析している。

 特に輸送価格が常規を逸した値上がりとなっている。コンテナ輸送価格は路線によりバラツキもあるが、アジア発北米向けなどで、平常の10倍以上との報告もあった。プレミアム料金での優先予約や、一部、法外な価格での売り込みに応じざるを得ない事例もあったとしている。ジェトロの報告書からは業者の苦しい状況が伝わってくる。項目別に紹介する。

■推奨される対応

 他社と共同でのスペース確保、航空チャーター便などによる輸送機会確保と効率的な活用、 特に、船荷の直行便ではなくトランジットやコンテナを積替えが発生する航路では、遅延を見越した納期設定・交渉が必要になる。市の空港・航路の活用(陸送との併用)検討することも指摘する。

■今後の見通し

 少なくとも2022年の中国の春節が終わるまでは現在の混乱が続くだろう。価格高騰の解消は、現在発注済みの大型船舶が就航可能となる23年以降との見方も。航空輸送は、便数回復が2022年も不十分。スペース不足と運賃高騰は継続。燃料価格高騰が拍車。港湾におけるマンパワー不足解消は、感染状況次第のため見通しは立たない。

■ロサンゼルス港の状況

 港湾混雑による沖待ち、引き取り遅延が慢性化。西海岸の沖待ちは17日間、搬入作業に3〜4日、コンテナ滞留は約10日間(10月末)。国内のドライバー不足、トラック輸送費も高騰。

■輸送料高騰小売価格に

▽港湾が24時間7日体制になったものの、夜間シフトの稼働率は低く、貨物引き取りニーズも少ない。夜間の時間帯の有効活用が課題。(物流会社)

▽ 日本や中国、東南アジアから米国向けの路線では、40フィートコンテナの運賃は、コロナ前の3000ドルから、最大で1万8000ドルから2万ドルまで上昇。ここ1か月半ほどで下降気味となり、直近では1万1000ドルから1万3000ドル程度。(小売)

▽コンテナ運賃は、通常、4〜5月に3社から年間のフラットレートの見積もりをもらい、その中から状況に応じて使い分けているが、コロナ禍でそれが機能しなくなった。プレミアム料金の追加支払いも発生。極端な場合、200万円の商品を搭載しているコンテナに170万円の運賃を支払う場合もあるが、欠品を出せないためしょうがない。(食品商社)

▽米国内のトラック輸送のコストが平時の1・5倍から2倍に高騰している。(機械商社)

▽船会社は新規顧客を受け付けておらず、輸送貨物増を目的とした新規契約ができない。(機械商社)

▽商品の不足が深刻で、代用品を提供することもあるが、その代用品も奪い合いとなり、顧客には代用品を本日仕入れなかったら明日以降に卸せる保証はないと話している。物流の混乱などで商品がないため、顧客側では運賃の転嫁も含めて価格を2倍にしても理解して受け入れてくれている。バブルと感じている。(食品商社) (ジェトロ調べ)

(写真)NY市内食料品店で68ドルで販売されたおせちセット

(関連記事)米国で物価高騰続く