応援する子育てのススメ

松村亜里・著
WAVE出版・刊

 著者の松村亜里さんは、一般社団法人ウェルビーイング心理教育アカデミー代表理事を務め、ニューヨークライフバランス研究所代表。この本の巻末にある著者、松村さんの経歴をまず紹介したい。それによると記載されている内容をそのまま書くと「母子家庭で育ち中卒で大検を取り、朝晩働いて貯金をしてニューヨーク市立大学入学。首席で卒業後、コロンビア大学大学院修士課程(臨床心理学)、秋田大学大学院医学系研究科博士課程(公衆衛生学)修了。医学博士。臨床心理士、認定ポジティブ心理学プラクティショナー。
 ニューヨーク市立大学、国際教養大学でカウンセリングと心理学講義を10年以上担当し、2013年からニューヨークで始めた異文化子育て心理学講座が好評で、同州各地に拡大。ニューヨークライフバランス研究所を設立してポジティブ心理学を広めている。
 2017年に一般社団法人ウェルビーイング心理教育アカデミーを日本で設立。幸せを自分で作り出す人を増やすために、エビデンスに基づいた理論とスキルを紹介し、実践に落とし込む講座を展開。世界中の親に向けて18年に開設した「世界に通用する子供の育て方オンライン講座」「グローバル・ペアレンティングサークル」も開催中だ。
 第1章で「世界に通用する子どもとは・・・」では、子どもの幸せと、子どもの成功のどちらを望むかという設問から、幸せについての松村さんの持論が展開される。成功するから幸せなのではなく、幸せがまずありでこそ成功につながるのだと。人工知能(AI)の発達により、現在世の中にある仕事の半分近くが10年以内なくなるという仮説に立ち、自立した子ども育てること、機械にはできない人間の頭脳でしか太刀打ちできない分野での仕事に就くことこそが、これからの世界に通用する生き方であると導く。人間の心理を分析しながら、筆者が培ってきた理論をマーカーでなぞったような凝った印刷で解説してゆく。
 同書は子育てによる子どもの幸せをいかに導くかということと同時に、子どもを育てる親の心理がいかに子どもに伝わっていくかを理論的に紹介していく。威圧的な親よりも、子どもを応援する目線で育てる支援型が、最終的には高学歴になり高所得になっていくとの分析もする。
 海外での子育てで筆者が直面した異文化と多様性のカルチャーショックの中から、子どもに対して皆と同じでなくていい、優劣をつけなくていいという人と違って当たり前という環境が子どもに与える影響の大きさについても触れている。子育てに絶対という言葉はない。子どもは一筋縄ではいかない。子どもの適正や性格、その時々の英知を両親が出し合ってその家庭にとってのベストな選択をすればいい。子どもが幸せになるかどうか、幸せを感じられる人間に育てることだと説いている。子育て教育論ではなく、人間力、どんな状況になっても前向きに生きていけるポジティブな考え方を持つことが大事だとこの本は教えてくれる。(三)