ファインダイニングをカジュアルに体験

 2018年11月開店の現代米国料理店「オクサリス」が人気を集めている。オーナーシェフはNYのミシュランニつ星を持つ「ダニエル」とフランスの三つ星店「ミラズール」で修業を積んだニコ・ラッセル氏。「高級店の価格と緊張感なしに、美味しい料理とおもてなしを満喫できる店を目指しました」と氏。
 店内はアラカルトを提供するバールーム(各8〜23ドル)と、手頃なテイスティングメニュー(6品60ドル)を出すダイニングルームに分かれる。氏曰く「子供連れで短時間しか滞在できないご夫婦や、近くの公園や美術館帰りにちょっと美味しいものを楽しみたい方など、地元コミュニティーのニーズにも応えられるバーを併設。ダイニングルームの鴨料理の副産物として心臓とレバーを載せたパンをアラカルトで出すなど、貴重な食材の無駄を無くすためにもバーは重要な位置付けです」。
 料理はニューヨーク近郊の優良生産者から仕入れた旬の素材がテーマ。例えばバールームの一品の生の平目は、その旨味が引き立つよう、塩水に漬けて1か月間乳酸発酵させたリーキの漬け汁に白醤油を加えたソースを合わせ、黒コショウやオレガノに似た風味を持つニゲラの種を散らす。
 一方テイスティングメニューの一例は、アブラナ科の根菜ルタバガ。茹でて麺状に切ったルタバガに、酸味の強いフォンティーナチーズとクリーム、粉末状のコーヒー豆を合わせエスプーマにかけたなめらかなソースを添え、見過ごされがちな美味しい根菜を、個性的なソースとともに魅力的な一品に仕立てる。
 ラッセル氏は開店前、30回ものポップアップを経て同店のコンセプトを磨き上げた。「毎回ディナーの後にゲストの反響をじっくり聞き、コースのペースからスタッフのトレーニングまで、ミシュラン級のサービスを気軽な雰囲気の中でどう実現するかについて学びました。これからもお客様の声を大切にしながら当店を育てていきたい」と話す。

(ニューヨーク在住ジャーナリスト/片山晶子)

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