「メイド・イン・USA主義は米国からの招待状だ」
日本企業の米国進出を先導し、数々のM&Aを成功させた会計士、竹中征夫氏を招いたランチョン講演会が2月28日、日本クラブで開催された。
「生き残る国際企業のリーダーたちへ〜いま求められる『躍進の条件』を語る」と題し、在米日系企業のあり方、経営者の心構えをを語った。当日は日系企業の役員や公認会計士、弁護士など会員、一般参加者40人が熱心に聴講した。
竹中氏は1942年、愛知県生まれ。両親の移民に伴い15歳で来米。ユタ州立大学会計学部卒業後、65年にピート・マーウィック・ミッチェル(現在のKPMG)に入所。89年に独立し、76歳の現在もロサンゼルスを拠点に日米を行き来し精力的に活動している。
【講演要旨次の通り】
戦後日本は焼け野原から復興して経済成長を遂げたがそれは輸出に頼った産業システムに基づいていたもので、いま日本は海外に輸出できるものは少なくなっている。私自身は、日本ミニチュアベアリングが対米進出した当時、米国議会で軍需産業に関わる製造品は米国で生産されたものに限定するという法律が通り、カリフォルニアの工場を買収するお手伝いをしていまミネベアミツミは巨大企業に成長している。80年代の自動車日米貿易摩擦でも、ホンダが最初に現地工場を作り、トヨタ、日産が追随して、いまは米国の自動車産業を日本車が追い抜いている。現地生産、現地化が成長の鍵だ。
トランプ大統領が「メイド・イン・アメリカ」を主張するのは、私は「米国からの招待状」だと思っている。第2の米国進出の絶好の機会と捉えている。日本企業が米国で成功するためには3つの条件がある。ひとつは優秀な米国人を雇うこと。権限を与え、モチベーションを高めること。第2は、マーケティングとセールスに力を入れること。第3は、アメリカの社会、アメリカの市場を相手にビジネスをすることだ。日本食レストランでも日本人を相手にした店はどんどん衰退していっている。逆にアメリカ人をターゲットにした店は常時列ができるほど繁盛している。アメリカに来て日本企業や日本人をビジネスの対象にしていては大きな成長は見込めない。
日本企業が米国に進出して拡大展開していく上で、M&Aはオプションではなくマストだと思っている。M&AのAは、アクゼッション(買収)ではなくアライアンス(共同連合)という意識だ。従業員や顧客に対して、まったく別の会社になってしまったという不安を与えず、さらに拡大するために大きなチームワークで会社を発展させようと連帯意識を持たせることが合併後の相互社員のシナジー効果を高める上での経営者の工夫といえる。
経営者がビジネスをする上で大切なのは、メンターを持つことだ。心底畏敬の念を抱ける相談相手や指南役を持つことが大事。オリックスの宮内義彦さん、ウシオ電気の牛尾治朗さん、ソフトバンクの孫正義さんら老人キラーの成功者たちはみな、とても素敵な笑顔を持っているということだ。仕事を進める上ではパッション、プロアクティブ、ポジティブ(仕事に情熱を持って前向きに行動する)こと。私のルーツである近江商人の言葉に「三方良し」という言葉がある。自分もよく、相手もよく、そして社会にもいい。それが大事だ。人生は学ぶ道場で、セミナーや学校で習得した知識プラス自分でアナログで身につけた「知恵と工夫」こそが一番大切だ。