ソックスをネクタイに合わせる

イケメン男子 服飾Q&A66

 今回は 普段目につかないところで紳士服コーディネートの下支えをしている存在、ソックスについて書いてみます。
 まずビジネスウエア、スーツやジャケット、ブレザーにスラックスと組み合わせる場合についてですが、考え方もチョイスも実にシンプルなのです。ビジネススーツと言えば色は紺とグレー、それに現代においては黒も加えて(本来、黒はフォーマルウエアであるべきですが)の3色のベースカラー。靴は基本的に黒が中心で、加えてダークブラウンやボルドー(ワインカラー)といったところでしょうか。
 ビジネススーツとソックスの組み合わせの基本的ルールは、①スーツの色に合わせるか、②靴の色に合わせるか、の二者択一、簡単ですよね。従いまして紺のスーツに黒の靴を合わせる場合、ソックスは紺または黒。紺のスーツにダークブラウンの靴を合わせる場合、もちろん黒でも構わないのですが、この場合はスーツの色に合わせた紺がお洒落に見えるかもしれません。理由はイタリア人男性の一般的な好みであり、人気でもあるアズーロ・エ・マローネと呼ばれるブルーと茶色という反対色の組み合わせとなるからです。同様にグレーのスーツ、黒の靴の組み合わせであればソックスは黒またはグレー。ビジネスの場においてはダークトーンが基本なのでソックスもチャコールグレーが使いやすくはあるのですが、これもダークブラウンはじめ茶系の靴をグレーのスーツに合わせる場合、ソックスについてスーツのグレーがミディアムトーンであれば、ソックスの色もチャコールより少し明るめ、スーツの色のトーンと合わせても良いでしょう。オフィスにおいて周囲(特に女性)はそうした細かいところをチェックしているものなのです(笑)。
 ここで私の経験によるアドバイスをいくつか。
①アメリカは綿の国です、羊毛産業はかなり昔にほぼ無くなってしまいました。従って米国製、輸入品を問わずビジネス用ソックスの素材もほとんど綿か綿の混紡が多いのです。ですが、ビジネス用であれば、私は季節を問わずできれば羊毛、すなわちウール素材を用いたソックスをおすすめします。さらに、②ソックスはふくらはぎのなかほどまでの長さではなく、当地においてhose(ホースではなくホーズと発音)と呼ばれる膝までの、いわゆるハイソックスを。そして、③ソックスにはリブ編みと呼ばれるウネの入ったモノの一択としていただければ幸いです(笑)。
 それぞれの理由についてですが、まずウール地のソックスを愛用されている方がずっと水虫になりにくく、足の健康にも良いのです。実はウールの方が綿よりずっと水分を吸収し、早く乾燥し、その際、足の熱を奪ってもいくのです。そしてホーズは足を組んだり大股で歩いたりしても脛が見えてしまうことなく、気のせいか(笑)、足さばきもスムースです。近年、滑りにくい、また軽いといった特徴もあって、ゴム底のビジネスシューズが人気ですが、本来革底の方がずっと水分を吸収し、蒸れにくいのです。もちろん、ゴム底のビジネスシューズでも構わないのですが、できるだけ通気に配慮されたタイプをお選びください。
  最後に、ビジネス向きではありませんが、もしパーティーなどの際にちょっとオシャレに装う必要がある場合、ソックスの色をネクタイの色と合わせるというのも洒落ています。意外に良い意味で目立つものです。日本では色もののソックス、あまり見かけませんが、当地においてはけっこう売られております。ぜひ お試しあれ。それではまた。
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。