2023年のことば発表

メリアム=ウェブスター辞典

「authentic」を選ぶ

今年を最も象徴、SNSで多様も

 メリアム=ウェブスター辞典は11月27日、2023年を最も象徴することばに「authentic」を選んだことを発表した。 

 同辞典は公式サイトで、形容詞authenticは「明確に定義することは難しく、しばしば議論の対象となる」としながら、意味として「虚偽ではない:real(本物の)やactual(事実上の)の同義語」、「自身の個性や精神、人格に誠実である」と複数あるとしている。今年は人工知能(AI)やセレブ文化、アイデンティティ、ソーシャルメディアの話題で、同単語の使用が著しく増加したという。 

 日常ではauthentic dish(本場の食べ物)や、英語圏の観光客が昭和風情が残る下町の商店街や住宅街をauthentic(正真正銘の)と表現することがあるが、「自身」や「声」などアイデンティティを強調する形容詞としても使用される。英国人シンガーソングライターのサム・スミスさんは「authentic self(本来の自分)を表現するにはとても勇気が要る」とゲイであること公表し、グラミー賞を12回受賞しカリスマ的存在のテイラー・スウィフトさんは、多大な影響力として自身のauthenticity(らしさ)が評価され、王室離脱に困惑するヘンリー王子も同単語で自分らしさを強調している。またChatGPTの利用が賛否となった今年は、学校の論文や政治家の発言や声明がauthentic(真実)なのか、が問われた。 

 同「ワーズ・オブ・ザ・イヤー」は03年に始まり、毎年、1年間の出来事を反映した単語、検索数が著しく増加した単語を厳選している。そのほか今年のリストに選ばれた単語の一部は次の通り。Rizz:ロマンチックな魅力がある、カリスマ性があることを意味するスラングで、今年9月に同辞典に登録された。Kibbutz(キブツ):イスラエルの独自の農村共同体のことで、イスラム組織ハマスは10月7日にイスラエル南部のキブツを攻撃した。Implode(内破する):6月18日に潜水艦タイタンが深海で内破し5人が犠牲となった。Deadname(デッドネーミング):トランスジェンダー本人が出生時に付けられ、すでに使用していない名前。Doppelganger:ドイツ民話に基づく分身や生霊を意味する。カナダのジャーナリストで作家のナオミ・クラインさんが同タイトルの新刊で、フェミニストの作家で陰謀論者である自身の葛藤を綴った。Coronation(戴冠式):チャールズ3世の戴冠式の5月6日には、同単語の検索数は昨年比で15681%増だった。Deepfake:実際にはやっていない、言っていないことをした個人を偽った印象で伝えるために用意された動画や画像。今年は、テスラ社のイーロン・マスク氏の弁護団が、マスク氏の過去の発言が捏造されたと訴えた。Dystopian:近年の気候危機を表す形容詞で、暗黒郷のような、を意味する。Covenant:「契約」を意味する名詞だが、3月27日テネシー州ナッシュビルで銃撃事件があった小学校がコヴェナント・スクールだったこと、ガイ・リッチー監督映画「コヴェナント」が公開されたこと、オプラ・ウィンフリーさんがブック・クラブでアブラハム・ベルギーズ著の新書『ザ・コヴェナント・オブ・ウォーター』を推薦したことから検索数が増加した。Indict(起訴する):ドナルド・トランプ前大統領が4州で重罪で起訴された。そのほかツイッターを改めた「X」、エミー、グラミー、オスカー、トニー全賞を制覇を表す「EGOT」など、同リストの詳細はmerriam-webster.comを参照する。