激動の時代を生きる

民主主義守るための戦い

ジャーナリスト 津山恵子

 ロシアがウクライナに侵攻してから300日以上が経った。ウクライナは人口4300万人と、小さな国である。しかし、300日以上もの間、軍事大国ロシアを一部で撃退さえしている。

 ウクライナでの戦争を忘れてはならない。なぜなら、彼らは、私たちの多くが当たり前と思っている「自由」と「民主主義」を守るために戦っているからだ。何者も国家の主権と人々の平和を奪う侵略をしてはならない。ウクライナが負ければ、日本を含む自由主義世界の「敗北」でもある。

 12月21日、ワシントンを電撃で訪れたウクライナのゼレンスキー大統領は、米連邦議会でこう強調した。

「あなた方の(支援の)資金は、チャリティではない。私たちが最も責任ある方法で、世界の安全と民主主義に費やす投資なのです」

 いかに不均衡なパワーバランスの中、ウクライナが戦っているのか、データを見てみよう。世界の軍事力ランキングをまとめるグローバル・ファイアパワーによると、ロシアはウクライナに対し、国防予算で13倍、常備兵力で4・3倍、戦車数で約4・8倍と圧倒的な軍事力を持つ。

 それでも首都キーウは、陥落していない。一度占領された東部マリウポリでは、ウクライナ軍が製鉄所に籠城した。人道回廊が設けられ、生き残った兵士が投降したが、犠牲も大きい。マリウポリだけでロシアとウクライナの兵士が1万人死亡した。民間人の死者は2万人超に上る。また、今日でも毎日、教師、ヘアスタイリスト、バレリーナなど若い人が戦闘で命を落としていることがツイッターで伝わってくる。

 戦争初期に取材したビジネスマン、ボグダン・パルホメンコ氏はキーウ在住。日本で育ったため、日本語で日々の生活の様子をSNSで発信している。年末、ロシアが電力施設を集中攻撃したため、通信が途切れがちになり、セントラル・ヒーティングが切れた。その中で、日本から届いた食料やランタン、ホカロンなどを日々、市民や兵士に届けている。

 彼からの報告を見ていて、日本政府は「顔の見える」支援をするべきだと痛感する。これまでに巨額の支援をしているものの、米国との差は大きい。金額よりも例えば通信やインフラ関連など日本の技術力が生かされる分野に集中するべきだ。戦後となり、復興・復活が始まった際も、橋や道路、建築物など日本には迅速で強力な支援が期待される。

 ロシア側の犠牲も大きいことも忘れてはならない。米軍によると、ロシア、ウクライナの両軍でそれぞれ約10万人が死亡した。民間人の死者は、約4万人という。

 1日も早い戦争の終結を願っている。