2021年の日本の介護への期待
日本の介護事情
今年はハッピーな年にしたいですね! ちょっと前までは変わらない日常に安堵していた私たちは、昨年のコロナ禍で突然、神様に背中を押され、「ニューノーマル」という「新しい価値」への一歩を踏み出させられている気がします。勇気を持って2021年をスタートしましょう。
さて、私たちにとって、「突然介護」で緊急入院からの退院後、すぐに介護施設を探さなければならなくなることも多いのではないでしょうか。昨年のコロナ禍で入院や自宅静養というのが非常に身近に感じられた年でもありました。慌てて施設を3軒見て決められるかというと、どれも似た施設で、10軒見ても決められないこともあります。だいたい施設見学比較でわかる違いは、モデルルーム、共有スペース、水回り、月毎のイベント、医療連携、夜間巡回、価格など、個の直感でしかありません。全部で1時間くらいです。あとから「後悔」しないために、施設見学のポイントを私なりに書かせていただきます。
1 まずは玄関に注目
飾り花や出入口の締切り具合(自動ドア)。掲示物の「・・厳禁」など施設寄りすぎないポスターとその鮮度、雑誌等の種類。玄関の雰囲気づくりは、その施設の「魂」の表れでもあります。自分の大事な人への扱いと同じと考えていいでしょう。普通気にしないような「小さなところ」に「神」は宿るのですから。
2 見学の時間
意地悪な言い方ですが午前中や昼食時に突然訪問するのもアリかなと考えます。もちろん施設に迷惑をかけてしまうことは百も承知。あまりの多忙さで、後日に再調整せざるを得ないこともありますが、その対応方法と、その一番忙しい時間の見学者への扱いは「利用者」に表れているはずです。利用者の食事状況や口腔ケア、排泄介助の様子も含め、ここで対応の様子は施設の素顔ともいえます。偶然にその多忙な時間に施設を見られたらラッキーですね。
3 利用者の表情
これが一番重要です。黙々と食べているだけで、会話が見られないようなら「職員に監視されている」という緊張感があるのかもしれません。入居者同士が仲良く話している風景が見られたらいいです。利用者の髪型は一律同じになっていませんか? つめやひげは整えられていますか? 利用者の「羞恥心」は守られているでしょうか?それらの視点で感じてみてください。
4 利用者の過去歴を聞いてみる
見学しながら、さりげなく、利用者の過去、例えば元気な頃のお仕事などを職員に聞いてみてはどうでしょうか。本当に尊厳を持って接しているなら、その方がどういう人生を歩まれて今ここにいるのか分かっているのが当然のことです。
5 職員同士のコミュニケーション
利用者への注視から職員へ視点を移してみましょう。彼らはどういうことを話しているのか聞き耳立ててみてもいいかもしれません。無駄話でもいいでしょう。明日のシフトの話でもいいでしょう。利用者同士の交流のことや利用者の先を読んで次の行動やリスクを最小限にしようと話している様子が聞けたらいいと思います。その他、笑顔、におい、騒音も含めたいい意味での程よい「賑やかさ」は生活に活気を与えてくれるかもしれません。
次に、施設内見学を終えて質問タイムもあると思います。以下のことを聞いてみましょう。
6 職員の休みは取れているか?
介護も他の産業も同じく「働き方改革」に取り組んでいる事業所の方が間違いなく、サービスの質が高いです。できれば年間休日120日。リフレッシュできるから利用者への配慮も、優しくもなれるのです。
7 どんな研修をしているか?
「虐待」に関する人権研修はもちろん、職員間のコミュニケーション能力を高める研修も大事です。特に、昨年のコロナ禍における臨時対応はサービスの質を左右する試験薬のようでもありました。特に「初動」でどう職員間でコミュニケーションするのかを確認したいものです。
8 地震災害等の急な発生時の対応(BCP)は?
「そういう時でも休まずに全社員総出でなんとかします」は昭和の体育会系では乗り越えられたかもしれません。これからは、「そういう時は他社連携」という案を検討している法人は期待できます。現時点ではなかなか難しいですが、BCP策定が3年以内に義務付けられていますのでどのような対応か聞いてみる価値はあります。
9 利用者の自由度の確認
施設では個人というよりどうしても団体生活になってしまうため、それまで築いてきた「俺流の生活」を諦めないといけない場面も多くなることでしょう。毎晩の晩酌、深夜のテレビ、気軽な外出、好きな時に入浴、私物の持ち込み、恋愛など。でも、本当に諦めなければならないものでしょうか。「要介護者だから」「団体生活だから」で諦めなければならないことか? それとも、続けられることか? 同時に入居者同士の関係や、場合によっては入居者側に立った家族会のような組織もあったりします。これは一概には言えません。しかし、サービスの限界点として施設の意見を確認しておきたいものです。
10 施設のこだわり
他の施設と自施設の違いはどこにこだわりがあるか。その取り組みも聞いておきたいものです。地域とのつながりや交流イベント、まだまだ元気になれるリハビリ、部屋にこもらないような仕組み、施設によっては、「減薬への取り組み」「オムツゼロや車椅子ゼロ」などのオリジナリティを学びながら利用者のご希望に沿えるよう努力している姿はぜひ評価したいものです。また、自分の親の状況をタイムリーに確認できる仕組みがあることもこだわりの一つとしていいと思います。「連絡していただけたらいつでもお話しします」では困ります。昨年は、コロナ禍でなかなか会えない状況が生まれました。これからは、SNS活用や動画、オンライン会話などの体制もできているはずです。そういう先進的な取り組みを積極的に、機動力高くチャレンジしている施設にますます期待してお願いしたいものです。
西村栄一/株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー代表取締役、一般社団法人日本介護協会(介護甲子園)理事
*同社では専門家と連携してコンサルティングを行っている。疑問、悩み、日本の社会保障(介護・医療・年金・雇用等)制度に関する質問や相談を受け付けている。info@helpz.jp