9月28日最高裁の第一小法廷は、国籍はく奪条項違憲訴訟の上告を棄却しました。国籍法11条1項によって、外国籍を取得したとたんに日本国籍が自動的に奪われます。その結果、日本国内にいながら日本国籍を失った人、海外在住で日本国籍を失った人、国籍を失ったことを知らずに日本に帰国して不法滞在外国人とされた人、海外在住日本人で日本国籍を失いたくないために現地に帰化できない人などが多く存在します。
必要に駆られて外国籍を取得した南部陽一郎、中村修二、眞鍋淑郎などのノーベル賞受賞者も日本国籍をはく奪されました。
他方、最高裁大法廷は10月25日「性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律」は、「意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」として憲法違反との判決を下しました。
この二つの訴訟に関する判断の枠組みは、原告弁護団の仲晃生弁護士によれば以下のように全く同じです。①懸念される問題が生じることは極めてまれ。②代替手段がある。③問題が起きていない。④問題が起きるとは考えられない。⑤制約の必要性の低下。⑥合理的関連性の消滅。⑦過酷な二者択一。⑧制約を課さない国の増加。
にもかかわらず、性同一性障害者の手術強制は憲法違反で、国籍強制はく奪は合憲というのはあまりに矛盾します。
原告側は、10月26日①多くの学者が国籍法11条は違憲であることを指摘している。②最高裁で判断が示されたことのない重要な憲法上の争点を含む。③裁判所法10条によれば大法廷で審理すべきにもかかわらず小法廷で門前払いのように棄却した。④憲法上の重要な争点についての判断から逃げた。との推論から、最高裁判所に再審の訴えを起こしました。
6月にLGBT支援法をG7諸国の中で最後に成立させた日本でも、やっと性同一性障害者の手術強制憲法違反が確定しました。
多くの海外日本人を守ることは日本の国益であり、国籍はく奪条項を変えるために、今こそ国会と国民が声を高める時です。
ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。
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