脊椎損傷からの再生医療
クリストファー&ダナ・リーブ財団
20年間支援する今井さん親子語る
「脊椎損傷の治療はもう日本の方が進んでいるということを前理事長に伝えたけれど、会場で発表されることはありませんでした」とちょっと残念そうに話したのは、母親の今井千恵さんとともに、米国最大の脊椎損傷支援団体、クリストファー&ダナ・リーブ・ファンデーションの年次晩餐会に10日出席したCHIE IMAI社長の今井千晶さん。
今井さん親子は、これまで開催された過去40回中20回の晩餐会に日本から出席し、多額の支援寄付を行ってきた。治療研究は米国の方が進んでいると思われがちだが、今回は日米間の学術交流の必要性を痛感させた晩餐会となった。
クリストファー&ダナ・リーブ・ファンデーションは、ニュージャージー州ショートヒルズに本部を置く慈善団体で、脊髄損傷やその他の神経疾患による麻痺の治療法や治療法を見つけることに取り組んでいる。
1982年以来、脊髄の研究者に1億3800万ドル以上、障害者の生活の質の向上を支援する非営利団体に2800万ドルを配布している。1982年、自動車事故で負傷したヘンリー・スティーフェルによって財団APAが設立された。95年、映画「スーパーマン」で主役を演じた俳優のクリストファー・リーブが乗馬事故により四肢麻痺となり、APAの支援を受けることになった。リーブは知名度を使って資金集めに貢献し96年、財団はクリストファー・リーブ麻痺財団、その後クリストファー・リーブ財団と改名された。2004年10月のリーブの死後、未亡人のダナ・リーブが財団の理事長を引き受けたが、ダナ・リーブ自身も2006年3月に肺がんで死去した。2007年3月11日、ダナ・リーブの一周忌に財団の名称を「クリストファー&ダナ・リーブ財団」に変更。現在、リーブの3人の子供、マシュー、ウィル、アレキサンドラが財団の理事を務めている。
これまで有効な治療法がなかった脊髄損傷。不慮の事故などで重い後遺症を抱えた患者は、そのまま車いすや寝たきりの生活が続くのが常だった。そんな脊髄損傷患者をめぐる状況が、大きく変わるきっかけを作ったのが札幌医科大学の幹細胞治療の研究だった。3年前に脊髄損傷の治療に 自分の細胞で神経再生する方法を発見、事故から31日以内であれば、自分の細胞を再生して歩行が可能という画期的な発見だ。
今回3年ぶりに対面方式で開かれた晩餐会で、財団の新理事長に同財団副理事長だったマギー・ゴールドバーグさんが就任した。今井さん親子は、20年以上私的に支援し続けてきたが米国の脊椎損傷支援団体にこの日本の最先端の技術の存在を伝えるのは今だと実感した。「日本の研究成果が、アメリカで苦しむ脊椎損傷の患者を今度こそ本当に救うことができるかもしれない」。千恵さん、千晶さん親子は、新たな時代の幕開けを予感して帰国した。
(写真)左からクリスさん、千晶さん、マシューさん、ウィルさん、千恵さん、アレキサンドラさん