大統領選挙は7日午前11時30分頃、ジョー・バイデン前副大統領(民主党、77)がペンシルベニア州を制し選挙人の過半数270以上を獲得、ドナルド・トランプ大統領(共和党、74)を支持するフォックスニュースも含め各メディアは「バイデン氏が次期大統領」あるいは「バイデン第46代大統領」などと報じた。
同日夜、バイデン氏は勝利宣言の集会を地元デラウェア州で行い「国が団結する時だ」と訴えた。カマラ・ハリス上院議員(56)が女性で初めて副大統領となる。 しかしトランプ氏は「選挙立会い人が集計室に入ることができなかった。違法投票だと判断する必要がある」などとツイッターに投稿、これまで通り選挙の不正を訴えた。一方、バイデン陣営は8日に政権移行チームをウェブ上で立ち上げ、新型コロナ特別対策チームを編成、気候変動に関するパリ協定への復帰などを発表した。米大統領選挙は通常、負けた側が敗北宣言を出すことで終わるが、今回はトランプ大統領が敗北宣言を出さないという異例の事態となった。
トランプ氏は期日前投票や郵便投票には不正があるため裁判に訴えるという姿勢を崩していない。連邦最高裁の欠員に保守派のエイミー・バレット連邦控訴審判事を指名、就任させるなど布石を打ってきた。12月14日に各州の選挙人による投票が行われるが、共和党が州議会の多数派を占めるペンシルベニアなどでは裁判中を理由に選挙人が決まらない可能性があり、そうなればバイデン氏が過半数の270人に届かないことがありえる。
その場合は連邦下院が大統領を投票で決めることが定められている。連邦下院は今回の選挙でやや減らしたとはいえ民主党が過半数を占めている。しかしこの投票は50州一人ずつのため州の数では過半数を占める共和党に有利になる。
共和党が訴訟攻勢
トランプ陣営および共和党側はすでに少なくとも45州で300件近い訴訟を起こしているとされる。しかし「不正を監視できない」と訴えたミシガン州では集計が終わっていることから裁判所が却下、郵便投票が不正だと集計中止を求めたジョージア州は「証拠がない」と却下されるなどすでに多くは退けられている。
共和党のブッシュ元大統領はバイデン氏に電話し「公正な選挙結果だ」と祝福したが、共和党の政治家のほどんどがトランプ氏を支持する姿勢を変えず、バイデン氏を次期大統領と認めていない。
共和党内分裂か
トランプ支持派法的手段を擁護
共和党の指導者であるケビン・マッカーシー下院院内総務(カリフォルニア州)は8日、「合法的な投票がすべて数えられ、すべての法的な申し立てが聞き入られて初めて勝者が決まる」と述べた。ミッチ・マコネル上院院内総務(ケンタッキー州)も9日、バイデン氏の勝利を認めず、「トランプ氏は不正に挑戦する権利が100%ある」と語った。
トランプ氏の息子のドナルド・ジュニア氏とエリック氏も戦いを続けるよう呼びかけているが、CNNは8日、娘の夫でジャレッド・クシュナー上級顧問と妻のメラニア氏が負けを認めバイデン氏の勝利を受け入れるようトランプ氏に進言したと伝えた。ただしトランプ陣営のジェイソン・ミラー報道官はこの報道を否定している。
欧州、日本は祝意
ロシア、北朝鮮は沈黙
ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領など欧州首脳は7日のバイデン勝利が報じられるとほどなくしてバイデン氏に祝辞を送った。トランプ氏と関係が深い首脳では、イギリスのジョンソン首相はやや遅れたが7日中に、イスラエルのネタニヤフ首相は半日遅れて8日に、菅義偉首相も9日未明(日本時間)に「バイデン氏、ハリス氏に心よりお祝い申し上げたい」と祝意を示した。中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩党委員長からは9日時点で何も発表されていない。
APによれば獲得代議員数は9日現在でバイデン氏290人、トランプ氏214人。残りはアラスカ、ノースカロライナ、ジョージア合わせた34人。今回の大統領選では約1億6000万人が投票した。投票率は73・7%だった1900年以降で最高の66%ほどになる見込み。期日前投票が1億人を超えその3分の2が郵便投票と、これらも過去最高だった。
国防長官を解任
FBI、CIA長官もか
政権移行流動化の最中
トランプ大統領は9日、マーク・T・エスパー国防長官を解任したと発表した。10日付NYタイムズ紙によると連邦捜査局(FBI)と中央情報局(CIA)のトップも解任する方針と伝えており、政権移行が流動化している時期の国家安全保障を司るトップの解任は波紋を呼んでいる。