「基地はもうこれ以上いらない」
玉城知事初来米、NY大で講演
玉城デニー沖縄県知事が初来米し11日、ニューヨーク大学で「多様性の力、民主主義の誇り」と題して講演した。在米沖縄県出身者や米国市民らを前に、名護市辺野古での日本政府が進める新米軍基地建設の強硬策を批判し、米国市民に直接沖縄県の基地問題に関する現状について説明した。この中で沖縄だけが負担を強いられていることに対する意義申し立てが国と法律によって門が閉ざされている状況について、民主主義国家としての疑問を呈した。
同知事は国会議員時代に3回、2009年から18年まで来米経験があるが10月4日に知事に就任して今回が初の来米となる。多様性の持つ力、沖縄の民主主義を語るため「多様性にあふれる都市ニューヨークでの講演になった」と語った。同知事は「沖縄は戦後73年、米軍基地の問題と戦い続けている。名護市辺野古の新基地建設は後戻りできない事態となっている。新しく知事となり、新基地建設阻止へ今後どのような手段があるのか、日本のメディアが注目している。沖縄だけに解決策を問うのではなく、日本とアメリカの市民が自分のこととして考え行動の指針とすることを望む」とし、「この対立は、反米、反基地というイデオロギー的な主張ではなく、もうこれ以上基地はいらないという沖縄住民の生活者としてのリアルな声だ」と訴えた。同知事は翌日国連を訪問、ニューヨーク滞在の後、ワシントンDCでも同主張を訴えた。
「もうこれ以上基地はいらないという沖縄住民の生活者としてのリアルな声を届けたい—」。玉城デニー沖縄県知事が初来米し、11日、ニューヨーク大学で「多様性の力、民主主義の誇り」と題して講演した。沖縄の辺野古における新基地建設問題の現状について語った(1面に記事)。講演要旨は次の通り。
「沖縄県の人口はいま145万人。ハワイと肩を並べるほど好調な観光産業を中心に発展を続けている。県全体の収入に占める基地関係の収入はわずか4・5%にしか過ぎない。沖縄は基地経済に依存している訳ではない。沖縄の国土の面積は日本の全体のわずか0・6%、そこに日本国内にある米軍専用基地の70・3%が集中している。圧倒的な集中でもかかわらず、日本政府は辺野古での新基地建設を強行している。沖縄県民の60%から70%が反対している。沖縄が現在直面している政治問題として、私は、すべての米軍基地の即時閉鎖ではなく、辺野古の新建設という沖縄県民に対するさらなる負担の増加に反対しているのだ。日米安保は支持するが、米軍基地は来ないでほしいとい矛盾を抱えている。その矛盾を当たり前のように押し付けられているのが沖縄の住民だ。日本が民主主義の国家であるというなら、米軍基地を巡って政府と国民の間にある矛盾に向き合ってそれを解決するべきだ。その矛盾を沖縄に押し付けられている以上、沖縄のことを抜きにして日本の民主主義の問題を解決することは不可能だと沖縄は言わざるを得ない。沖縄県は8月31日、辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認を撤回した。これに対して政府は行政不服審査法を用いて撤回の効力を無力化した。これは、政府が私人になりすまして法を捻じ曲げて権力を行使したものだ。法治国家にあるまじき行為として非難する。米軍基地を優先するため政府は法の例外規定まで沖縄に押し付けている。アメリカも当事者だ。沖縄県は、日本と米国と沖縄の三者会談を持ちたいと切望している。アメリカはそれは日本国内の問題だと片付けてしまう。沖縄がアメリカに苦情を言うとアメリカは日本政府に伝え、日本政府は地位協定を使って沖縄を切り捨てる。民意の声はなかったかのように消されていく。米軍基地問題に関する沖縄の声を聞く政治家は日本にも米国にもいない。こうした状況のなかで、沖縄県民はどのようにして声をあげていけるのか。基地を作る日本、基地を使うアメリカ、どちらも責任の当事者だが、沖縄の声はどこに届ければよいのか。民主主義のあるべき姿をどこで沖縄県民は掴むことができるのか。民主主義の尊厳をアメリカと共に分かち合いたいという願いはどのようにすればつながることが可能なのか。尊厳は非常に大切だ。沖縄と真摯に向き合うべきだ。沖縄の民意をおろそかにすることはアジアの安全保障上でパンドラの箱を開ける鍵になるだろう。県知事として米国に、沖縄に駐留する地域住民の民意を尊重してもらいたいと強く求める。日本はアメリカにとって、最も重要な同盟国のひとつだが、一方で沖縄を民主主義から排除するという姿勢を支えている。安全保障問題は右とか左とかのイデオロギーの問題ではなくリアリティーの問題だ」。 (講演要旨は抜粋)