米大統領選挙まであと10日、大接戦で予測困難

リードのハリス氏失速もなお流動的

 米大統領戦は11月5日の投開票日まで2週間を切った。激戦州のジョージア州やノースカロライナ州でも10月中旬から期日前投票・郵便投票が始まった。民主党候補は、撤退したバイデン大統領に替わったカマラ・ハリス副大統領が共和党候補のトランプ氏を上回る支持率を出していたが10月に入ってからは失速している。

 政治サイトのリアルクリアポリテックスがまとめている10月4日から20日までの13社の全国世論調査の平均では、ハリス氏支持が49・2%でトランプ氏支持の48・2%を依然として1・0%上回っている、しかし9月30日から10月15日までの平均だとハリス49・3%。トランプ47・7%でハリス氏が1・8%優勢だったが、その差を詰められている。とはいえ2%以下は誤差の範囲とされており予断は許されない状況だ。

 米大統領戦はニューヨーク州などブルーステートと呼ばれる民主党候補がほぼ勝つ州、テキサス州などレッドステートと言われる共和党候補がほぼ勝つ州はほぼ決まっており、民主が勝ったり共和が勝ったりするいわゆるスイングステート(激戦州)が当選の鍵を握っていると言ってよい。今回の激戦州はペンシルベニア(19)、ノースカロライナ(16)、ジョージア(16)、アリゾナ(11)、ウィスコンシン(10)、ミシガン(15)、ネバダ(6)とされる(数字は選挙人数)。2020年と同じ結果になると仮定すると、激戦州を除く獲得選挙人の数は民主229人、共和216人。残りの激戦州の計93人の選挙人を争う形になり、過半数の270を取るには民主が41人、共和が54人必要となる。

 リアルクリアポリテックスがまとめた9月下旬から10月17〜20日までの各社世論調査の平均では、激戦州7州すべてトランプ氏がハリス氏の支持率を上回っている。このままだと仮定するとトランプ氏の地滑り的勝利の可能性が出てきた。ハリス氏は、9月上旬時点でジョージア、ミシガン、ネバダ、ウィスコンシンの4州でトランプ氏を上回る支持率だったことを考えると失速は否めない。トランプ氏に勢いがあるものの、その差はウィスコンシン州で0・2%、ペンシルベニア州でも0・8%とまさに僅差で、誤差の範囲に留まる。

 各社の世論調査を厳選して独自の集計と平均を出している政治サイトのファイブサーティーエイトによる10月21日時点での支持率は、全国世論調査ではハリス氏がトランプ氏を1・8%上回っている。激戦州は、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、ネバダはタイ(同率)、ノースカロライナ、ジョージア、アリゾナはトランプ氏が1〜2%の差でハリス氏を上回っている。

トランプ対ハリス
両者非難の応酬激化

 10月21日付ニューヨーク・タイムズ紙は「ハリス陣営はトランプ氏は大統領に不適格で危険な人物として描くことに大きく転換した」と報じている。ハリス氏は最近の集会ではトランプ氏は「不真面目で残酷な男」であり、分断をあおる発言をしていることを激しく非難している。タイムズは、国民がもっとも重視する経済問題でのトランプ氏優位を覆すためにトランプ氏への攻撃が激しくなっていると書いている。またハリス陣営は78歳になったトランプ氏の健康問題も取り上げている。

 激戦州では黒人票も鍵を握る。ハリス候補は黒人系だが、ニューヨーク・タイムズが12日に発表した世論調査によれば、黒人のハリス氏への支持率は78%で、トランプ氏の15%を大きく引き離しているものの前回のバイデン候補が90%の支持に比べると低い。全米黒人地位向上協会(NAACP)の最近の調査では50歳未満の黒人男性の4人に1人がトランプ氏を支持しているという。このためオバマ元大統領が黒人男性にハリスに投票するよう呼びかけるなどしている。

 一方のトランプ氏は最大の激戦州といわれるペンシルベニア州で20日、バックス郡フェスタービルにあるファストフード大手のマクドナルドでエプロン姿で従業員体験をし、庶民派であることをアピールした。「ハリスがマクドナルドで働いたことがあるというのは嘘だ」と根拠なく述べたりした。近くではトランプ派数百人と反トランプ派が互いに非難の応酬をしていた。

 トランプ氏は外交問題にも答えており、18日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されたインタビューでトランプ氏は「中国が台湾に侵攻すれば中国製品にかける関税を150〜200%に引き上げる」と述べた。関税の大幅引き上げを警告することだけで、侵攻を抑止し、封鎖を解除できると述べている。台湾封鎖時に軍事力を使うかとの質問に「使う必要はないだろう。習氏は私に敬意を示しており、私が変わり者であることも知っているからだ」と述べた。