ノーベル物理学賞受賞の気象学者
3年前に本社来社「水のリサイクルが人類の課題」
今年のノーベル物理学賞賞を受賞したプリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さん(90)は、温暖化を計算機で予測した最初の気象学者だ。今から3年前の2018年5月、地球科学分野でのノーベル賞といわれるクラフォード賞を受賞し、同月スウェーデンのロイヤルアカデミーで行われた授与式に出席する直前、同氏は、ニューヨーク生活プレス社の週刊NY生活編集部を訪れ、研究について持論を熱く語った。当時の記事(本紙2018年5月12日付)から研究に関する発言を抜粋し、今回のノーベル賞につながった同氏の考えを改めて紹介する。
真鍋さんは、1931年愛媛県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。米海洋大気局地球流体力学研究所上席気象研究員、プリンストン大学客員教授などを歴任した気象学者で、計算機を使った地球温暖化の予測を世界で最初にした人だ。来米したのは1958年。東大博士課程修了と同時に米国気象局で地球の気候をコンピューターを使って再現する「気象モデル」の開発チームに加わり、67年大気と気温の関係を一刀両断に解き明かした論文を発表した。大気を地上から上空まで「1本の柱」と考え、空気の対流や熱の放射などの条件を加味して、複雑な大気の状態を必要最小限の重要な要素で単純化したモデルで明らかにした。
「あれが一番よくできた論文。ホームランでしょうな」
気候の研究で行き着くところは、最後は水の問題。「水の奪い合いが国際紛争の元凶」だと言う。干ばつ地からの脱出と民族移動、熱帯地での大洪水。「最後は水のリサイクルにぶち当たる」と熱く語った。
ノーベル賞を受賞した気象学者は今、「気候」の観点から地球規模の文明の衝突に思いを馳せていた。(三浦良一記者、写真も)