春夏秋冬
久保修ワールド FEEL JAPAN NOW
日本の美しい秋の農村原風景を一つ選ぶとしたら、棚田があるだろう。
山間部など傾斜面に階段状に作られた棚田は、一つ一つの水田は小さいが、効率的に米を収穫する先人の知恵が多くの部分で見られる素晴らしい場所の一つだと思う。
山の斜面に作られた棚田や場所によっては、海や川が見られる棚田風景は魅力的で作品にしたくなる場所が多い。
春の田植え前に水田に張られた水が鏡のように煌めき、のどかな里山の美しさを水面に映し引き立ててくれる。夏は、成長した稲穂の瑞々しい緑と海の青、その向こうの青い空のコントラストがとても美しい。秋は、収穫時期の黄金色の稲穂が風に揺れて情緒ある光景は感動を与えてくれる。
冬は、真っ白な雪に包まれて雪化粧した美しい棚田の曲線が幻想的で自然の創り出すアートだと思う。
最近は、イルミネーションを点灯させて夜の棚田を浮かび上がるような演出もあるが、僕は夕日や月明かりの自然の力で見るのが好きだ。
このように魅力的な棚田を、昔ながらの農法と年間を通して異なる表情を持つ美しい景色を守り続けていただきたいと思っている。
今年も間もなく届く棚田で取れた新米は、自然の恵みですくすくと育ち農家の「人」の手間暇かけて採れた味は、「ねばり」「甘み」「旨み」を感じる。
大きいお握りにして食べるのが待ち遠しい。
(くぼ・しゅう、東京都在住、切り絵画家)