愛と孤独の淵で Ad Astra

 デビュー作「リトル・オデッサ」(1994年)でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞して以来、「Immigrant」(エヴァの告白」、「ヒッチコック/トリュフォー」など質の高い作品を生み出しているジェームス・グレイ脚本・監督の新作。
 主演はブラッド・ピット。現在公開中の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」とはまったく違ったアプローチの演技でストイックな宇宙飛行士役に臨む。
 近未来における人類にとっての宇宙空間をできる限りリアルに描き出したいというグレイ監督の壮大なスペースオペラ。ビジュアルの美しさは言うまでもなく、画面に映し出される「宇宙」にふっと身体が吸い込まれそうな錯覚に陥るほどの臨場感が伝わってくる。
 ピット扮するロイ・マクブライドの父親にトミー・リー・ジョーンズ。ロイの妻にリヴ・タイラー。ドナルド・サザーランド、ルース・ネッガらが共演。
 ロイの父親クリフォードはまだロイが子供の頃に地球外生命探査のため宇宙に旅立った。その16年後、クリフォードは消息を絶った。父を誇りに思い愛したロイは同じ道を進み優秀な宇宙飛行士となった。
 すでに地球から月には民間ロケットが頻繁に飛ぶ時代で、米国は宇宙防衛の軍隊を擁し、ロイは軍に属している。ロイは実際の任務をこなしつつも、父親の失踪の謎をずっと心の奥に抱えていた。
 ある日、軍上層部から父親が生きている可能性が告げられる。しかも太陽系を滅ぼしかねない未知の力の存在に父親が関わっているという。ロイは謎の解明のために最後に父親が消息を絶ったと思われる海王星に向かって旅立つ。
 広大な宇宙の旅と父子のつながりを映すヒューマンドラマをドッキングさせ、夢とロマン、そして愛と孤独を描き出す。スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」(68年)は別格として、「ゼロ・グラビティ」、「The Martian」(オデッセイ)、「ハイ・ライフ」など近年のスペースもののレベルをさらにアップさせている。瞬きをするのが惜しいほどの素晴らしい映像美だ。表情で見せるピットの演技にも注目だ。2時間4分。PG-13。(明)
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■上映館■
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Cinepolis Chelsea
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