リップシャッツ信元夏代・著
朝日新聞出版・刊
日本で生まれ育った純粋な日本人でありながら、全米スピーチコンテストのニューヨーク大会で4連覇を果たすという快挙を成し遂げたリップシャッツ信元夏代さん。プロフェッショナルスピーカーとして磨いたスピーチ力と、戦略コンサルタントとして磨いてきたロジカルシンキングを合わせて独自のブレイクスルー・メソッドを構築してきた彼女が著書にまとめた。20文字でこの本一冊のすべてを言い切れと言うなら「言いたいことはスバリと伝える。それに尽きる」だろう。つまり回りくどい言い方はしないということ。
「自慢話は聞きたくない。でも成功した人の話は聞いてみたい」。そんな人が目の前で自分が話すのを待っている。そんな時、1から10まで全部を話すのか、それとも言わずもがなのことは、端折って話すのか、それは相手との距離で決まるもの。
同書では、想像する部分や相手の思惑を推し量ることが多い発言を「高コンテクスト」という表現で使い、口に出して言ったことがすべてで、それ以上でもそれ以下でもないというような発言を「低コンテクストな発言」と表現する。言ったことが確実に相手に伝わるためには低コンテクストで話すことを心がけよと教えている。
言ったことをそのまま真に受けてくれる素直な聴衆ばかりなら苦労はないが、「そうは言っても」と異論を挟む意見者がいるものだ。そういう人もひっくるめて自分の話に引き込む方法とは—。
この本では「相手目線で聞く人の側に立って分かり易く言うことの大切さを説いている。最初の一言、ふた言で聞く人の心を掴むのが大切なのは日米のスピーチでも共通。聴衆が日本人ばかりなら、自慢話はドン引きされるのがオチだが、アメリカ人には必要以上の謙遜や言外の行間を読んでもらうという芸当は通じない。「低コンテクスト」でストレートに言うべきことを伝えないと伝わらないというのがアメリカの現実。オブラートに包んで上品にやったとしてもしっかりそこは外さない。
掴みで、アメリカ人の多くは、ジョークを一発かませるのが一番手っ取り早い方法だと思っているふしがある。会場が沸いたらあとはこっちのもの、コ難しい話も少しの間なら耳を傾けてくれる。この本は、話し方を教えてくれるだけでなく、情緒的に流されやすい日本人の思考をロジカルなストーリーに組み直してくれる、そんな新しい発見とヒントに満ちた本だ。(三浦)
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■講演会のお知らせ=信元さんは20日(金)午後7時からマンハッタンで講演する(インスパアトーク主催)。参加費は一般35ドル、学生30ドル。会場は西31丁目25番地3階。申し込みはrsvp.inspiretalkny@
gmail.com まで。