表現の自由か煽動か

NY画廊であいちトリエンナーレ報告会
「明日少女隊」のメンバー、慰安婦を語る

 この夏、芸術表現の自由をめぐり、日本で大きな議論が巻き起こった。あいちトリエンナーレ2019が名古屋市でオープンした2日後の8月3日、「表現の不自由展その後」展が中止されたからだ。同展に韓国の作家キム・ウンソンとキム・ソギョンによる「平和の少女像」のインスタレーションが入っていた。これは第2次世界大戦中にアジアで日本軍のために性的労働を強制された慰安婦を象徴するものだ。トリエンナーレの事務局には、同インスタレーションに関する約1400件もの苦情が殺到し、8月2日、河村たかし名古屋市長が大村秀章愛知県知事に同インスタレーションの撤去を要求した。
 ニューヨークのハーレムにあるアートギャラリー、ホワイトボックス・ハーレム(東121丁目213番地)は17日(火)午後7時から、戦後日本美術を研究するネット集団「ポンジャ現懇(富井玲子主宰)」と共催し、ラウンドテーブル形式でこの問題の経過について報告し、日本における美術と政治を取り巻く問題について考えるトークイベントを開催する。
 出席するのは、同トリエンナーレのアーティスト(加藤翼氏)と2013年愛知トリエンナーレのキュレーターで、アーツ前橋館長/東京藝術大学大学院准教授の住友文彦氏の2人がスカイプで参加、手塚美和子ポンジャ副主宰が事件の経過報告と最新情報を提供する。コンメンテーターは、ニュージャージー市立大准教授の由本みどり氏。またフェミニストのアート集団である「明日少女隊」のメンバー、尾崎翠さん、ケイト・ミレットさんの2人が、男女平等と人権の問題として慰安婦の社会史的背景を語る。 
 同ギャラリーの日本人キュレーター、佐藤恭子さんは開催の動機を「世界に情報発信をして皆さんに話をしてほしい。世界のアート最前線のニューヨークからの声をポジディブな風として日本に送りたいというのが理由」だという。慰安婦像の芸術展参加について「芸術を隠れ蓑にした政治プロパガンダではないのかという意見もある」との本紙の質問に対し、「アーティストは、市民としてそれぞれ意見を持っている。その上で『表現の自由』が守られねばならず、政治が介入することは民主主義の考え方に反する」と佐藤さんは語る。