公共の場でマスク禁止

反ユダヤ主義運動を警戒、NY州ナッソー郡

 ナッソー郡のブルース・ブレイクマン行政長官(共和党)は15日、物議を醸していたマスク着用禁止法案に署名した。公共の場で身元を隠すためにマスクや顔を覆う物を着用することは犯罪となる。この法律に違反すると、懲役1年または1000ドルの罰金が科せられる軽犯罪となる可能性がある。 ただし「健康、安全、宗教、文化的な目的のため、またはマスクや顔を覆う行為が習慣となっている祝日や同様の宗教的、文化的行事を平和的に祝うため」にマスクを着用する人は、この法律の適用外となる。

 共和党が多数を占める同郡議会は8月5日、マスク着用禁止法案を賛成多数で可決していた。ハワード・コペル議員(共和党)は、昨年10月7日のイスラエルとハマスの戦争勃発以来、「マスクを着けた人々によってしばしば引き起こされる反ユダヤ的事件」にマスク着用禁止法は対応していると述べた。パレスチナ支持派のデモ参加者は、公道や大学のキャンパスで集会を行う際、しばしばマスクを着用している。ほとんどは非暴力的だが、共和党議員らは、マスク着用禁止法は抗議活動中の犯罪削減や反ユダヤ主義事件の防止に役立つとしている。

 署名したブレイクマン行政長官は記者会見で「この新しい法律は日常的な犯罪と闘うための手段でもあると考えている」と述べ、「マスクを着けて万引きやカージャック、銀行強盗をする人たちを我々は見てきた。こうした行為を我々は阻止したい」と語った。また「顔を隠しながら犯行に及ぶ意図のある人をターゲットとしており、意図の有無はナッソー警察が判断する」としている。 

 全米黒人地位向上協会(NAACP)や名誉毀損防止連盟などの公民権擁護団体も、抗議活動でのマスク着用をクー・クラックス・クラン(KKK)のフードに例えて禁止するよう呼びかけていた。犯罪防止の観点からは、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長が昨年、強盗を阻止するため、店に入る際にマスクを下ろすことを拒否する客の入店を禁止するよう店主に奨励した。

 ニューヨーク州のキャシー・ホウクル知事も今年6月、ニューヨーク市の地下鉄システムでのマスク着用禁止を検討していると述べたことがある。

 一方、この法律が新型コロナ感染者の急増などから自分や他人を守ろうとする人々を抑圧することになるのではないか、また顔を隠そうとする抗議活動者を取り締まる手段だと批判する声がある。