感染力の高い変異種「エリス」
ニューヨーク市では新型コロナ感染が増えており、市保健局によると14日時点での過去7日間の1日のあたりの新規感染者数は672人で、7月1日時点で同252人から一貫して増加傾向が続いている。入院は40人で、死者は1人だった。感染者が多いのはブロンクスとクイーンズで特にクイーンズのフラッシングとクリアビューに急増が見られた。NY市保健委員のジョン・ジョンソン博士は「入院している重症患者の大部分はワクチン未接種者。これまでにワクチン接種を受けていない人は接種に行くように」と訴えている。
ニューヨーク州保健局も17日、州全体で新型コロナ感染者が増えており1週間あたりの入院患者は先週と比べ14%増の934人にのぼったと発表した。1日の新規感染者は20日で767人だった。
今夏、ニューヨーク州やカルフォルニア州など米国の複数の地域で数か月ぶりに感染者の増加が見られる。感染増加の原因としては旅行など人の行き来が増えたこと、冷房のついた部屋に長くいることなどが考えられているが、EG・5という新たな変異種が注目されている。米疾病管理予防センター(CDC)によれば、全国の感染のうちもっと多いのはEG・5変異種で7月第1週では7・5%だったのが8月第1週になると17・5%を占めた。以下XBB・1・16 が15・6%、 XBB・2・23が11・2%、XBB・1・5が10・3%と続く。ここ半年はXBB変異型がもっとも流行し、EG・5は今年4月時点では0・4%に過ぎなかった。
世界保健機構(WHO)によればEG・5は今年2月に初めて出現した。米国だけでなく、アイルランド、フランス、英国、日本、中国でも急速に広まっており、WHOは9日、EG・5の位置付けを「監視中」から「注目すべき変異種」に引き上げている。
EG・5はオミクロン株の子孫であり流行の主流だったXBBの亜種(派生型)になる。通称では、グエルフ大学(カナダ)のライアン・グレゴリー教授(生物学)が付けた非公式名「エリス」と呼ばれている。ニューヨーク市保健委員のアシュウィン・バンサン氏は「よいニュースは感染力や致死性が高いと示唆するものはなにもないことだ」と述べている。
しかしコロンビア大学のデイビッド・ホー教授(微生物学・免疫学)が「他の変異種より重症化するといったわけではないが、免疫逃れが多いため世界中で広がっているのではないか」との見方を示すなど、XBBより感染力が強いと見られる。
EG・5・1という派生型もあり、こちらも広がっている。ただしこれらが感染拡大の原因となっているとの確かなデータは現在の ところない。
EG・5はXBB・1・5に極めて近いため、ワクチンの追加接種についてはXBB・1・5対応のワクチン接種が始まる9月末まで待った方がいいとCDCは述べている。