編集後記 8月22日号

■【編集後記】8月22日号

  みなさん、こんにちは。コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所は13日、新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂氏と加藤友朗コロンビア大学医学部外科教授を迎え、「新型コロナとの闘いから得られた教訓、東京とニューヨーク」と題したウェビナーを開催しました。当日は伊藤隆敏コロンビア大学国際関係公共政策大学院教授が司会、世界30か国から615人が視聴しました。
  尾身氏は「日本は感染防御と経済拡大を両立して考えようという取り組みだ」と日本の新型コロナウイルス対策のスタンスを伝え「クラスターの早期発見、医療供給体制の確保、市民の行動変様の3本柱を考えて早い段階で新型コロナウイルス感染症の伝播の特徴を把握した。東京など大都市の夜の街から人の移動を通して地方都市、全国に広がっている流れがつかめている。そこに重点的に防御対策をする」ことも大切な選択肢であることを説明しましたが「今後のジレンマは経済が疲弊していることをどうするかだ」とも述べました。
 加藤教授は「自分自身も重傷感染した経験を持つが、NYで初期に感染爆発が起きたのは、マスクをする習慣がなく公共交通機関を使う人が多かったこと、緊急事態宣言をするまでに300万人が欧州から入ったことが原因。その後、厳しいロックダウンと自宅待機をやったことが奏功した」とニューヨークのこれまでの推移を説明した上で「社会経済活動再開は非常に慎重に行っているが予断を許さない。感染症の専門家は感染をいかに防ぐかをまず考えるべきで、経済活動のためにも(医学的な)安心をまず担保することが優先だと思う」と述べました。つまり医療の現場にいる立場からはあくまでも感染拡大の防止と医療制度の充実をポイントに考えるべきで、経済活動再開は政治家の判断と分離した考え。加藤教授がちょっとだけ尾身氏に反論したような場面とも見えました。日本側は経済界からの様々な再開に向けた陳情や圧力が専門家に来ているのか、医療の専門家ですら経済を忖度した発言になっていたのが対照的でした。まあそんなことまでは紙面には書いてませんけど、日米のコロナに対する姿勢の違いが見えた瞬間でした。今週号の4面です。加藤教授は「ひどい経験をしたところと、そうでないところとでは、結論は出ないのかもしれませんが」と対談の中で発言していたのもスペースの関係で記事本文からは削られてしまいました(削ったのは自分ですけど)。
 4月上旬あたりは毎日、1日800人近くが死亡していたニューヨークの人間から見たら日本が今深刻な拡大になっていると報道されているのを見ても、本当に拡大したら今の何十倍もの感染爆発が起こってもおかしくないくらいの「感染の伸びののりしろ」が日本にはあるのではないかと思ってしまいます。アメリカで感染者数が伸びても死亡者が減っている為に「ウイルスが弱毒化しているのではないか」との問いかけも司会からありましたが両氏は弱毒化を判断するのは時期尚早としました。あと、日本にはアメリカのような強制力がないのも問題だと指摘がありましたが、これは日本国民は国が国民に対して強制力を持つことに対してとても敏感ですからね。戦争体験からしても。お願いベースです。取り組み難しいです。それでは、みなさんよい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)