NYで被爆者が証言

広島の田中さん
長崎の小川さん

 日本の非営利組織ピースボートの大型客船が6月16日と17日、ニューヨークに立ち寄り、被爆者2人が証言を伝えて、世界平和を訴えた。今回、同船で世界を回っているのは、広島出身の田中稔子(としこ)さん(85)と長崎出身の小川忠義(ただよし)さん(80)。16日は船上で、17日は国連プラザで証言を伝え、若者を中心とした聴衆と交流した。

(写真上:証言を伝える田中さん(左)と小川さん)

 田中さんは6歳の時に被爆、意識不明の重体から回復したものの級友はほぼ死亡した。2009年から7年間、非営利組織ヒバクシャストーリーズ(本部・ニューヨーク市)の招聘でニューヨークに毎年来て証言活動を行っていたこともあり、ニューヨークは「懐かしい地」と話し、16日は英語で17日は日本語で証言し、最後に「世界に親しい友人をつくってください。そうすれば友人の国に原爆を落とそうとは思わなくなる」と世界平和を訴えた。

 小川さんは1歳の時に被爆、数か月前に郊外に疎開して一家は助かったが母親に背負われ実家の様子を見に行った際に「入市被爆」した。父親が早く亡くなり一家が苦労した体験を淡々と語り、「核廃絶が実現するまで証言活動を続ける」と力強く話した。また09年から仲間と立ち上げた「長崎忘れないプロジェクト」についても説明し、「8月9日11時2分に写真を撮影して、送ってください」と、長崎の原爆投下を風化させないための取り組みへの参加を呼びかけた。集まった写真は長崎の博物館に展示されるという。

スーザン・ストリックラー監督と共に上映に立ち会ったプロデューサーの竹内さん(左)

 ユタ州ソルトレイクシティ出身で核兵器実験の被害について活動する作家のメアリー・ディクソンさんも同席し、自らの甲状腺がんの闘病体験などを語った。17日は、マーシャル諸島教育機関のベネディック・カブア・マディソンさんも同席、同諸島で1946年から58年の間に67回行われた米国による核実験に起因する健康被害(異常出産、流産、がん、糖尿病など)が世界的に見ても多い状況について報告、また「ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに」の上映もあってプロデューサーを務めた広島出身の竹内道さんらも登壇した。

ピースボートで世界を回る小川さんと孫の長門さん

 同船は4月13日に横浜を出港、105日間で18か国21か所への寄港を予定しており、ほぼ半分の行程を終えた。会場に集まった若者からは「こんな体験を話す勇気に感動した」「聞いたことを他の人に伝えることが私たちにできること」などの声が聞かれた。小川さんの孫娘で大学生の長門百音(もね)さん(21)は「祖父の写真展活動を手伝ったことはあるが、今回初めてピースボートに乗って、毎日が勉強」と話し、各国からの若者と歓談していた。  (小味かおる、写真も)