世界に衝撃、安倍元総理謀殺

「平和な日本でなぜ」

海外メディア「暗殺」報道

 安倍元首相(67)が奈良市での街頭演説中に銃で撃たれ死亡したニュースは8日、世界中を駆け巡った。米国ではケーブルニュース局のCNN、ABCやロイター通信の電子版などがNHKの報道を引用する形で撃たれた直後から速報した。ニューヨークタイムズなど新聞メディアも電子版で報じた。NBCなどテレビ局のほとんどが8日朝のニュースでトップで伝えた。ニューヨークの地元紙のNYポストやニュースサイトのデイリービーストなども独自記事を掲載した。ほとんどの海外メディアが、元首相「暗殺」として報じ、アベノミクスなどその実績を紹介した。

 ニューヨーク・タイムズ電子版は「安倍晋三が手作りの銃で暗殺され、国家に衝撃を与える」など複数の記事を掲載した。「暗殺で平和な日本で激震」とのタイトルの記事では「安倍晋三首相の驚くべき暗殺は、暴力犯罪が稀な平和な国、日本というアイデンティティーを揺さぶった」と報じ、「ここでは銃による暴力について聞いたことはありません。テレビや米国ではいつも聞いているが、ここでは聞かない」という日本人の声を紹介した。ワシントンポスト電子版も「世界で最も銃規制の厳しい国で極めて稀な事件が起こった」と驚きをもって報道した。

 全国紙USAトゥデーは「安倍晋三暗殺にバイデン大統領はじめ各国首脳らが唖然とし、憤慨し、深く悲しんでいる」と報じた。ウォール・ストリートジャーナルは「日本の安倍晋三元首相が暗殺される」とし、日本では選挙運動中に街頭演説が行われるが、警備体制は軽微であり、首相であったとしても誰もが近づくことができる」と紹介している。

 ブルームバーグはオピニオン欄で、銃事件が少ない日本では衝撃が続いているが、「元首相や政界の大物が街角や駅前で選挙活動をしていても警官や警備員の姿が見えないのはめずらしいことではない」と紹介。執筆時点では容疑者に関する詳細は判明していないとしながらも「一つだけ確かなことは、7月8日は日本に永遠の傷跡を残す日となることだ」と書いている。

歴代大統領が追悼の意

バイデン大統領は大使公邸で弔問記帳

 安倍晋三元首相の死去を受け、バイデン大統領は8日、ワシントンにある日本大使公邸を弔問に訪れた。冨田浩司駐米大使が立ち合い、安倍氏の遺影が飾られた机に花束を手向けた。

 バイデン大統領は「バイデン家と米国を代表して安倍氏の家族と日本の国民に心よりお見舞い申し上げます。彼の死は夫人や家族、そして日本国民だけでなく世界にとっての損失です。平和の人であり、判断力のある人物でした。彼の死は惜しまれるでしょう」などと書き、哀悼の意を示した。

 また、この日行われた中央情報局(CIA)の創設75周年式典出席の際、冒頭で「安倍氏が衝撃的な死を遂げた」と語り、安倍氏とはオバマ政権で副大統領を務めていたころに何度もやりとりをしたと紹介し、「日米同盟の強化や自由で開かれたインド太平洋の実現に取り組んでいた。大変尊敬している」と語った。

 ホワイトハウスが発表した大統領声明では、「私の友人」と呼び、追悼の言葉とともに「暴力的な攻撃は決して容認できるものではなく、銃による暴力は常にその影響を受けた地域社会に深い傷跡を残すということを私たちは知っている」と書かれている。

 トランプ前大統領は8日朝、ソーシャルメディアに「世界にとってとても悪いニュースだ。彼のような人は二度と現れないだろう」と投稿した。同日、ラスベガスで行った演説の冒頭では、「非道な残虐行為であるだけでなく、全世界にとって衝撃的な損失だ」と述べた。

 仲がよかったとされる安倍氏に対し「タフネゴシエーターだった」としつつ、「平和、自由と日米の絆の揺るぎない擁護者で、全世界にとってとてつもない損失だ。安倍氏は私の友人であり、同盟相手で、すばらしい愛国者だった。彼は平和と自由、そして米国と日本のかけがえのない絆のために力を尽くすことを惜しまなかった」とその功績を讃えた。

 このほか、オバマ元大統領はツイッターに「ショックを受けるとともに悲しみを覚えている。日米の特別な同盟関係に尽くしてくれた。広島や真珠湾に一緒に訪問したことを忘れない」などと投稿。ブッシュ元大統領は「無意味な暗殺に深く悲しんでいる。2006年に初めて首相に就任した時、思いやりのあるしっかりした人物だと感じた。国のために奉仕し続けたいと願う愛国者だった」などとする声明を発表した。