みなさん、こんにちは。米国の風刺・パロディー漫画雑誌『MAD」(マッド)』が、現在発売中の2019年8月号をもってニューススタンドと一般書店での発売を中止すると発表した。今後はコミックストアか郵送による定期購読で買えるが、10月に発売される第11月号からは新しい内容はなく過去のハイライトを再掲載するだけになる。年末には新しい内容を入れた特別号を出すが定期刊行物としては事実上の廃刊で、67年の歴史に幕を下ろす。同誌は1952年にハーベイ・カーツマン氏とウィリアム・ゲインズ氏によって漫画本として創刊され、1955年に現在の雑誌の形式に切り替えられた。マスコットであるアルフレッド・E・ニューマンが表紙を飾り続け、おもに政治とポップカルチャーを取り上げた風刺・パロディー雑誌としてベビーブーマー世代の圧倒的支持を受けた。全盛期の1973年には280万部を誇ったが、近年は読者離れがひどく、トランプ大統領が民主党大統領候補のピート・ブーテジェッジ氏(37)を「マッド・マガジンのマスコットに似ている」と揶揄したが、ブーテジェッジ氏がなんのことか分からなかったことがニュースになったばかり。2015年に特別編集長を務めたパロディー音楽家で知られるアル・ヤンコビック氏は「本当に残念だ。さらば、アメリカが生んだ史上最高の雑誌よ」と廃刊を惜しんでいる。共同創刊者で生存していた一人、ハーベイ・カーツマン氏が死亡した1986年にマジゾンアベニューの同誌編集部に取材に伺ったことがある。シニカルなねずみが主人公の「マウス」が出たばかりの頃で、これは面白いと当時の編集長が見せてくれたのを覚えている。廃刊の報が流れて3日目、ニューヨークのコミック専門店「フォービドン・プラネット」にはまだひっそりと最終号と今回本紙の表紙で使った「トランプ特集」がたてかけてあった。アニメ化で巨大に成長したDCコミックやマーベルの出版物やムックが溢れんばかりの店内で、反骨精神を貫いてきた「MAD」マスコット、アルフレッドは、店内の片隅で静かにいつもの「笑顔」を見せていた。それでは、みなさんよい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)