天安門事件記念館、NYのビル内に開館

今月末に一般公開へ

 1989年に中国・北京で起きた「天安門事件」の記念館が、事件から34年目にあたる6月4日を前に2日、ニューヨーク市にオープンした。場所はエンパイアステートビル近くのビル(6番街894番地、6番街と32丁目の角)の4階。

 北京の天安門広場で1989年6月4日、民主化を求めた学生らが武力で弾圧された。事件の様子を展示する「六四記念館」は香港にあったが、香港国家安全維持法が制定され、2021年に強制的に閉鎖された。これを受けて、当時の学生運動のリーダーのひとりだった王丹さんらが中心となりニューヨークに作ることで準備を進め、8か月で50万ドルを集めて開館にこぎ着けた。(写真上:展示会場では香港で展示されていたものをそのまま公開)

天安門を取材中に襲撃された記者の血糊の着いた服の前に立つユー氏

 ニューヨークは米国で中国系住民がもっとも多く住む都市であり、また本土からの観光客も多い。また世界中から関心が集まるとの期待からこの地が選ばれた。王丹さんは「この博物館は歴史のためだけではなく、現在と未来のためでもあります。わが国の将来のために、若い世代には何かをする義務や責任があると思います」と述べている。ニューヨークの高校などとも協力したいという。 

 天安門事件での武力弾圧による死亡者数は中国当局の発表で319人。しかし2017年に公開された英外務省の公文書では1千人から3千人と推計している。およそ2000平方フィートの展示スペースには、当時掲げられていた旗や、血痕の付いた横断幕、記者が着ていた血痕が付いたシャツ、テント、当時のチラシ、兵士のヘルメットなどが展示されている。犠牲者リストには確認の取れている約200人が掲示されている。

 エグゼブティブディレクターのデイビッド・ユー氏は「この記念館は反抗の象徴です」と語っており、展示されていない写真、音声、ビデオも多数あるという。また近年の香港の民主運動関連のものも展示している。6月下旬からはインターネットで予約して誰でも見学できるようになる予定。王丹さんらはもう150万ドルを集めて記念館を拡張したいと語る。

(武末幸繁、写真・三浦良一)