アジア系米国人の歴史 

NY市すべての公立校で教科化 

 NY市教育局は5月26日、パンデミック以降急増しているアジア系市民に対するヘイトクライムの原因である無知と偏見を打破する目的で、全1600公立校でアジア系米国人の歴史を教科として取り入れることを発表した。このカリキュラムには、1882年の中国人排斥法や、全国的な鉄道建設の労働力となる一方乗車は許されなかった過去、ハーレムのベンガル系コミュニティの成り立ちなども含まれ、歴史授業に組み込まれる。今秋から一部の学校で試験的に導入し、2024年春までに全公立校で実施される。 

 ビル・デブラシオ前同市長は昨年、連邦景気刺激資金のうち2億ドルを一般教育、文化的理解を促す教育の運営の予算として承認したが、今年3月時点で支出は1700万ドル程度に留まっている。デイビッド・バンクス同局長は「人種差別とヘイトの撲滅を目指す方法のひとつは、お互いの物語や歴史を教えて学ぶことだ。私たちは他人ではなく、皆がニューヨーカーで、皆が米国人である」と話している。またLGBTQやアフリカ系黒人の歴史教育も同カリキュラムに統合することを検討している。この動きは、アジア系コミュニティーや議員たちのロビー活動が奏功したものだが、第二次世界大戦中の日系人強制収容所の歴史的事実とフレッドコレマツ氏の人権運動によって日系人に対する差別補償がレーガン政権時に行われたことが今回の教科書再編纂に盛り込まれるかどうかは未定だ。

(写真)アジア系の歴史を教科書に盛り込むことを発表するバンクス市教育局長(写真提供・NY市教育局)