改ざんの圧力明確記載
NYタイムズ紙
ニューヨーク・タイムズは6月24日、日本国内の学校法人「森友学園」の国有地売却問題を巡る財務省の決裁文書改ざんの過程をまとめた「赤木ファイル」が開示されたことを報じた。
このファイルは、決裁文書改ざんを強いられ自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員赤木俊夫さん(当時54)が改ざんの事実を記録するために作成したもの。俊夫さんの妻・雅子さんが国などに損害賠償を求めた裁判を起こし、ファイルの開示を求めていた。国側はいったんは拒否したが、大阪地裁の求めに応じ遺族側に開示することに決め、22日に雅子さんの代理人弁護士の事務所に届いた。
記事は「圧力のもと日本の役人が自殺。いま彼の話が明らかになる」との見出しで、赤木さんが2018年春に自殺する前に雅子さんに改ざんの経過を記録した文書を残していることを語っていたことから始まっている。開示されたファイルは518ページに及ぶもので、改ざんの経緯や本省と財務局との間で交わされたメールの写しなどだが、最初に財務局に改ざんを求めた国有財産審理室係長の氏名など、本省や財務局の幹部職員以外の名前は黒塗りされ分からないようになっている。
記事では、概要はすでに知られたものと指摘しつつ、「赤木さんは、右翼支持者を巻き込んだ土地取引において安倍晋三首相(当時)の妻である安倍昭恵夫人とのつながりを曖昧にすることを助けるという大きな圧力にさらされたことは疑いの余地はない。その取引のもとで昭恵夫人が名誉校長だった小学校は異常に安い値段で公有地を購入したのだ」と書いている。安倍首相(当時)が2017年2月17日に国会で「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と発言したことから、赤木さんは改ざんの圧力にさらされたのだとしている。
その上で、シンクタンク「センター・フォー・アメリカ」(CAP)の日本専門家で安倍氏に関する本も書いているドバイアス・ハリス氏の「このスキャンダルは決して終わらない。より高いレベルでの関与があったかどうかの問題は全く不明のままだ」とのコメントを紹介。「赤木ファイルの開示が安倍晋三氏の後継者である菅義偉首相と麻生太郎財務大臣に大きな政治的影響を与えることは低い」としつつも疑惑を投げかけていることには変わりなく、「それは日本の政治の将来を複雑にし、政権復帰を準備していると噂されている安倍氏の政治的功績も傷つける可能性がある」としている。
また、「権力を官僚から首相官邸に移してきた安倍氏の統治方法について厳しい疑問を投げかけている」との東京大学先端科学技術研究センターの牧原出教授(政治学・行政学)の見解を紹介。財務省の決裁文書改ざんは「日本を悩ませてきた政府の透明性の問題への注目を新たにした」とし、ほかの例として政府当局者が安倍首相が主催する「桜を見る会」の招待者名簿を故意に破棄したり、政府が経済統計を改ざんしたことなどを挙げ、犯罪まがいの公文書改ざん事件が日本で起きていることを指摘している。
記事は、麻生財務大臣が新たな調査を開始する予定はないと述べていることに対し、雅子さんが「麻生氏と財務省関係者は調査される立場であり、調査を行うべきかどうかを言う立場にはない」と語っていることで締めくくっている。