米国など15か国90人超
天然痘に似た症状が出る「サル痘」の感染者が5月7日に英国で発見されて以来、フランス、ドイツ、スペインやポルトガルなど欧州や米国、カナダなどで感染が報告されている。スイス、オーストラリアのほか中東のイスラエルでも見つかり、23日までに英国の57人を筆頭に、15か国で90人を超える感染者が確認された。感染疑いも50人を超えた。
世界保健機関(WHO)は23日、アフリカの一部地域で散発的に感染が起きていたサル痘が、今回はウイルスが定期的には循環していない欧州を中心に拡大していることに注意していると発表した。近く、医療従事者向けのガイダンスを発表する。専門家によれば、ヒトからヒトへの感染はしにくいことから市中感染のリスクは低いという。
米国ではマサチューセッツ州の保健当局が18日、サル痘の感染者を1人確認したと公表した。最近、カナダに渡航していた。そのカナダではケベック州で2件の感染を確認した。またモントリオールの保健当局が、サル痘の疑いのある13人を調査中という。
ニューヨーク市保健精神衛生局(保健局)は20日、サル痘の可能性のある2人の患者の検体を公衆衛生研究所がテストしたところ、一人からサル痘が属するウイルスのファミリーであるオルソポックス・ウイルスの陽性反応が出たと発表した。
米疾病対策センター(CDC)による確認はまだだが、患者は推定陽性として扱われ隔離され、濃厚接触者の追跡調査も行われている。市保健局は、もしリンパ節の腫れや発疹を伴うインフルエンザのような症状が出たら医療機関に連絡するよう求めている。
サル痘は1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて確認された。中央アフリカや西アフリカで散発的に発生する風土病で、2021年12月から22年5月までに、カメルーンで25人(5人死亡)、中央アフリカで6人(5人死亡)、コンゴ民主国共和国で1238人(57人死亡)、ナイジェリアで48人(死亡例なし)が報告されている。
これらの地域以外での感染例は通常、この地域への渡航歴と関連があるという。2003年に、ガーナからペットとして輸入された小動物を発端に、米国内で47人が感染したことがある。 日本ではサル痘感染の例はなく、今回も23日までに報告はない。