コロンビア大生大爆笑のNY講演会

渡辺直美さん

日米のコメディや体験大いに語る

 ドナルド・キーン日本文化センターは4月12日夕、コロンビア大学ミラー劇場で、日本のお笑いタレント、女優、モデル、そして包括的なファッションデザイナーの渡辺直美さんの講演会を開催した。2023〜24年度第15代目千宗室レクチャーで「NAOMI TAKES COLUMBIA」と題した講演は650人の満席だった。

ドナルド・キーン日本文化センター主催

「私みたいなラフな生き方も」

 講演は同日本文化センター所長でコロンビア大学東アジア言語・文化学部ハルオ・シラネ教授との対談形式で英語で行われ、幼少の頃、台湾語と日本語が混乱してディズニーのシンデレラをアニメで見た時にストーリーがよく理解できずにカボチャがどうして馬車に変わるのかもわからなかったなど、バイリンガル・バイカルチャルの間で育った子供時代を振り返りながら、人間関係とコミュニケーションを十代の時のアルバイト先で身につけたなどと話した。インタビュアーのシラネ教授から「コメディーは、その国の文化背景をよく理解しないと難しいのではないか、アメリカでコメディアンとして活動することの日米の違いは何か」と問われると「日本の漫才は2人で舞台に立つが、アメリカのスタンダップコメディは1人の漫談形式が主流。日本では頭を叩いたり、どついたりすることが多いがアメリカでは相手を叩いたりするのはご法度。自分はファッションやバイラルなパフォーマンスが好きだが、日本では漫才師としての芸を磨くことを求められるところが自由な雰囲気のアメリカと異なる」などと日米のお笑いスタイルの違いを話した。

 自分自身を限定しないアメリカのスタイルが自分にあっているとも述べ、また、アメリカは州によって観客の雰囲気も大きく異なり「まるで別の国に行ったようだ」とも話し、「でも面白いものは世界一緒だと思う」と英語とボディランゲージで答えた。

会場と一体のエンターテイナー

 大学の講堂で大学教授相手に英語でコメディについて1時間半話すというのは渡辺さんにとっても初体験のこと。「会場からどんな反応が来るのか自分でもドキドキしていた」と講演後に語ったが、「わーっと舞台に出て行った時に客席に子供がいたので、あ、今日は下ネタはまずい」と瞬間的に思ったという。会場の日本人留学生から「日本の祭りを大学でやる時に、盛り上げる方法をアドバイスして欲しい。盆踊りをやるにしても伝統的な日本スタイルだけでなくニューヨークらしい表現はないものか」との質問には「スケートボードに乗って盆踊りしたらテレビで放映されて一躍有名にるかも」などと答えた。 

 「ニューヨークに来て一番大変だったことは何か」との質問には「住宅にネズミやゴキブリが出てびっくりしたこと、日本は清潔。シャワーヘッドが固定されていて動かないのは不便」などと話した。シラネ教授が「ニューヨークのアパートは古いですからね」との常識的で真面目な反応が、渡辺のジョークと絶妙な間を生み出して会場の大爆笑を何度も誘った。「コンビを組んで2人でデビューしては」という声も出たほどの盛り上がりに「コンビ名考えて下さい」と返す場面も。また会場との質疑応答のやりとりで渡辺さんが英語の意味に戸惑う場面では、最前列正面で見ていた森美樹夫NY総領事が客席から何度も助け舟を出していた。

 「ドキドキの体験」

 講演後、渡辺さんは「ドキドキのすごい経験をさせてもらいました。日本のザ・お笑いとは全然違う。大学教授と1時間半話すというのは自分にとっても全く新しい経験でした。真剣にがっつり自分について語るのがどうなるのかなって自分でドキドキでした。私的にはこうやってラフに生きてくれてもいいんだなと思ってくれたらいいなと、それが少しでも伝わればいいなと。コロンビア大学で真剣な話をしながら面白い話ができて楽しかった。いろんな人と喋れてよかった。去年はニューヨークに全然いなくて英語生活から離れていたので英語がしっかり喋れなかった。今日は英語の先生も来ていて事前に何度も練習したんですけど、本番では全部吹っ飛んでしまって、アドリブで全部やってしまいました。もっといろんなところでライブをやってみたいです。お客さんとコミュニケーション取るのが現代のコメディーのニュースタイルじゃないですか、コロンビア大学のゴリゴリのニューヨーカーとバリバリに働いているみなさんの前で話すのはとっても緊張しましたが、緊張した時に教授の顔を見てほっこりリラックスできました」と感想を話していた。

 渡辺さんは、1987年に台湾で日本人の父親と台湾人の母親の間に生まれた。茨城県石岡市立石岡中学校卒業。親の反対を押し切った上で吉本総合芸能学院に入学。愛情を込めて「日本のビヨンセ」として知られる渡辺さんは、バイラルなパフォーマンスと陽気なセレブの物真似で世界中の観客を魅了してきた。日本で最もフォローされているタレントであり、アジアで最も認知されているタレントの1人である渡辺さんは、ソーシャル メディア プラットフォーム全体で1000万人近い世界中のフォロワーを獲得している。ニューヨークへの移住と、新たに開始された全英語のポッドキャスト「Naomi Takes America」、そして最近の7つのポッドキャストから渡辺さんは旋風を巻き起こし、会場では最近2000人以上のファンを楽しませた7都市のシティツアー「Naomi Takes America -The Podcast LIVE-」などについても語った。

 (三浦良一記者、写真も)