敵性外国人法を適用 全米日系人博物館が非難声明

集団国外退去を強制

大統領令

 全米日系人博物館(JANM、カリフォルニア州ロサンゼルス市)は、15日に発表されたベネズエラ系移民の集団国外退去を強制するために、1798年の「敵性外国人法」を適用する大統領令を非難する声明文を発表した。

 この法律は、米国が戦争状態にある国々や米国を侵略した国々からの人々の国外退去を認めるもので、1941年にルーズベルト大統領がこの法律を適用し、適正な法の手続きを経ることなく、司法省の収容所に日本、ドイツ、イタリアの市民を逮捕・拘留した根拠となる法律。1942年には、大統領は戦時権限の範囲を拡大して「大統領令9066号」を発令し、12万5000人以上の日系アメリカ人の強制収容につながった。 

 同館はワシントンDCの連邦裁判所にアメリカ自由人権協会(ACLA)とデモクラシー・フォーワードの弁護士が起こした訴訟を注視している。米国地方裁判所の判事は、強制国外退去を一時的に差し止める命令を出した。 JANMは、敵性外国人法の廃止を求める「敵ではなく隣人」法案への支持を改めて表明。

 アン・バロウズJANM館長兼CEOは、「敵性外国人法は、その文言の通り差別的なものだ。ベネズエラからの侵略行為がない平時にこの法律が発動されることは、この法律自体に違反している。この法律は、大統領に『米国と外国の国家または政府との間に宣戦布告があった場合、または外国の国家または政府が米国領土に対して侵略行為または略奪的侵入行為を実行、企て、または脅迫した場合』にのみ権限を与えるものだ。法の執行と司法制度は、犯罪に対処するための適切な憲法上の手段であり、犯罪行為の容疑者は、出身国を理由に正当な手続きを拒否されてはならない。 この布告は、中国人排斥法、外国人土地法、第二次世界大戦中の日本人、ドイツ人、イタリア人の収容、日系アメリカ人の強制退去と収容につながったのと同じ危険な暴言に煽られたものだ。JANMは、このようなことが決してほかの人々に繰り返されてはならないとの誓いのもと設立された。しかし今日の出来事はこの誓いが脅かされていることを私たちに思い起こさせる。もはや歴史は繰り返さないと断言することはできない。しかし私たちにできることは、ミッションを堅持し、歴史の教訓を守り、その時代を生き抜いた人々の声を増幅させ、彼らの物語が警告となり、行動を促すものとなるよう努めることだ」と声明文の中で述べている。 

 全米日系人博物館(JANM)=1985年設立。アメリカの民族的・文化的多様性への理解と認識を促進。ロサンゼルスのダウンタウンのリトルトーキョー地区に位置する 。第二次世界大戦中の日系人の強制収容の苦難から得た教訓が忘れられることのないよう公民権の擁護を目的とする中心的な存在として活動。スミソニアン協会の加盟館で「アメリカの文化財」にも選ばれている。ウェブサイトはjanm.org