「従軍慰安婦は売春婦」性奴隷説否定で大論争

ハーバード大学のラムザイヤー教授

論文『太平洋戦争における性契約』波紋

 ハーバード大学のジョン・マーク・ラムザイヤー教授が、第二次大戦中の日本軍の慰安婦について、当時法的に認められていた売春婦であることを示した学術論文が発表され、内容をめぐり騒動となっている。

 論文は3月刊行予定の国際的な学術誌「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」誌65巻に掲載の「太平洋戦争における性契約」。昨年12月1日にオンラインで公開されていたが、産経新聞が1月31日、この論文を「『慰安婦=性奴隷』説否定」と報道。専門家や編集部の査読を得た権威ある学術誌に掲載されたことから影響は大きく、米国、日本、韓国のみならず世界的に波紋を投げかけた。

 論文では、慰安婦は自発的契約であったとゲーム理論などを使って「証明」している。「日本軍が性感染症の蔓延を防ぐ方法としていわゆる慰安婦を認可するための基準を作成し、『売春婦』らは東京の売春宿と同様の契約に署名した。戦争地帯であるため期間は短く、賃金は高かった」とし、慰安婦は当時、法的に認められた「売春婦」であるとした。

  ニューヨークタイムズは26日、「ハーバード大学教授が戦時の性奴隷を売春婦と呼んで、反発を買った」と報じ、慰安婦だった李容洙さん(92)がハーバード大学の学生グループとのオンライン対話で「教授の最近の発言は、皆さんが無視すべきものです」と呼びかけたことを紹介している。タイムズの取材で明星大学戦後教育史研究センターの勝岡寛次氏は「論文の要約を読んだだけの段階であるが、売春婦という用語が適切である」と語った。また論争となっていることに対しては、「米国トップのハーバード大学が言論の自由を失った場合、言論の自由は米国に存在しないと判断しなければならない」と釘を刺した。

 ラムザイヤー教授はハーバード・ロー・スクール教授。専門は日本法及び法と経済学。ハーバード大学での公式な肩書が「三菱 日本法学教授」(Mitsubishi Professor of Japanese Legal Studies)。シカゴ生まれ。幼少期を宮崎県で過ごした。2018年に日本政府から旭日章を受賞した。