歩道の溝の中にダイヤや金くず
マンハッタンの五番街と6番街に挟まれた47丁目の1ブロックは、通称「ダイヤモンド街」と呼ばれる宝石商店街になっている。宝石、貴金属、時計、コインの店がひしめきあう。ニューヨークのダイヤモンド取り引きの8割がこの1ブロックで行われているといわれる。
その宝石商店街の深夜午前零時過ぎ、小さいライトを口にくわえ、ブラシとちりとりで歩道の溝を掘っている男がいた。ラフィ・ステパニアンさん(50)。2011年から8年間、深夜のこの通りで2、3時間歩道の土をブラシで集めて、その中から1ミリ以下のダイヤモンドのかけらや金や宝石のくずを集めている。いままで拾ったダイヤモンドで一番大きかったのはハーフカラットのダイヤ。8年間で集めた総カラット数は約55カラットに上る。金は44オンス拾って既に換金した。総額にして時価1万3000ドル分の金を含む加工金属を収穫したという。このほか銅やニッケル、色のついた宝石各種の屑も見つかるそうだ。この通りは路面店に限らず、ビル全体が貴金属の工房になっているため、昼も夜も宝石商や職人の往来があり、ビルの出入りが激しい。靴の底についたダイヤの屑や、運び出す時に落とした宝石などさまざま。8年間で警察に不審に思われ職務質問を受けたことも4回あまり。説明すると、空き缶を道路で拾っているのと同じ行為として黙認してくれるという。春の今は、冬の間に落ちた金属の屑が一番集まるかき入れ退き時だ。深夜の宝探しは続く。(三浦良一記者、写真も)