月面に逆さま着陸

日本の探査機SLIM

日本の説明をNYタイムズ紙が詳報

  宇宙航空研究開発機構(JAXA=ジャクサ)の探査機SLIM(スリム)が19日、月面着陸に成功、旧ソ連、米国、中国、インドに次ぐ5番目の国となった。日本のメディアはこの快挙を称え、日本中が喜びに沸いた。その後、小探査機から撮影したスリムの写真が発表され、「逆さま」で着陸していることが報道された。1月25日付ニューヨーク・タイムズは「日本は逆さま着陸をどのように説明しているか」との見出しでこのことを記事にしている。

 ジャクサの國中均所長は月面着陸直後の20日の記者会見で、目標の誤差わずか55メートルの「ピンポイント着陸」に成功したと発表した。ピンポイント着陸は今回のミッションの目標の一つであり、大きな成功を収めたことになる。

 一方、太陽光パネルでの発電ができなくなってしまっていることについては「当初想定していたものとは違う姿勢で着陸していることが考えられる」としていた。

 その後、着陸直前にスリムから射出された小型探査機が着陸船の写真撮影の成功、そこには逆さまになった探査機が写っていた。月面への降下中、スリムに2つある主要エンジンの一つが故障したため、地表への激突こそ避けられたものの機体はひっくり返ってしまったと見られる。太陽光パネルが太陽のある方向ではない西向きになり発電できなくなったため、着陸後3時間も経たないうちに宇宙船を停止する指令を出した。太陽光が西から当たるようになれば発電の可能性があり、幸い29日に太陽の光が当たるようになり、電源が復旧し、撮影を開始した。

 記事では、スリムの坂井真一郎プロジェクトマネージャーが25日の記者会見で述べた「複雑な気持ちだった。もし太陽電池がたまたま地表で下を向いていたら、太陽光を受ける機会はなかっただろうから、とても安心した」という言葉を紹介、ぎりぎりの成功だったことを報じている。ジャクサでは、なぜスリムのエンジンノズルが脱落したのかを調査中だ。

 なお、米航空宇宙局(NASA)は26日、月を周回する観測衛星ルナー・リコネサンス・オービターが高度約80キロで撮影した画像で、月面に着陸したスリムを確認したと発表した。

(写真)ひっくり返って月面着陸したことを日本がどう説明しているかを報じた1月25日付NYタイムズ紙