巨匠たちに見出された東洋美

アーティスト・ミューズ/ モデル
岩月美江さん

 ニューヨークのファッション誌で米国の富裕層をターゲットに発行されている『25A』冬の号の表紙にNYアート界のミューズとして紹介された。同誌と姉妹誌『メトロポリタン』誌にも各13ページのファッション写真とインタビュー記事が同時掲載された。きっかけは昨年夏、ハリウッドのセレブリティーを撮影している大物フォトグラファーのロバート・マクスウエルに被写体になって欲しいと言われ、秋頃から何度か撮影したことだった。彼が撮影したモデルポートフォリオを見た雑誌メトロポリタン社広報部から表紙モデルの依頼があった。

 岩月さんは 横浜市出身、日本大学の短大を卒業後、1998年に留学で来米し、ハンターカレッジで芸術を専攻して卒業。伊勢ファンデーションに就職し、そこでキュレーターとして多くのアート界の巨匠たちと仕事をしたことがアートとモデル業の現在に繋がった。その出会いの一人がペインティングの巨匠アレックス・カッツだった。就職間もない頃、ギャラリーで開催された彼のアーティスト・トークが終わって打ち上げの帰りがけに勇気を出して挨拶した。パーティー顔の穏やかだった彼の笑顔が豹変し、「アイ・ウォント・ペイントユー」と「鋭い目」で言われた。これ迄に10枚程の肖像画が描かれたが、2009年にクリスティー・ターリントンと一緒に描かれた作品がヨーロッパでの美術館回顧展のカタログ・カバーになり、パリで行われた展覧会『FASHION』のハイライトになった。その活動を知ったチェルシーのギャラリーに声を掛けられ2012年にアレックス・カッツ、ロバート・フランクを含めた35人の世界の著名コンテンポラリーアーティストが岩月さんをモデルにした『MIE 35人のポートレート展」が開催された。売り上げの一部を東日本大震災に寄付。同展覧会は評判となりブルームバーグ・ニュースや、米国を代表するアート誌 の一つ『アート・イン・アメリカ』にもインタビュー記事が掲載された。

 東洋の神秘を感じさせる独特の面立ちが際立つ岩月さん。「私よりも綺麗で若いファッションモデルは世界中にいくらでもいるけれど、単なる被写体としてではなくアーティストを理解するモデル・ヴォイスの送り手として共に芸術を発信していけるところ」がほかのモデルとは違う自分の存在意義だと思っている。

   おばあちゃん子だった岩月さんが海外に出るときに大好きな祖母に「行かないでおくれ」と泣きつかれた。自分で貯めた小額のお金を持って渡米した。全国検察審査協会連合会の副会長まで務めた祖母は101歳まで長生きしたが、100歳の時、『MIE展』のカタログを持って帰国して祖母に展覧会の成功を報告できたことが唯一のプレゼントと心の慰めになったと言う。アートを通じて自分がNYで経験した事、一緒に作品を創る事ができた素晴らしいアーティストたちとのストーリーを『モデル・ヴォイス』として将来出版することが夢だ。(三浦良一記者、写真は本人提供)

Info: linktr.ee/Mieiwatsuki

(写真)25A 表紙: Photographed by Robert Maxwell.
誌面ストーリー: Makeup Artist  松崎貴志、Hair Stylist 竹井千李奈