想田和弘監督の新作ドキュメンタリー映画「精神0」が、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の第19回ドキュメンタリー・フォートナイト映画祭で14日と18日に上映された。
主人公の精神科医、山本昌知医師は82歳となり、引退することになった。患者たちに動揺が広がる。一方、山本の仕事を陰で支えてきた妻の芳子は、認知症を患い介護を必要としていた。
舞台挨拶で、想田監督は、自身に課している映画撮影の十戒を紹介した。それは、リサーチはしない。打ち合わせをしない。台本は書かない。カメラは一人で回す。長時間回す。アリバイ的な取材は慎む。編集作業でテーマを設定しない。ナレーションはなし。カットは長めに編集。制作費は自分持ち、と言うことだそうだ。
妻の柏木規与子さんはコンテンポラリー・ダンサー、振付師で、この映画では製作を担当した。映画を観終わったあと、「映画を観た」と言う感覚ではなく、むしろ実際に自分がその映像の中、と言うか、その場にいて、山本医師夫妻の横でじっと見つめていたような臨場感ある記憶が残る。映画のシーンに出てきた出前の寿司まで一緒に食べたような、そんな気になっている。
(三浦)