米国黄金時代の再生

世界が注視、第2次トランプ政権始動

 米大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏(共和党)が20日、ワシントンDCでの大統領就任式に臨み、第47代大統領に就任した。寒波のため、通常の合衆国議会議事堂の外ではなく議事堂内のロタンダ(円形大広間)で行われた。寒波のため議事堂内で行われるのは1985年のレーガン大統領就任式以来となった。就任演説は前回4年前の約16分の倍近く長い32分ほどだった。 

 式典でトランプ氏が宣誓して第47代大統領に就任した。78歳7か月での大統領就任は米国史上最高齢となる。就任演説は「米国の黄金時代は今始まる。わが国は再び世界中で繁栄し、尊敬されるようになるだろう」と始まり、冒頭からスタンディング・オベーションが起きた。

 「米国第一」を強調し、アラスカ州の北米最高峰デナリを自身が尊敬する米大統領であるマッキンリーに戻し、メキシコ湾はアメリカ湾に改名するとも語った。昨年7月のペンシルベニア州バトラーでの銃撃事件に触れ、耳の軽傷だけで済んだことに「米国を再び偉大な国にするために、私は神によって救われた」のだとも語った。

 南部の国境問題では「国家非常事態」を宣言、不法移民の取り締まりに軍隊の派遣を許可する大統領令を出すとした。パイプラインの許可を迅速化する国家エネルギー非常事態宣言の大統領令にも署名すると述べた。麻薬カルテル組織を「国際テロリスト」に指定し、バイデン政権が可決した電気自動車の義務化を終わらせる大統領令にも署名するとも述べた。

 このほかにも移民、エネルギー、貿易、多様性政策などに関する民主党の政策を撤回する一連の大統領令を発令する予定だ。大統領令は100近くになると見られる。両親が合法的な移民資格を持たない米国生まれの子供に市民権を与える制度も廃止する予定だが、いわゆる「出生地主義」は合衆国憲法に規定があり、過去の最高裁判決で認められていることから簡単にはいかないと予想されている。

写真:トランプ大統領に更新されたホワイトハウスのウェブサイトから 

白人富裕層の輝く顔ぶれ

支持有権者との隔たり際立つ

 赤い「MAGA」ハットが20日、ワシントンDCのダウンタウンにあふれた。有権者の約9割が民主党大統領候補に投票したリベラル派支配のエリア。市民の姿はなく、MAGAピープル以外は歩いていない半ばゴーストタウンのようになった。

 トランプ新大統領は正午、就任宣誓に臨んだ。外は零下5度。就任式が見られる会場は100万人以上が入るナショナル・モール公園ではなく、2万人収容のキャピタル・ワン・アリーナに変更された。宣誓を見たい人々は、スポーツバーに駆け込むか、カフェや歩道などで各々のスマホに見入った。

 極寒、屋内就任式、MAGAハットの波と、異例づくしのこの日。就任式を伝える画面の中にも大きな変化があった。主賓に、テスラCEOのイーロン・マスク氏、メタCEOのマーク・ザッカーバーグ氏などIT企業の億万長者らがずらりと並んだのも初めて。白人富裕層の輝く顔ぶれが、価格高騰に苦しんだ末にトランプ氏を選んだ有権者との経済的隔たりを際立たせた。

 トランプ氏は同日のうちに数十を超える大統領令に油性マーカーで署名。通常であれば、政策に貢献した関係者に感謝の意味で配る署名のペンを、アリーナの中で支持者に投げて配った。

(津山恵子 ワシントン)