トランプ大統領返り咲きに沸く

保守回帰路線に大梶
さながら党大会の祝賀会場

大統領就任式ルポ2025

 20日、ドナルド・トランプ氏が米国第47代大統領として、再び就任した。トランプ氏は78歳7か月。就任時で最高齢の大統領となった。

 副大統領には、オハイオ州選出の上院議員だったJ・D・バンス氏(40)が就任した。

 ワシントンには「トランプ氏の歴史的な復帰を祝う瞬間に立ち会いたい」と、全米だけでなく、世界各地から支持者が駆けつけた。

 極端に民主党寄りのこの街を、MAGA(Make America Great Again)の赤い野球帽やマフラーを身につけた支持者らが闊歩し、「トランプ! トランプ! トランプ!」のかけ声が響き渡る。この街は共和党を意味する「真っ赤」に染まった。

 就任式は伝統的に首都ワシントンの連邦議会議事堂の外で行われるが、記録的な寒波が予想されたことを理由に急遽、議事堂内の「ロタンダ(円形大広間)」で開催された。

 このため、事前にチケットを入手した人たちも含め、一般の人々が直接、トランプ氏の就任演説を聞くことができなくなった。

 市内のスポーツ施設「キャピタル・ワン・アリーナ」では急遽、就任式の中継イベントが開かれることになった。突然の変更に、支持者らは戸惑った。

 スポーツ施設の中継イベントには先着順に入場できることになったため、2万人収容の会場には氷点下の寒さにも関わらず、支持者たちが早朝から駆けつけた。私が取材のために到着した午前1時には、すでに250人が並んでいた。

 会場に設置された複数の大きなスクリーンに、就任式とその前後の様子が映し出される。トランプ氏やその家族、実業家のイーロン・マスクなどが現れると、声援がわき起こった。トラン

プ氏の就任の宣誓と演説に、会場は熱狂した。

 逆に、民主党関係者に対してはブーイングの嵐で、会場は「トランプ支持者の世界」そのものだった。

 夕方、議事堂やホワイトハウスでの一連の就任式の行事を終えたトランプ氏が、スポーツ施設で待つ支持者の前に姿を見せると、会場は声援と拍手に包まれ、高揚感は頂点に達した。

 伝統的に就任式の後に屋外で実施されるパレードも今回は急遽、取りやめとなり、代わりに同会場で行われた。

 トランプ氏はパレード鑑賞後、再び演説してから、支持者が見守るなか、一部の大統領令に署名した。

 午前8時に会場に入り、イベントが終わったのは、午後7時。トランプ氏自身が夕方に登場したこともあり、会場は最後まで満席だった。

 就任式前日19日には、同じスポーツ施設で「Make America Great Again Victory Rally」と呼ばれる勝利集会が開かれた。午後3時に始まるイベントに、支持者らは早朝から長蛇の列をなし、「USA! USA! USA!」と連呼し、高揚感に包まれていた。

 氷点下で雨や雪が降るなか、びしょ濡れで何時間も待たされ、途中であきらめる人たちも多かった。

 市内に祝福ムードが広がる一方で、トランプ氏の就任に抗議する声も強い。

 18日には雪の残る市内の公園で、全米から集まった人々が、女性や移民、マイノリティなどに対する権利を求め、抗議集会を開いた。

 極端に民主党色の強いワシントンの街角で、私と笑顔で言葉を交わしていた20代のキャシーさんは、トランプ新政権の話になると、「不安と恐怖でいっぱいだわ」と表情を曇らせた。

 その日、宿のロビーで、トランプ氏に対する抗議集会に参加した3人の女性と言葉を交わしていると、「MAGA」の帽子を被った男性のトランプ支持者らが現れた。

「彼らと一緒に穏やかに話してみない?」と私が女性たちに声をかけると、とても驚き、戸惑う様子を見せた。

 それでも、トランプ支持者たちが同意したので、1つのテーブルを囲んで自己紹介し、カジュアルに言葉を交わし始めた。

「今、アメリカの国に差別されているのは、白人、とくに白人男性だ。女性やマイノリティは守られている」

「たった数十年前には、黒人に対して人種隔離政策が取られていたのよ」

「子供や孫の代には、変わっていくさ」

「当時の人たちの考えは今も変わらないわ。過去を知ると、私は白人であることに誇りを持てないの」

 激しく言い合いすることなく、互いの意見に耳を傾け、時にはうなずきながら、数時間、意見を交換した。

 こうした体験は初めてだったようで、「素晴らしい機会が持てた」と双方から礼を言われた。

 大きな期待と不安とともに、再び誕生したトランプ政権。今後の行方をしっかり見守っていきたい。

  (写真・文 岡田光世)