俳句を通じ、日本文化の魅力を伝える

俳人 大高 翔さん

 本紙「週刊NY生活」主催の北米伊藤園新俳句グランプリの審査員を務める大高翔さんは、1977年徳島県生まれ。13歳から作句の世界に入った。立教大学文学部日本文学科を卒業後、句作を中心にエッセイの執筆や校歌の作詞、テレビ、ラジオでも活躍し、現在は、京都造形芸術大学通信教育学部(芸術学部)非常勤講師を務める傍ら、俳人の母、谷中隆子が主宰する俳句会「藍花(あいばな)」の副主宰として東京を中心に活動している。家庭では二児の母でもあり、長女出産をきっかけに2004年からこどもたちや初心者への作句指導にも取り組んでいる。
 本紙の新俳句グランプリが始まった2010年から海外での俳句ワークショップを開催し、句会体験や季語の解説によって日本文化の魅力を伝えている。
今回は、同グランプリ表彰式のため来米、それに合わせて8日にジャパン・ソサエティーの語学センターで、10日にはイエール大学で日本語上級者と一般を対象に、13日には日本クラブと国際交流基金で俳句ワークショップを開催するなど精力的に俳句の指導をしている。五七五の17音節に季語を入れて3行で表現する日本の俳句と韻を踏んで1行でも表現できる英語俳句との間には一見大きな隔たりがあるように見えるが、そのなかに流れる共通の言葉の美意識を楽しむ心は一緒。「俳句は、五七五で表現する詩なんです」と言う。英語の方が表現語彙が多いため英語俳句は1行でも日本語の17音節に負けない表現の深さと余韻を持たせることができる。海外で句会や指導をするなかで得た英語俳句の魅力の一つだ。それを味わいながら、日本の句会文化、句会の楽しみ方を伝える。
 アメリカ人の俳句熱の手応えは「まず、驚くほど、俳句に興味を持ってくれます。俳句によって、日々が心豊かになる感覚はきっと同じなのだと感じます。俳句によって、季節の変化を敏感に感じ取れるようになったり、ものの見方が広がったり、自分らしい言葉を選ぶことを楽しんだりできます。そんな喜びを共有できるのが、私にとっても本当に嬉しいことなんです」と笑顔を見せる。
 ニューヨークは2010年以来、ほぼ年に一度、来米している。「ニューヨークは、『不思議と出会いの街』。魔法がかかっているような場所だと思います。来るたびに素敵な出会いがあります。この街に来ると元気をもらって、自分のことを見つめ直し、これからやりたいことのアイデアも湧きます」。(三浦良一記者、写真も)