演劇プロデューサー
堀部 直美さん
堀部さんは、大学時代に舞台役者を目指し、歌・芝居・ダンスのレッスンに明け暮れ、吉原光夫と高橋卓士が率いるArtist Company 響人などの舞台に出演した。人前で演じる事を楽しめない自分に気づき、役者を辞める。CDレンタルショップの店内で流れてくる音楽すら聞くのが辛くて店を出るほど役者を辞めるというのは大きな出来事だった。その後、自分探しで訪れたニューヨーク一人旅で役者を目指すきっかけとなったミュージカル「シカゴ」を観劇し、再び舞台が好きだという気持ちを取り戻し、舞台のビジネスサイドへ挑戦するためエンタメ専門チケットサイトで舞台やコンサートなどのチケット販売やマーケティングに関わった後、アメリカ留学のために退社した。
役者を辞めた後、世話になっていた役者の先輩達の子供向けミュージカルの自主公演を見に行った際に、「こういう作品をもっと多くの子供達に観てもらうために出来ることは何か。ほぼ役者達だけで運営している劇団では出来ることに限りがあるのではないか」と思い、ビジネスサイドで自分にも何か出来るかもしれないと思ったのがこの世界に入るきっかけだった。
来米後ニューヨークのウエストチェスターにあるモンロー大学でMBAを取得後、OPT期間中に舞台業界で働き始めた。インターンシップをブロードウェイやオフブロードウェイを手掛けるArs Nova、Manhattan Theatre Club、New York Musical Festivalで重ね、アメリカの舞台制作を実務の中で学んだ。その後、グリーンカードを取得し、ブロードウェイも多く手がける舞台専門のエンターテインメント法律事務所でアシスタントとして舞台制作に必要な権利の取得などの契約書の下書きに携わり、プロデューサーの仕事の一部を学んだ。
コロナの最中は劇場がどこも閉まっていたので制作サイドの人間には応募できる仕事がほとんどない状態が続いたが、現在はブロードウェイで上演中のDANA H.という作品にアソシエート・プロデユーサーとして関わる事でブロードウェイに戻ることが出来た。
DANA H.は24年前、一人の女性が5か月間複数のモーテルに監禁された恐怖の体験を語ったインタビューの実際の音声に合わせて役者がリップシンクで演じるという革新的なリアルと芝居が融合したドキュメンタリー。ブロードウェイのLyceum Theatreで今月13日まで上演中だ。
将来の夢はいつか日本のオリジナル作品を制作し、海外へ持っていきたいです。特に第二次世界大戦の話をプロデュースし平和を訴えていきたいという。千葉県出身。(三浦良一記者、写真も)